【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 3月の風はどちらに吹く?
株式評論家 植木靖男
「3月の風はどちらに吹く?」
●「膠着」に映る相場の騰げ余力
東京株式市場は引き続き気迷いと混迷の中で膠着状態、保ち合いにある。だが、16年6月安値から本年大発会まで5000円も上昇したにしては、その後の調整局面では、多くの市場関係者が想定外と驚くほど下値の乏しい展開を見せ、底堅さを印象づけている。
こうした、いまの2ヵ月を超えるやや長い保ち合いを「強い」とみるか「弱い」とみるか。
株価が下げないというのは、まだ騰げ切っていないともいえる。十分騰げて熟していれば、それこそそよ風にも耐えられなくて落ちてしまうリンゴやみかんと同様、落ちてしまうはず。しかし、いまの市況はそういう状況にはない。
もちろん、需給面で「日銀が事ある毎にETFを買い上げるから」との指摘もあるが、相場は結果がすべてである。
では、今後、株価は3月相場入りし、どう展開するのであろうか。
基本的には米国株と円相場という変数で決定されよう。
まず米国株だ。ここ10日連続で史上最高値を更新している。約30年ぶりという。伊達や酔狂でこうなるはずはない。
それだけの背景はあるのだ。トランプ新大統領の政策が批判を浴びながらも逐次実行に移される。少なくとも株価からみるとそう判断できる。もちろん、間違っていれば、株価は即刻修正される。しかし、いまのところはその兆しは見られない。当面、株高基調は続くとみてよいだろう。
●天底では材料よりも市場人気
ただ、3月には予算教書が議会に提出される。これまでネットや演説で発信された政策が具体的な形で明らかになる。そして、議会では夏頃まで審議が行われ、実際に政策が動き出すのは秋以降となる。つまり、3月に予算教書が提出されて、しばらくはそれが評価され、株高を招くとしても、その後は材料出尽くしとなるのは自明である。
しかも、実行されるのは秋ともなれば、数ヵ月は材料として空白期間が出る。もちろん、この間景気は拡大に向かうにしても、FRBの利上げの進捗状態からすれば、さらに株価を押し上げるエネルギーは乏しくなるのではないか。
もうひとつの変数は、円相場だ。再び112円処に戻ってきた。うまくいけばドルの自律反発が期待できる。
このようにみると、最悪のシナリオは、ここでさらに円高が進み、かつ米国株が高値をつけてしまうというケースだ。
望ましいケースは、ここでドルが自律反発をみせ、かつ米国株の上昇がしばらく続くシナリオである。
いずれにせよ、天底では材料が決めるというより市場人気で決まることがしばしばである。つまり、選挙の大勢が決まるときと同じように、その時点で吹く“風”によるのだ。今回、3月の風はどの方向に吹くのであろうか。
2017年2月24日 記
株探ニュース