【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆次の攻防軸は中東情勢か◆
ドル円 <日足> 「株探」多機能チャートより
〇日米首脳会談は満額回答、日本株は元の歩調に戻る〇
安倍ゴルフ外交は順調に運んだようだ。日米首脳会談はほぼ満額回答。週明け早朝のドル円相場は113円台後半の推移。先週末でオプションSQの壁が外れ、10日終値のドル建て日経平均は170.23ドル。1月26日の高値170.57ドルを窺う位置に戻った。当面、ドル・ロングの手仕舞いによる円高圧力が軽減し、円安地合いと見られるが、それでも115円を超える円安は微妙なため、ドル建て日経平均が何処まで上昇できるかが上値のポイントと考えられる。例えば、173ドル×115円=19895円辺りが目安か。8割方が発表を終えた4-12月決算は前年同期比4.9%減収、7.1%営業減益(10-12月は1.3%営業減益)との集計。上方修正は多いが、通期も同様の水準。来期を含めて企業収益期待で押し上げられるかが焦点となろう。
日米首脳会談に前後して、米中首脳電話会談が行われ、北朝鮮がミサイルを発射した。対中国では「一つの中国」が戻ったが、ロイターの報道では「ティラーソン国務長官の説得によるものとされる。日米では裏取引は考え難いが、対中国では有り得る(裏取引の噂があるのは、クリントン氏を裁くとしていた主張の反故。3ヵ月経過するが、両者の非難の応酬はない)。
一つは貿易赤字の縮小。10日発表の1月中国貿易収支で対米黒字は213.7億ドル、12月の217.3億ドルから縮小した。1月統計は春節のイレギュラーがあるが、一時は300億ドル前後あった対米黒字の圧縮を約束した可能性がある(ただし、7日発表の12月米貿易収支で対中赤字は277.58億ドル。16年通年で3470億3800万ドル)。トランプ大統領は「公平な対中貿易環境が、かなり早く実現する」とコメントしている。
この見立てで行くと、中国経済のマクロ的問題は軽減され、個別産業・企業などミクロ問題に重点を置くことになる。中国では素材・原料価格の高騰が伝えられ、中国メディア「新浪財政経済」は中小企業の倒産が多発しており、5年ほどで5000万人が失業するとの推計を発表している。デパート、ショッピングモール、スーパーマーケットは41社が倒産、アップル製品生産のフォックスコン(米国生産へシフトの公算)をはじめ、アジア系外資の撤退が検討されており、危機は加速する恐れがある。
もう一つはミサイルを発射した対北朝鮮政策での協力。ICBMでなかったので米軍が撃ち落とすまでには至らなかったが、安倍首相の主張通り、トランプ大統領も抜本的なメスを入れる必要を認識した可能性がある。発射は電話会談後だが、「対北朝鮮への影響力を行使するよう、中国に圧力を掛ける」としている。3月に米韓合同軍事演習が予定され、米軍が集結している。
今週は15日に米・イスラエル首脳会談が予定されている。16日にはドイツ・ボンでG20外相会合が予定され、米国が中東問題に踏み込んだ姿勢(在イスラエル大使館のエルサレム移転問題、シリアの安全地帯構想など)を示すか注目される。OPEC減産問題を含め、原油価格にも注意が必要だ。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/2/13号)
《WA》
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