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【特集】「トランプ政権下の円相場、押さえておくべき必須ポイント」上田ハーロー・山内俊哉執行役員に聞く!<直撃Q&A>

山内俊哉氏(上田ハーロー 執行役員)
 20日の就任式を経て米トランプ新政権が正式に始動した。トランプ大統領は「米国第一」を前面に打ち出し保護主義を鮮明にするとともに、日本の自動車産業に批判の矛先を向け日米摩擦が再燃する懸念も浮上している。こうしたなか、年初からのドル安・円高基調が続いている。トランプ政権下で為替相場をみるうえでの新たなチェックポイントとは何か。上田ハーローの山内俊哉執行役員に聞いた。  

Q1 米トランプ政権が始動し円高が進みました。これまでの状況をどうみていますか?

山内 就任前の記者会見や就任式の演説を見たうえで「市場は失望した」というのが正直な感想だろう。もう少しバランスを取るとみていたが、トランプ氏は大統領選の頃に戻ってしまった感じだ。新政権がまともな路線を取るなら米国のファンダメンタルズを考慮すれば、ドル高とみるのが自然だが、そうはなっていない。このため、「米国第一」を掲げ保護主義が前面に打ち出されるなか、ドル安・円高が進んでいる。ムニューチン次期財務長官も、米国に投資を呼び込むために建前としては「強いドル」と言わざるを得ないが、政権の性格上、本音は「ドル安」と見られる。今後のポイントとして、ドルが上昇した時に何をやってくるかが、気になってしまう。

Q2 トランプ政権発足を経て、新たなチェックポイントはありますか?

山内 トランプ政権で「米国第一」を掲げ雇用を重視しているだけに、もし経済指標で注目するとすればやはり雇用統計だろう。米連邦準備制度理事会(FRB)が賃金上昇率を気にするのに対し、政権サイドは労働参加率に目を向けるかもしれない。また、米国の貿易収支では、対米黒字の大きな国の輸出入動向に関心が向くこともあり得る。ただ、米国景気が拡大すれば、どうしても米国の輸入は増えてしまう面はある。それだけに、ゼネラル・モーターズやフォードなど米大手自動車会社の業績動向にも関心が向かいそうだ。

 また、地政学リスクの高まりにも警戒したい。米国とロシアが本当に接近すれば、中国が孤立する可能性がある。米国がイスラエルに接近することに伴う中東情勢も気になる。中国に対する為替操作国の認定は当面はないだろうが、今秋にかけて可能性は出てくるようにも思える。

Q3 当面の為替相場はどう予想しますか?

山内 今後3カ月程度のドル円相場は下値が1ドル=108円、高値が同118円前後とみている。年初につけた118円の高値を抜くことは難しいのではないか。トランプ氏の認識は1980年代あたりで止まっているようにも見える。自動車など日本の輸出株が上がらないのなら、日本株に対する外国人離れが進み、それがリスクオフの円高要因となることもあり得ると思う。

(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(やまうち・としや)
上田ハーロー、執行役員・マーケット企画部長。1985年 商品先物会社入社。コンプライアンス、企画・調査などを経て1998年4月の「外為法」改正をうけ外国為替証拠金取引の立ち上げを行う。2005年7月 上田ハーロー入社。前職の経験を生かし、個人投資家の視点でブログなどへ各種情報の発信やセミナー講師に従事。日経CNBC「朝エクスプレス」為替電話リポートに出演のほか、金融情報サイトなどへの情報提供などでも活躍している。

出所:株経ONLINE(株式会社みんかぶ)

最終更新日:2017年01月25日 18時11分

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