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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆為替と株価の乖離◆

ドル円 <日足> 「株探」多機能チャートより

〇17日のメイ英首相演説に注目〇

11日のトランプ記者会見でドル円が一時113円台に振れても、日経平均が19000円台を維持するなど、相対的に底堅い展開になっていることが話題だ。16日付日経新聞曰く、「世界経済への見方が2つの市場で分かれているほか、日銀のETF大量購入もじわり効いている」。日銀のETF購入を「市場を歪める」と批判していたので、今は「歪んでいる」ことになるのであろうか。市場で見方が異なると言うのは、後講釈の域を出ない。

為替と株価が密接な関係にあることは変わらない。円高要因には海外投資家の株買いペースダウン(現物買い+先物買いで、11月第3週の1兆1810億円から週間2000億円程度のペースにダウン。一般に日本株買いは円安ヘッジを伴い円安要因になっている)がある。相対的に、日銀やGPIFなど日本の機関投資家の買いで支えられている構図だ。

海外投資家の縮小は、トランプ政策の先行きが不透明なことに加え、いわゆる「急ぎ働き」の投資家が不在になっている点が挙げられる。機関窓口の欧州系証券の縮小と合わせ、CTA=商品投資顧問業者などの名前を聞かなくなった。ピーク時に3兆円を超えていた裁定買い残もなかなか2兆円を回復してこない。先物主導の仕掛け的動きが小さくなっていることが、連動性が薄れている一因と考えられる。投資家ジョージ・ソロス氏の10億ドル損失が話題になるなど、ファンド運用が上手く行っていない可能性も考えられる。

だけど無くなった訳ではなさそうだ。13日、ロンドンFT100指数は0.62%上昇し、連日最高値更新、実に14連騰を記録した。英ポンドは対ドルで3ヵ月ぶり安値、16日早朝取引で昨年10月以来の1ポンド=1.20ドル割れとなっている。再びEU離脱懸念が強まっており、17日にメイ首相が重要演説を行うとされ、英紙は「メイ首相が移民流入抑制などのためにEU単一市場から撤退する計画を示す」と伝えた。ハモンド財務相は「英国が単一市場へのアクセスに関する合意なくEUを離脱することになった場合、英国は経済モデルを見直して競争力を取り戻すことができる」と述べており、大幅通貨安効果に加え、法人税減税などを打ち出すと受け止められ、英国株買いにつながっていると考えられる。規模が縮小した「急ぎ働き筋」は英国市場に居ると思われる。

17日の重要演説を境に英国市場を抜け、日本市場に戻って来る可能性はある。基本的には、20日のトランプ米新大統領就任式の混乱有無、演説内容を見極めてからと考えられるが、英国市場で一丁上がりの利食いを行えれば、いつでも他市場にシフトする可能性があると見て置くべきであろう。なお、トランプ氏は政策動向もそうだが、「モスクワにおける性的乱交の猥褻な詳細を提示したロシアの情報機関」問題(ロイター)で、(英元情報部員も絡むとされる)評価の難しい状況が続く可能性がある。反面、混乱の影響は限定的で、5割増益となったバンカメ決算など、順調な企業業績でNYダウ2万ドル大台乗せとなるかどうかも焦点となろう。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/1/16号)

《WA》

 提供:フィスコ

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