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【特集】窪田朋一郎氏【トランプ就任で大幅安、下値メドと反転の日】(1) <相場観特集>

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

―保護主義的政策に警戒感、東京市場の行き先は―

 注目されたトランプ大統領の就任演説は、具体的な経済政策への言及がなく、「米国第一」を繰り返す新鮮味に乏しい内容だった。保護主義的な政策路線に対する警戒ムードが漂うなか、為替の円高進行と相まって週明けの東京株式市場は利益確定売りの砲火を浴びた。トランプ相場の陰の部分も見え始め、投資家心理にも気迷いが出ている。ビッグイベント通過後の東京市場はどこへ向かうのか。第一線で活躍する市場関係者の声をまとめた。

●「2月から3月にかけて日経平均は高値形成へ」

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

 トランプ米大統領の就任式での演説は大方の事前想定内であったが、日本株にとっては良い面だけでなくネガティブに作用する要素も当然ながらあった。

 良い面では、やはり「米国第一」主義が前面に押し出されるなかで、米国株市場に対してフレンドリーな政策が株高効果を与える公算が大きいということ。特に法人税減税については企業のEPS上昇に反映され、株価の水準訂正余地を見込んだ買いを誘うことになる。なお、共和党の主流派は輸入品に対してはコストとして認めない国境税による調整を提案しており、手放しで企業への減税恩恵を評価できるかどうかは未知数の部分がある。しかし、国内調達を進めることで、ドル高を誘発するとともに貿易赤字も減少し、米国の経済基盤の強化につながっていく可能性が考慮され、米国株市場の上昇基調は維持されそうだ。これは、外国人買いを通じて日本株にも浮揚効果を与えることになる。

 しかし、なりふり構わぬ保護主義的な姿勢は日本の輸出株セクターにとって逆風材料には違いない。為替の動向もドル高に肯定的な見方を示す米財務長官のムニューチン氏とトランプ大統領で意見が食い違うなど、政権運営上、不安定要素も抱えている。

 当面の見方としては、減税策がまとまれば米国株は一段高の方向に向かい、日本株もそれにツレ高するシナリオが有力。一般教書が出た後の、2月から3月にかけて日経平均株価は高値を形成する可能性が高いとみている。水準的には2万円を通過点に2万1000円近辺に挑戦する展開も視野に入りそうだ。もっともその後は上値が重くなり、春先からゴールデンウイークにかけては調整モード、年央以降は再び下値を探る展開で1万9000円前後まで下押すケースも想定される。

 物色対象として有力視されるのは、新日鉄住金 <5401> やジェイ エフ イー ホールディングス <5411> などの鉄鋼株。トランプ政権下での大規模インフラ投資や中国も景気刺激策として公共投資拡大に踏み込む可能性があり、建材としての鉄鋼需要が喚起されそうだ。また米国での金融規制緩和の動きは、日本株にもポジティブ要因。三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> や野村ホールディングス <8604> など米国での展開力に強みを持つ金融関連株は上値余地がさらに広がるとみている。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウオッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。

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