【特集】田部井美彦氏【新年「トランプ」相場の見通し】(3) <相場観特集>
田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)
―期待感いつまで、相場に潜む“先高感”と“死角”―
東京株式市場は12月最終週を迎えて市場参加者不足からさすがに商いは盛り上がりを欠いているものの、一部の手仕舞い売りを吸収して日経平均株価は底堅さを発揮している。来年相場への先高感の強さを物語っているが、順風満帆の相場展開に死角はないのだろうか。金融・証券分野での経験が豊富なマーケット関係者3人に新年相場の見通しと投資の勘所を聞いた。
●「トランプ新大統領のコメントに関心、1月の日米決算発表も注目」
田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)
新年は、トランプ・ラリーで関連銘柄として上昇してきた銘柄に利益確定売りが持続し、上値の重い推移となる可能性もある。来年1月20日の就任式でトランプ新大統領がどのようなコメントを発するかに市場関係者の関心は集まっており、その内容によっては波乱展開も想定されるが、予測は難しい。予算執行などの関係もあり、新大統領の政策が実際に動き出すのは来年10月以降となるため、それまではさまざまな現実と向き合うことになりそうだ。
1月中旬からは米国で、同下旬からは日本でもそれぞれ決算発表が本格化する。来期の18年3月期をにらみながらの17年3月期3四半期累計(4-12月期)決算の内容を評価して買い進まれる銘柄も出てきそうだ。例えば、半導体関連の企業は、円安・ドル高進行での採算改善だけでなく、中国市場向けで実需が好調な推移をみせており、業績向上に期待が持てそうだ。
来年の相場で、比較的中期的スタンスで注目できる銘柄として、IoT(モノのインターネット)関連の中核的存在である三菱電機 <6503> を挙げたい。同社は従来から自動車向けの電装品に高い技術力を持ち実績を上げているが、三菱グループの三菱自動車工業 <7211> が日産自動車 <7201> の傘下に入ったことで、自動運転をはじめとした自動車関連の電装技術で日産自との関係が一段と深まることが予想される。また、省力化投資の機運が高まるなか、三菱電機のFA分野での技術力と実績が改めて評価されそうだ。
さらに、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックを控えて首都圏を中心にさまざまな大規模インフラ投資が想定されるなか、大手ゼネコンの事業環境は好調持続が予想される。なかでも業績向上に伴い、自社株買いなどの株主還元策の積極化も想定される鹿島 <1812> に注目。また、塩野義製薬 <4507> は、抗HIV薬の海外導出の急拡大に伴い、17年3月期第2四半期(4-9月)のロイヤルティー収入は460億円に達しており、2021年3月期を最終年度とする中期経営計画で目標としている連結経常利益1500億円(17年3月期予想1055億円)の達成に大きく貢献しそうだ。
(聞き手・冨田康夫)
<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券シニアアナリスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。
株探ニュース