【特集】有賀泰夫の有望株リサーチ
ベルク <日足> 「株探」多機能チャートより
●ベルク <9974>
―マーケットが過小評価する食品スーパーの「成長株」―
株式投資のメカニズムについて理解していれば簡単にわかることでも、根本を理解していないと、大きな考え違いをして、たまにしか当たらない負け組になってしまうものです。
特に企業の将来の成長性を考える場合にしばしばこの失敗をします。多くの投資家は、「自分の持っている常識=世間の常識」で判断しようとします。しかし、そのようにして行った判断である銘柄を選んだとしても、それはすでにバリュエーションに織り込まれていることが多く、結果的には全く割安ではなく、単に価格変動の大きさだけに投資する結果になります。
それゆえ株式投資で成功するためには、考え方を常識と少しずらす必要があります。しかし、何の根拠もなくずらしたところで、単に素人の浅はかさに終わるだけで大した成果は得られません。少なくとも、その企業の過去の実績を簡単に見るだけでも、その企業の成長の確からしさは確認できます。しかし、多くの投資家はそれさえもせず、感覚だけで判断していることが多いものです。だから、儲からないのでしょう。
株式投資で勝つためには、マーケットがいかに過小評価している株を買うかということです。つまり、思い描いたシナリオが魅力的に思えないと、多くの投資家は投資できないものですから、そのような銘柄は過小評価になりがちです。しかし、誰もが魅力的に思えるシナリオにはすでに過大な評価になっていることが多いものです。
結果として、その後その企業の利益が同じ程度に増えた場合、明らかに過小評価されていた銘柄のリターンが大きく、過大評価されていた銘柄のリターンは厳しいものになります。企業の成長線の判断基準としては、過去の成長率が一つの目安になります。ただし、数年間の成長率を見るだけでは不完全です。企業によっては景気や為替の影響を大きく受け、好景気では業績が大きく伸びますが、不況になると赤字に落ち込んでしまう企業はいくらでもあります。
そこで、できる限り長く、最低でも10年ほどの利益推移から、景気や為替などによる循環変動を取り除いて、その企業の長期的な成長性のトレンドを判断し、その成長トレンドに比較して割安な株に投資すべきでしょう。その場合、世間が直感的に魅力的と思えない企業の方が好都合です。
一例を上げますと、当コラムでもしばしば取り上げるニトリホールディングス <9843> があります。同社は家具の会社ということになっていますから、多くの人は家具市場の成長性を考えて、同社への投資を躊躇します。つまり、多くの人が気づいているように最近の住宅は収納が充実していて、住宅で使われる家具はどんどん減っています。だから成長しないという結論を出します。
確かに家具市場はどんどん縮小していますが、それは今に始まったことではなく、すでに数十年前から始まっています。しかし、ニトリはこの14年間営業利益が年率18%成長しています。ではなぜ、家具市場が縮小しているのに、ニトリは成長しているのでしょうか。それは家具以外の商品が大きく成長しているためです。すでにニトリの家具の構成比は35%に過ぎず、それ以外はホームファッション(カーテンや布団など)、家庭雑貨、軽家電などです。
ニトリは家具で集客力を高めたことで、消費者はどこにでも売っている商品をニトリで買うようになっています。日本の小売業で、ここまで本業以外の商品構成が高い企業はありません。多くの専門店は本業で高シェアとなると、本業以外の商品をいかに売るかに腐心します。しかし、大多数の会社は本業が80-90%を占めたまま成熟してしまいます。青山商事 <8219> のビジネスウエアの売り上げ構成はいまだに80%あります。ヤマダ電機 <9831> は電気製品の売上が90%近くあります。ユニクロ(ファーストリテイリング <9983> )でさえ食品に参入して撤退しています。そのため、上述のニトリと同じ期間の営業利益成長率は年率7%にすぎません。
ニトリに関してはここ数年繰り返し推奨していますので、多くの読者もさすがに納得し始めているかもしれません。そこで、今回はほとんどだれも成長産業とは認識していない食品スーパーの中から、本当の成長企業としてベルク <9974> などへの注目をおすすめいたします。これらの企業の平均成長率は年率10%ほどありますが、バリュエーションはすべて10倍台半ば以下です。
(11月4日 記)
有賀泰夫(ありがやすお)
H&Lリサーチ代表。新日本証券(現みずほ証券)に入社後、アナリストとしてクレディ・リヨネ証券に転職。現三菱UFJモルガンスタンレー証券を経て、09年4月に独立して、H&Lリサーチを設立。ファンド向けアドバイスなどを行う。日本証券アナリスト協会検定会員。
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