【特集】「なぜハロウィンは日本でブレイクしたのか?」 博報堂行動デザイン研究所・國田所長に聞く!<直撃Q&A>
國田圭作氏(博報堂行動デザイン研究所 所長)
Q1 ここ数年、コスプレ衣装をまとった若者が街中を練り歩く姿が目立ちますが、どうしてここまでハロウィンは人気となったのでしょうか?
博報堂生活総合研究所が行った「生活定点」調査によると、ハロウィンの祝い事をした人は2008年ごろあたりから徐々に増えています。ハロウィンに仮装を楽しむ海外でのトレンドが報じられたり、ディズニー映画「アナと雪の女王」のヒットも相乗効果に繋がったのではないかと思います。若者は新しいものを消費・行動していくのが好きなので、そことうまくマッチしたのだと思います。一部のテーマパークが割と早くからイベントに取り入れたことも、若者に認知された要因ではないでしょうか。
一方、 クリスマスはイベントとして圧倒的ですが、年末の忙しさに加え平日にあたる場合があるので、クリスマス商戦は以前よりは沈静化している印象があります。そのあとのバレンタインデーも、義理チョコを買う女性が減り、自分へのご褒美チョコを買う日となりつつあります。この2つが男女交際に絡んだイベントとしては弱くなり、モチベーションが下がっているのではないかと考えます。
そういった状況のなかで、男女みんなで盛り上がれて、少し派手なコスプレを着た写真をソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上で拡散できることからハロウィン人気が盛り上がっているのかもしれません。
Q2 市場規模は約1200億円と、クリスマスに次ぐ商戦のひとつと言われていますが、経済規模の観点からはどうみていますか?
実際のところ、仮装グッズくらいしか目玉がないと思います。あとはお菓子のパッケージをハロウィン仕様にすることもありますが、それによって売り上げが倍になるというわけではありませんので、このままだと経済効果は限定的になってしまうと思います。
今年行ったアンケートで昨年のハロウィンの日にカボチャ料理を食べた人は全体の3割にとどまっていて、食べなかった人の理由としては、かぼちゃが嫌いだったり、料理に時間がかかったりすることや、冬至に食べる習慣があることなどが挙げられます。ハロウィン=かぼちゃを食べる日というイメージが強いですが、実際のところミスマッチが生じているのではないかと推測しています。
当研究所では、ハロウィンがもともとケルト人の収穫祭であることと、根菜類がおいしい季節であることに着目し、野菜とポットパイの生地とおばけシールのセットを百貨店の食料品売り場で販売しています。野菜におばけシールを貼って、それをポットパイにして食べておばけ野菜をやっつけようという提案をしています。日本人は食に対する関心が高いので、クリスマスといえばチキンやケーキといったように、そのイベントを象徴するごちそうがハロウィンにも定着してほしいところです。逆にいえば、家庭料理などの食にも根付かないと年中行事としての定着は厳しいとみています。
Q3 今後もハロウィンイベントは盛り上がっていくのでしょうか?
今年行ったアンケート調査によると、20~60歳代の女性の中でハロウィンイベントを行った人はおよそ14%程度でしたが、ハロウィンで自宅にかぼちゃを飾った人は25%と日本人のおよそ4世帯に1世帯は行事に参加していることになり、仮装はしなくても家庭の行事として取り込もうとする傾向は見られると思います。前述の通り、「生活定点」調査でも、ハロウィンの祝い事をした人は徐々に増加しているので、この先もじわじわと拡大していくと思います。コスプレイベントに関しては、新しいテーマがないと飽きられて別のイベントに移っていく可能性はありますが、行事としては、ハロウィンの意味が理解されて、決まったごちそうを食べるというところまで浸透していけば、一過性のトレンドではなく、年中行事のひとつになっていくとみています。
(聞き手・吉野さくら)
<プロフィール>(くにた・けいさく)
1982年博報堂に入社。以来、一貫してプロモーションの実務と研究に従事。自動車会社、ビール会社、飲料会社、家電、化粧品、流通など幅広い業種を担当。2006年カンヌ広告祭プロモ部門審査員。13年から現職。
出所:株経ONLINE(株式会社みんかぶ)