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【特集】オイルマネー再上陸を暗示? 不動産株爆上げの真相 <うわさの株チャンネル>

三井不 <日足> 「株探」多機能チャートより

―関門突破の旗振り役は不動産株だった―

 20日の東京市場は日経平均株価が満を持して中段を上放れる動きをみせ、一気に1万7200円台を回復、高値引けで5月末以来の水準を取り戻した。上値の関門突破で、にわかに年末高シナリオに向けての第一歩を踏み出した感触だ。中期的な上昇トレンド転換のポイントとなるのは終値ベースで4月22日につけた戻り高値1万7572円だが、そこを抜ければ年内1万8000円台回復も視界に入ってくる。

 日経平均が因縁場といってもよいボックス上限ラインの1万7000円近辺を突き抜ける動きをみせたのは、 不動産株の上昇が原動力となっている。朝方から大手・中堅を問わず総花的な買いが入り、久々の不動産株一斉蜂起となった。三井不動産 <8801> が5.7%高と急伸し6連騰、三菱地所 <8802> も一時4.5%高で約2ヵ月ぶりの2000円大台を回復、いずれも26週移動平均線とのマイナスカイ離を解消して、日足一目均衡表でも雲抜けを果たしつつある。このほか、住友不動産 <8830> 、東京建物 <8804> 、野村不動産ホールディングス <3231> などが同様に大きく買われる展開となったほか、平和不動産 <8803> 、ダイビル <8806> 、大京 <8840> など軒並み上値追い態勢を鮮明としている。

 業種別騰落率では「不動産」は一時4%を超える上昇率をみせ、同じく人気となった「証券」や「銀行」などを大きく引き離し、33業種中で断トツとなった。

●なぜ不動産株? 首を傾げる市場関係者

 しかし、なぜこのタイミングで不動産セクターに買いが集中したのか。その手掛かり材料について広く俯瞰してもどれも蓋然性に乏しく、市場関係者は一様に首を傾げる。一部では「野村不HDのマンションなどの住宅の成約好調で、同社の17年3月期の住宅販売計画が達成される可能性が高まったとのメディア報道が、不動産業界全体の業績不安の思惑後退につながった」との見解も示されていたが、「これをもって総花的な買いに発展するとは到底思えない」(準大手証券ストラテジスト)というのが市場関係者の本音でもある。

 国内経済は消費者のデフレマインドが再燃する一方で、商業地の地価がマイナス圏を脱し、オフィス空室率も改善傾向を続けるなど外部環境の風向きがプラスに変わりつつあることは確かだ。マンション販売も9月単月では回復色をみせている。しかし、腰を入れて買いを入れるには、まだあまりに不透明感が強いというのも事実である。

 前出のストラテジストは「不動産セクターは業種としては出遅れ感が強く、きっかけがあればリターンリバーサルの買いを呼び込みやすい状況にあった。ただ、9月はともかく年初からの累計でみればマンション販売の不調は覆うべくもなく、決算発表前のこの時期に国内機関投資家が、不動産に食指を動かすことはまずない」と言い切る。

●オイルが戻れば不動産に風が吹く

 であるとすれば、買いの主体は個人投資家か外国人投資家ということになるが、「今動いている個人投資家は短期筋がほとんど。時価総額が大きく値動きの重い主力株を買いに行くような向きはかなり希少な部類に入る。仮に買いを入れるとしても追随買いであって全体のトレンドを主導するような力はない」(国内中堅証券営業)という見方が強い。信託銀行を通じた政策マネーが上値を買い進む可能性も低く、したがって、消去法的には海外マネーの存在が大きくクローズアップされることになる。

 大手証券のマーケットアナリストは「買い主体としては外国人という見方が有力だろう。その際、これ以上叩くことは難しいとみた海外ヘッジファンド系資金のショートポジションをたたむ動きがひとつ。この場合は一過性の買いで終わる可能性がある。しかし、もうひとつ考えられるのは、オイルマネーによる実需買いだ」と指摘する。

 2014年の年央から原油市況は2年越しの構造的な調整局面に入っているが、それも今年1~2月で底入れを確認、直近は北米指標のWTI原油先物価格で1バレル=50ドル台を上回って推移している。中国の原油生産の落ち込みや、OPEC減産に対する思惑から原油価格は先高ムードが漂っており、オイルマネーに日本株を拾い直す動きが出てきてもおかしくないタイミングである。そのなか「仮に、オイルマネーが日本市場に目を向けたとしたら、不動産は悪目を出し切ったという判断から安値買い好機に映っても不思議はない」(大手証券アナリスト)という。

●“理外の理”が反騰相場の初動を演出

 では、金融政策面での追い風についてはどうみるか。日銀の金融政策決定会合が31日~11月1日に行われるが、イールドカーブ・コントロールに舵を切った日銀がここでマイナス金利の深掘りなどの追加緩和措置に動く可能性は極めて低い。したがって、短期的には緩和トレードの対象として不動産株は妙味が薄いといえる。しかし、黒田総裁は物価上昇率が安定的に2%を超えるまでは金融緩和の手綱を緩めないという「オーバーシュート型コミットメント」を打ち出しており、時間軸に関係なく不動産セクターには中長期的に順風環境が保証されているという受け止め方もできる。

 これまでは不動産を買うならREITを買えば事足りるという考えがあったが、不動産株は指数で比較するとREITよりも相対的に低い水準に売り込まれている。「今後はREITから不動産株に資金がシフトされる可能性も考えられる」(前出の大手証券アナリスト)。この日の不動産株の突発高が、海外短期筋の買い戻しなのか、それともオイルマネーを含む足の長い機関投資家マネーかは現時点では不明ながら、テクニカル的には底練り十分の不動産株に“理外の理”による買いが断続的に流入する可能性はありそうだ。

(中村潤一)

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