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【特集】好発進「JR九州」、今後の株価の見通しは? <株探トップ特集>

JR九州が誇る豪華列車「ななつ星」、株価も同様の快走なるか――。

―割安感や配当利回りなどに高評価、大株主不在で思惑も―

 JR九州 <9142> が25日、東証1部に新規上場し初値は公開価格に対し19.2%上昇と順調なスタートを切った。JR九州のIPO(新規上場)は16年では時価総額ベースで、LINE <3938> に次ぐ規模となる超大型案件。個人投資家や海外投資家も投資に前向きだったとみられ、全般相場が底堅い地合いとなるなか、上場のタイミングもまずまずの時期となった。順調な上昇となったJR九州だが、その注目材料は何か。

●LINEに次ぐ大型上場、西鉄など関連株も堅調推移

 JR九州は25日に東証1部に新規上場し、初値は公開価格(2600円)を19.2%上回る3100円となった。その後、3120円の高値をつけた後は、やや利益確定売りにも押され、3000円前後での一進一退で推移した。福証にはあす上場となる。

 初日の売買に対して、「堅調なスタートを切ったことは東京市場全体にとって前向きな材料」(ネット系証券ストラテジスト)との評価が多い。

 JR九州は、JRグループではJR東日本 <9020> 、JR西日本 <9021> 、JR東海 <9022> に続く4社目。いわゆる「3島会社(JR九州、JR北海道、JR四国)」では初の上場企業となる。上場に際し国内外で1億6000万株の売り出しを実施。上場の取りまとめ役を果たすジョイント・グローバル・コーディネーターは野村証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、JPモルガン証券が務めた。

 上場時の時価総額は4160億円。今年のIPO企業としては、LINEに次ぐ2番目の規模となり、調達資金(資金吸収額)も4160億円に達した。

 上場にあたり国土交通省所管の独立行政法人、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が保有株を売却した。過去の例でも、昨年の日本郵政 <6178> 、ゆうちょ銀行 <7182> 、かんぽ生命保険 <7181> の郵政3社を含め、民営化案件の上場時は堅調なスタートを切っており、JR九州も、上々の発進となった。JR九州の関連株とされた西日本鉄道 <9031> やエイチ・アイ・エス <9603> なども堅調な値動きとなった。

●業績は改善基調、配当面などで割安感

 JR九州は株価のバリュエーション面で割安感が指摘されている。17年3月期の予想連結最終損益は382億円の黒字(前期は4330億円の赤字)の予想。前期は、5000億円強の減損損失を計上したが、13年に運行開始したクルーズトレイン「ななつ星in九州」や九州新幹線などで知られる鉄道事業の採算は改善しており、今期は黒字に転換する。

 また、全体の利益に対する非鉄道事業の割合は5割強となっており、特に、JR博多駅の「JR博多シティ」などの商業施設やホテルの開発・運営を手掛けており、不動産関連事業を積極展開している。

 JR九州株に対するブックビルディングでの外国人投資家の引き合いは好調だったともみられているが、「不動産株としての評価も入っているのだろう」(アナリスト)という。

 株価は今期予想連結PERで12倍台、今期は1株当たり配当金37円50銭が予定されており、株価3000円前後でも年換算の配当利回りは2.5%前後の水準にある。配当利回り面などはJR東などに比べ割安感もある。

●大株主不在で「M&A思惑」指摘の声も

 また、「株主優待での魅力も」(市場関係者)との見方も出ている。同社は1単元(100株)に対し鉄道株主優待券を1枚発行。1枚で1人営業路線内の乗車券が5割引きとなる。これはJR西日本と同様の水準で、JR東日本の20%割引(2枚利用で40%)、JR東海の同10%(同20%)に比べ割引率は高い。JR九州圏内など利用者には魅力的な割引となる。さらに、JR九州ホテルの宿泊料金割引などの株主優待券もつく。

 加えて、今後の株価をみるうえで注目されるのが、来月末に予定されるTOPIXへの組み入れだ。同じ民営化関連株の郵政3社のTOPIX組み入れは昨年11月4日の新規上場だったため翌月末まで2ヵ月近くの期間がかかった。

 ただ、JR九州のTOPIXは10月月末上場の11月月末組み入れとなるためほぼ1ヵ月後と最短コースとなる。このTOPIX組み入れ期待が株価下支え要因となるとみられている。

 さらに、市場の一部で囁かれているのが、「M&A(買収・合併)」絡みの思惑だ。今回の上場に対して、鉄道建設・運輸施設整備支援機構は全株を売却。同社は大株主不在での株式上場となる。あるアナリストは「時価総額の半分を握るとして2500億円前後の資金があれば企業買収できることになる。豊富な資産を持つだけに海外ファンドなどにとっては買収先として魅力的な対象ではないか」と指摘する。市場では、今後JR九州の大株主にどんな名前が挙がってくるかが注視されている。

 こうしたなか、同社の株価は当面は「3000円前後での堅調な値動きが続くのでは」との見方が出ている。

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