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【経済】仮想通貨の未来に起こりうる3つのシナリオ【野口悠紀雄が語るフィンテックと仮想通貨(2)】「FISCO 株・企業報」より


仮想通貨の今後については、3つのシナリオが考えられます。

1つは今までのビットコインのような仮想通貨に移ること。もう1つは、日本のメガバンクがつくる独自の仮想通貨に移ること。さらに、もうひとつのシナリオとしては、中央銀行が仮想通貨を発行するということです。

実際、中国では中国人民銀行が仮想通貨を発行する計画を持っているといわれています。これにより、今までのような通貨ではなく、非常に強い統制、コントロールができることになります。私はそれは最悪のシナリオだと思いますが、中国だけでなく、他の国でも同様なことは考えられます。

なぜ最悪のシナリオかといえば、仮想通貨では資本逃避ができないため、全部コントロールされるわけです。要するにこれまでの通貨が使えなくなる。しかも電子的な手段のため、ありとあらゆるコントロールが可能になるわけですよ。つまり、通貨を握ることは、経済活動すべて統制できるからです。

メガバンクが発行する仮想通貨の場合、中央銀行の決済システムから独立した独自の通貨網ができる可能性があるわけです。私はそれは自由通貨とかなり似た仕組みだと思っています。だからうまくいけば、そのシステムはある種の自由主義的な通貨体制を実現していく形になるでしょう。

個々のメガバンクがつくる独自の仮想通貨がどれぐらい受け入れられるかは、その使いやすさやお店がどれぐらい受け入れるかなどによって決まるわけです。ということは、同じように1コイン=1円としたとしても、実際の価値が変わってくるでしょう。とある銀行だともっと高くなるなど、競争が起こるわけです。それはある意味では望ましい体系だと思うわけです。

私はメガバンクが独自の仮想通貨を発行しようとしているのは、大変注目すべき現象だと思っています。
(野口悠紀雄/早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問)

※本稿は実業之日本社より刊行されているムック「Jマネー FISCO 株・企業報 2016年秋冬号」の記事からの抜粋(一部修正)です。野口悠紀雄氏へのインタビュー全編「フィンテックの近未来と通貨革命」は、現在発売中の「Jマネー FISCO 株・企業報 2016年秋冬号」をご覧ください。

《FA》

 提供:フィスコ

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