【特集】撲滅“ヒヤリハット”、安全装置の「義務化」検討で注目の株 <株探トップ特集>
事故防止に向け「バックカメラ」の義務化が検討されている。
―国交省は新規則の導入検討、米国は18年にバックカメラ義務化―
国土交通省が自動車の安全対策で、次々と新しいレギュレーション(規制、規則)の導入を検討している。背景には交通事故件数が依然として高い水準で推移していることがあり、3月に策定した「第10次交通安全基本計画」で掲げた2020年までに年間の死者数を2500人以下(15年は4117人)、死傷者数を50万人以下(同67万人)にすることを目指す。
交通事故を減少させるには、いかにして「ヒヤリハット」を減らすことができるかが重要なカギとなる。ヒヤリハットとは、結果として事故には至らなかったが、事故につながる一歩手前で回避できたシーンのことで、慣れや眠気、疲労、感情の変化によって引き起こされる。1件の死亡事故の背後には29件の重軽傷事故と300件のヒヤリハットが存在するといわれており、早急な対策が求められている。
●クラリオン、JVCケンウッドは「バックカメラ」で商機
国交省が検討している「ヒヤリハット」対策のひとつが、自動車の後方の安全を確認する「バックカメラ」の義務化だ。昨年10月に徳島市でバックしてきたトラックにはねられる死亡事故が起きたことがきっかけとなっており、同省は自動車の世界的な基準を決める今年10月の国際会議で、運転席から目視での確認が難しい車体直後の約3メートル四方の範囲の安全を確保すべきだとの規制を提案するという。14年に生産された乗用車約438万台のうち、バックカメラを搭載しているものは約153万台(約35%)にとどまっており、義務化によって普及率を高める狙いがある。
また、米国では18年5月からバックカメラが義務化され、今後は米国向けの輸出車に同装置の搭載が不可欠となることも関連企業の追い風となる。自動車の四隅にカメラを設置し上空から俯瞰するアラウンドビューモニターで実績のあるクラリオン <6796> をはじめ、JVCケンウッド <6632> 、パイオニア <6773> 、アルパイン <6816> のビジネス機会の拡大が期待される。また、同省は超音波のセンサーで障害物を察知する「バックソナー」の活用も認める方針で、日本セラミック <6929> などにも商機が広がりそうだ。
●スタンレー電、小糸製は「オートライト」で注目
2つ目は、暗くなれば自動でヘッドライトが点灯する「オートライト」の義務化。高齢歩行者の死亡事故が薄暮時に集中していることから、多くの車両でドライバーの判断に任されている点灯の遅れを防ぐことが目的で、自動車ライトを手掛けるスタンレー電気 <6923> や小糸製作所 <7276> などが関連銘柄として挙げられる。
●フジクラは「シートベルト・リマインダー」関連
3つ目の対策として、シートベルト未着用で走行した場合に警告音を鳴らす「シートベルト・リマインダー」の全座席での義務化も検討されている。後部座席でシートベルトを着用せずに事故で死亡するケースが少なくないためで、この分野ではフジクラ <5803> が恩恵を受けそうだ。
●AKIBA、ザインは「ドライブレコーダー」の需要増を期待
4つ目が、貸し切りバス事業者に対する「ドライブレコーダー」の義務化だ。今年1月に起きた軽井沢スキーバス事故をきっかけに、国交省内にワーキンググループが設置され、今秋までに性能要件案などをとりまとめる予定となっている。同省は10年度から中小のバス事業者を対象に導入費用の一部を補助しているが、設置は貸し切りバスの約2割にとどまっている。グループ会社が同装置を製造しているAKIBAホールディングス <6840> [JQ]や堀場製作所 <6856> 、オプテックス <6914> 、KYB <7242> 、クラリオンのほか、部品を手掛けるザインエレクトロニクス <6769> [JQ]などへの需要増加が見込まれる。
●オムロン、パイオニアは「居眠り防止装置」を開発
このほかでは、居眠り防止装置の標準搭載を視野に製品化を急ぐ動きも活発化している。豊田合成 <7282> は3月にトラック向け脇見・居眠り警報ハンドルを開発したほか、パイオニアの中国子会社は4月に「眠気検知ユニット」を開発。NTTデータ <9613> は5月に眠気検知システムの実証実験をスタートし、オムロン <6645> は6月にドライバーの状態をリアルタイムに判定する最先端AI(人工知能)を搭載した車載センサーを開発した。また、既に開発済みのデンソー <6902> やアイシン精機 <7259> 、太陽誘電 <6976> 、JUKI <6440> 、住友理工 <5191> などにも注目したい。
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