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【特集】医療機器輸出“1兆円”へ、「低侵襲治療」開発最前線 <株探トップ特集>

テルモ <日足> 「株探」多機能チャートより
朝日インテク <日足> 「株探」多機能チャートより

―オンリーワン世界最先端分野開拓へ研究開発促進―

 政府は5月31日、医療機器政策に特化した初の基本計画を閣議決定した。その後の参院選突入などでこの話題は埋没したかにもみえるが、14年7月に同じく閣議決定された「健康・医療戦略」では2020年に医療機器輸出額を1兆円まで拡大させる目標の工程表ともいえる内容で、政府の力の入れようがうかがえる。 医療機器産業はアベノミクスの3本の矢の政策の一つとして成長戦略に位置付けられていることからも、引き続き注目が必要な分野だろう。

●基本計画で医療機器の研究開発を促進

 同基本計画は、先進的な医療機器の研究開発の促進、医療機器開発関係者の連携協力に関する措置、迅速な承認体制および適正使用の確保など5つの施策について取り組むべきことを長期的視点に立って定めたもの。

 特に研究開発の促進では、オンリーワンの世界最先端分野を切り開くために、手術支援ロボットシステム、人工組織・臓器、低侵襲治療、イメージング(画像診断)、在宅医療機器(ポータブル歯科用ユニットなどを含む)などにターゲットを絞り込み、全ての関係者の力を糾合することが必要であるとしている。

●低侵襲治療分野が医療機器開発の主戦場に

 こうしたなか近年、業界内での動きが活発となっているのが、低侵襲治療の分野だ。

 低侵襲治療とは、患者の太ももなどに設けた小さな開口部に内視鏡やカテーテルなどを挿入して、脳や心臓の狭窄した血管を広げたり、動脈瘤(りゅう)などを治療する技術。開腹手術などで患部を大きく切るよりも患者の負担が小さく、治療にかかる時間を短縮できるため、医療費の抑制にもつながる。

 近年では、がん細胞への血流を阻害したり、がん細胞にのみ抗がん剤を注入するがん治療法が登場するなど、治療領域も拡大しており、医療機器各社では「低侵襲治療のための医療機器開発が、研究開発における主戦場となっている」(中堅証券会社)という。

●カテーテルのテルモ、朝日インテックなど注目

 ただ、同分野では米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスなど海外企業が強く、日本は多くの製品を輸入に頼っているのが現状でもある。

 そうしたなか注目されているのが、カテーテルガイドワイヤーで国内首位のテルモ <4543> や、同じくガイドワイヤーが主力の朝日インテック <7747> [東証2]だ。カテーテルは、米国で手首からカテーテルを挿入する経橈骨(とうこつ)動脈カテーテル術(TRI)の需要が増えたことで、関連製品需要も増加しているが、両社ともこれに合わせた新製品の投入などが奏功している。

 さらにテルモでは6月14日に脳動脈瘤用塞栓デバイスを開発する米シークエント・メディカル社の買収を発表しており、カテーテル治療分野と並ぶ事業へと育てる方針のようだ。

 また、参天製薬 <4536> では7月19日、緑内障治療に使う「マイクロシャント」という低侵襲の治療機器を開発する米医療機器ベンチャー、インフォーカス社(フロリダ州)を買収すると発表した。「マイクロシャント」は、生体適合ポリマーで作製したチューブ状の機器で、単独もしくは白内障手術との併用で施術され、眼内に留置して流出路を確保し、房水の流出を促すことによる眼圧下降効果が確認されている。

 既に欧州におけるCEマークの承認を取得しており、現在はFDA(米国食品医薬品局)の承認取得に向けた最終段階の臨床試験が米国などで実施されている。今後、新たな医療機器関連として注目されそうだ。

●ソニーとオリンパスが共同で外科用内視鏡分野に参入

 一方、 内視鏡の分野では日本メーカーが強く、特に消化器内視鏡では世界シェアの約7割をオリンパス <7733> が占め、富士フイルムホールディングス <4901> やHOYA <7741> がそれに続く。

 また、これまで独カールストルツや米ストライカーが先行していた外科分野についても、昨年10月、ソニー <6758> とオリンパスの合弁会社ソニー・オリンパスメディカルソリューションズが4K外科手術用内視鏡システムの販売を開始し、シェア獲得に乗り出した。今後の業界勢力図に変化が起こることが期待されている。


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