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【特集】「ブロックチェーン革命の衝撃」 平野洋一郎BCCC理事長に聞きました! <直撃Q&A>

平野洋一郎氏(ブロックチェーン推進協会理事長)

 金融とIT(情報技術)を融合した「フィンテック」。その中でも、市場からも高い注目を集めている「ブロックチェーン」は仮想通貨ビットコインを支える基礎技術として、土地や流通管理や各種登記などにも利用されることが期待され、ビジネス環境を一変させる可能性も秘めている。ブロックチェーンの持つ展開力と日本経済が抱える課題についてブロックチェーン推進協会(BCCC)理事長でインフォテリア <3853> [東証M]社長の平野洋一郎氏に聞いた。

●平野洋一郎氏(ブロックチェーン推進協会理事長)

Q1 BCCCは今年4月に創設され6月末に第1回目の総会を開催しました。協会設立後の反響はいかがですか

 発足当初は34社からスタートし6月末までに50社の加入を目指していたが、すでに62社に加入していただいた。年内には100社程度の参加を見込んでいる。BCCCでは、ブロックチェーンに関する普及・啓発や情報共有などを進めることを目的にしている。また、スタートアップ育成のため、資金調達支援なども行う方針だ。成長企業が世界で勝負できるように海外との連携も図れるようにする。国内だけのガラパゴス的な活動にするつもりは全くなく、世界で通用し活躍できる地盤を作りたいと考えている。

Q2 ブロックチェーンは、「第2のインターネット革命」をもたらすと予想する声もあります

 ブロックチェーンを「フィンテック」という金融に関わる分野にとどまらず、取引のルールをブロックチェーンに記録し価値交換までのオートメーション化などを実現する「スマートコントラクト」まで発展させれば、会社や社会の有り様を変えることになり、「第2のインターネット革命」をもたらす、と言えるだろう。取引のルールをブロックチェーン上に記録し、そのルールに基づきビジネスを進めることで、さまざまなオートメーション化が起こる。それは、ビジネス取引や組織のあり方も変えていく。

 金融関係に限っても、例えば米国ではシリコンバレー発の企業が融資専門会社として誕生し、既存の大手金融機関に脅威を与えるような動きが出ている。AI(人工知能)やブロックチェーンを活用し、銀行より早く手数料も安く、精度の高い融資を行っており、大手金融機関からは「シリコンバレーに負けるな」という発言も出ているほどだ。

 また、ブロックチェーンを活用することで証券取引の名義書き換えを、売買の当日で終わらせる「T+ゼロ」のようなことも可能となるだろう。ただ、これには関連する機関全てをブロックチェーンでつなぐ必要があり、実現するのは大分先の話だと思う。究極的には、証券取引所もいらなくなるかもしれない。

Q3 黎明期にあるブロックチェーンには、まだまだ半信半疑の声もあります

 インターネットが普及し始めた時にも、さまざまな懐疑的な視線が向けられた。メールが本当に着くのか、誰が保証するのかといった声もあった。しかし、いまは誰もそんなことは言わない。同様にブロックチェーンは、間違いなくこれからは当然の技術になっていく。忘れてはいけないことは、技術は進化するということだ。すでに1年前のブロックチェーンと、いまでは違う。5年後が現状のままということはあり得ない。いま抱えている問題は、どんどん解決されていくだろう。

Q4 日本はブロックチェーンを活用し世界で戦っていくことはできますか

 日本のブロックチェーン技術が遅れていることはないと思う。例えば、当協会の副理事長を務めるテックビューロ(大阪府)のプライベートブロックチェーン「mijin」は、世界初となる銀行のリアル業務での実証実験を成功させている。ただ、日本は実際の各企業での実証実験や、適用とその情報共有に関しては遅れている面はあり、より活用を推進していく必要があるだろう。

 日本のスタートアップの少なさは大きな問題だ。米国と異なり、IT関連の業界を眺めても日本はこの何十年もメーンプレイヤーが変わっていない。プレイヤーが変わらないようなことは革命とは言えない。このブロックチェーンの登場でも、日本は変わらないのかもしれないと危惧している。ブロックチェーンは社会の基盤になっていく技術だ。この競争力を維持するための基盤を作っていきたい。そのことが、結局は国力の増強につながると考えている。

(聞き手・岡里英幸)

●ブロックチェーン推進協会(BCCC)
16年4月25日に発足した日本初のブロックチェーン業界団体。理事長は平野洋一郎氏。「あらゆるビジネスにブロックチェーンの力を」を協会の目標に、普及・啓発、情報共有、領域拡大、海外連携、資金調達支援などの活動を行う。

<プロフィール>(ひらの・よういちろう)
ブロックチェーン推進協会理事長。インフォテリア社長。熊本県生まれ。熊本大学を中退し、ソフトウエア開発ベンチャー設立に参画。1987~98年、ロータス株式会社(現・日本IBM)でのプロダクトマーケティングおよび戦略企画の要職を歴任。98年、インフォテリア株式会社を創業。2007年、東証マザーズに上場。

(注)ブロックチェーン――ビットコインによって発明されたピア・ツー・ピア方式によるデータ処理の基盤技術。安価なコンピューターで稼働し、ゼロダウンタイムと改ざん不可能なセキュリティーなどを実現。劇的なコスト削減を可能とし金融業界などから高い注目を集めている。


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