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【特集】海外勢が“高評価”、「LINE」は市場の救世主になるか <株探トップ特集>

波乱相場続くなか、LINEは仮条件を引き上げ。市場の見方は?

―IPO目前の仮条件引き上げはポジティブサプライズに―

 今年度最大のIPOとなるLINE <3938> [東証](ニューヨーク市場:LN)の株式上場が近づいてきた。同社の公開価格は11日に決定し、14日にニューヨーク市場、15日に東証に上場する。過去2年強にわたり関心が高かった同社の株式上場がついに実現する。ただし、同社の成長性や株価の評価に対しては強弱感が入り混じった声も飛び交う。果たして、LINEは波乱市場の救世主となるか。

●波乱市場のなか仮条件のレンジ切り上げ

 無料通信アプリ大手、LINEの上場は先月10日に発表された。しかし、その後突如巻き起こった英国の欧州連合(EU)離脱問題を受け、波乱相場のなかでのIPOとなる見通しだ。海外に目を向けてもIT関連株の上場としては最大規模となる注目銘柄だけに、英国ショックが思わぬ逆風になることが懸念される。

 市場に警戒感が強まるなか、同社は仮条件の発表日を1日ずらし28日としたうえで2700~3200円を提示。想定発行価格(2800円)に対して、強めの仮条件が示された。さらに今月4日には、仮条件のレンジを2900~3300円に引き上げた。逆風吹く中での仮条件の引き上げはポジティブサプライズと市場は受け止めた。公開価格の決定は、11日だが、レンジの上限で決まった場合、時価総額は約6900億円、資金調達額は約1300億円となる。

●国内機関筋は慎重も海外投資家は強気?

 LINEのIPOでは60%強の公募株式が海外投資家に割り振られているが、仮条件引き上げに対しては「国内機関投資家は慎重な一方、海外投資家が強気なのだろう」(ファンドマネジャー)という見方が出ている。

 LINEの上場に対して、国内の市場関係者からは慎重な声も少なくない。14年にLINEのIPOの噂が出た際は時価総額1兆円と言われていたのに対し、今回の上場時のそれは大きく目減りした。また、LINE利用者数の増加ペースも鈍化していることから「旬の時期が過ぎてからの上場」(アナリスト)との声が出ている。

 ただ一方、「メッセンジャーアプリで世界一の企業に急成長することを期待するのなら、それは難しい。しかし、着実に成長して業績を伸ばす企業とみるなら、評価の余地はある」(準大手証券アナリスト)との見方もある。

 海外投資家からの評価に対しても、米国のツイッターやフェイスブックなど「海外企業とのバリュエーション面の比較から評価されたのでは」ともみられている。市場からは「長期的な評価は別にして、短期的には上値が期待できるのではないか」(ファンドマネジャー)という、前向きな見方も出ている。

 当面の焦点は、公開価格がいくらで決まるかだ。状況次第では、仮条件の中間あたりで値段が決まる可能性もあるが、上限である3300円で決まった場合、「うまくいけば3000円台後半から4000円を意識する展開も」(同)と期待する声もある。

●日米同時上場の価格形成に関心も

 LINEのIPOで見逃せないことは、初の日米同時上場となることだ。14日にニューヨーク市場に上場した後、15日に東京市場に上場する格好となり「ニューヨーク主導の価格形成となる可能性も」(アナリスト)という。このため、東京市場ではドル建て価格を円換算して株価をみる必要が出てくる。また、国内で公募を受けた分はニューヨーク市場では売却できない。IPOの申し込みから上場までの期間も短く“海外仕様”となっている。

 日米同時上場による株価の価格形成が気になるところだが、「日本の国内事情を良く知らない外国人が株価を大きく左右した場合、一方的な値動きになる可能性も」(アナリスト)と指摘する声も出ている。さらに、値幅制限がないニューヨーク市場でLINE株が急騰や急落した場合、日本市場ではストップ安やストップ高の値幅制限に引っ掛かり、値動きが追い付かないことも起こり得る。LINEの取引では海外ADSで同社株に対応しているオンライン証券などに口座を持つなどの対応も必要になるかもしれない。


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