【特集】大塚竜太氏【どこまで続く? 灼熱のサマーラリー】(1) <相場観特集>
大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト)
東京株式市場は3連休明けの19日も強調展開を継続、前週の地合いを引き継ぎ日経平均株価は6日続伸で1万6700円台を回復してきた。英国のEU離脱決定でリスクオフの流れが強く意識された7月第1週(4~8日)から一転、参院選での与党大勝を受け相場の流れは大きく“強気”に傾いたようにもみえる。果たして今の戻り相場は本物か。市場第一線で活躍する証券関係者に今後の相場見通しと注目ポイントについて聞いた。
●「日銀の次回会合が最大のポイントに」
大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト)
国民投票で想定外の離脱決定となったブレグジット問題だが、当初指摘していた通り、世界のマーケットにそれほどネガティブな影響は及んでおらず、7月11日以降の東京市場の戻り相場はそれを裏付けている。背景としては世界的な金融緩和モードにより流動性が担保されていることが大きい。日本国内に目を向ければ、参院選での自民・公明の圧勝が外国人投資家の資金流入につながったとみられる。かつての小泉首相が踏み込んだ“郵政解散”の時もそうだったが、外国人は重要な政治イベントの後に積極的な投資行動を起こすことが多く、今回もそのパターンに合致したといえそうだ。
ただし、東京市場では政府の大型補正予算と日銀のドラスチックな追加緩和を織り込んだうえで、ヘッジファンドなど短期資金を含めた大口買いが入っていることを忘れてはならない。したがって戻り本番というには時期尚早で、市場の期待が裏切られた場合は、急勾配の下げ相場に遭遇する懸念もくすぶっており、注意が必要だろう。
日銀が28、29日の金融政策決定会合で万が一ゼロ回答だった場合は日経平均1万5000円を割り込むような相場崩落もあり得る。また、財政出動、追加緩和の両輪が揃ったにせよ、補正予算で10兆円規模、日銀の量的緩和でも3兆円を大幅に上回るETF買い入れ枠拡大などが事前に期待として織り込まれているため、このハードルをクリアできないケースでは売り優勢に傾く可能性もある。
目先最大のポイントとして、まずは次回会合で日銀がどういうカードを切るかに注目したい。独り歩きする「ヘリコプターマネー政策」は額面通りに現実化しなくても、失望売りの洗礼を浴びるとは思えないが、広義の超金融緩和に日銀は何らかの形で舵を切る必要性に迫られている。
一方、政府の補正予算は8月初旬にもその骨格がみえてくると思われるが、日銀と歩調を合わせた政策が、再び説得力を持って外国人の中長期資金を誘導する格好となれば、秋口に向け日経平均は1万7000円台を駆け上がり1万8000円を視野に置く大出直り相場も十分に考えられる。
セクターとして注目しているのは、まず三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> などメガバンクを中心とした銀行セクター。外国人主導の戻りを考えた場合、ここが安値に放置された状態での相場再構築はないと考えてよい。また、世界的なリスクオンはイコール円安であるから輸出株も大きく見直される公算が大きい。トヨタ自動車 <7203> をはじめとした自動車セクターは要マークといえる。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(おおつか・りゅうた)
1986年岡三証券に入社(株式部)。1988年~98年日本投信で株式ファンドマネージャーを務める。2000年から東洋証券に入社し現在に至る。
株探ニュース