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【特集】5人に1人「認知症」時代へ、診断薬・治療薬開発の“今” <株探トップ特集>

エーザイ <日足> 「株探」多機能チャートより

―改正道交法施行で早期発見へ関心高まる―

 認知症が大きな社会問題となっている。厚生労働省によると、2012年の国内における認知症患者は推計で約462万人で、65歳以上の高齢者の約7人に1人と推計されている。また、25年にはこれが700万人に達し、高齢者の5人に1人が認知症になる見込みだという。

 超高齢化社会の到来で、認知症患者と社会との関わりもまた増えることになるが、認知症は症状の進行が事故や事件につながりかねず、治療薬の開発と並んで、早期発見、早期治療が求められている。

●改正道交法で75歳以上ドライバーに認知機能検査実施へ

 5月中旬、特定の違反をした75歳以上のドライバーに臨時の認知機能検査(ドライバーの記憶力や判断力を把握するための簡易検査)を課す改正道路交通法の施行日が来年3月12日になりそうだと報じられた。改正道交法の施行に関しては、昨年6月の公布から2年以内とされたが、認知症の高齢者による高速道路の逆走などが相次いでいることから、前倒しで整備を進めていたという。

 運転免許は、医師が認知症と診断すると取り消される。ただ、現在の法律では、認知機能の検査は3年ごとの免許更新時に限られ、「認知症の恐れがある」(1分類)とされても違反歴がなければ医師の診断は不要だった。

 改正法では、逆走などで一定の違反があった段階で臨時の検査を実施し、更新時や臨時の検査で1分類とされると診断が義務付けられるようになる。免許更新時の検査で1分類とされた場合も同様で、もし検査を受けなければ、それだけで免許停止や取り消しとなる。これにより、免許停止や取り消しが急増する可能性はあるが、認知症を早期に発見することによる事故防止がより重視されている。

●エーザイとシスメックスの取り組みに注目

 社会的にも認知症の早期発見が重要視されるようになってきたことを受けて、関心が高まっているのが認知症の診断薬だ。

 現在、認知症を精密に診断するためには、脳画像検査や脳脊髄液検査が必要で、高額な検査費用や患者の体の負担の重さ、さらには検査施設の少なさなどが課題となっている。そこで、筑波大学発ベンチャーのMCBI(茨城県つくば市)が、血液中のたんぱく質を解析して「軽度認知障害(MCI)」を判定するサービスを提供しているが、健康保険が適用されていないことから、普及はまだまだだ。

 こうしたなか、エーザイ <4523> が2月、認知症の早期発見に向けた診断薬の開発のため、シスメックス <6869> と非独占的包括契約を締結したことが注目されている。

 両社では3年後までに患者から採取した血液による簡単かつ安価に検査できる診断薬の開発を目指すとしている。開発に成功すれば、予防や症状悪化に早期に取り組めるため、ニーズは大きい。

 このほか、アルツハイマー型認知症の診断薬を手掛けるニプロ <8086> 、アルツハイマーの原因の一つとされる脳内のアミロイドベータプラークをPET検査で可視化する化合物「florbetapir注射液」を合成する住友重機械工業 <6302> なども関連銘柄として関心を高めそうだ。

●治療薬も製薬メーカーがしのぎを削る

 認知症の治療薬も各社がしのぎを削る分野だろう。

 現在、認知症の根治療につながる薬はまだなく、症状を軽くし、進行の速度を遅らせるのが主な治療法。認知症患者の約5割を占めるアルツハイマー型認知症の治療薬としては、武田薬品工業 <4502> の「レミニール」、第一三共 <4568> の「メマニー」などがある。また、前述のエーザイは中国などで「アリセプト」(11年6月に国内特許切れ)の販売拡大を狙う。

 さらに、開発中のものとしては、富士フイルムホールディングス <4901> 傘下の富山化学工業が「T-817MA」の国内第2相臨床試験を実施中。大塚ホールディングス <4578> 傘下の大塚製薬もアルツハイマー型認知症に伴う行動障害の治療薬として「AVP-786」の米国第3相臨床試験を実施しており、開発の進捗状況に注目したい。


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