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【特集】インフラ輸出拡大へ“22兆円”資金枠、恩恵はどこへ <株探トップ特集>

日本工営グループによるペルーのカヤオ港湾整備事業

―サミット合意「質高いインフラ投資」も後押し―

 5月26~27日にかけて開催された主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」が首脳宣言の付属文書として採択された。インフラ輸出の拡大は安倍政権の成長戦略の要のひとつでもあり、プロジェクト成功のカギを握る建設コンサルタントの活躍余地は今後いっそう広がることが予想される。

●新興・発展途上国の需要8360億ドル

 質の高いインフラ投資とは、各国の開発戦略や開発ニーズを踏まえ、環境にやさしく強靭性があり、雇用創出、技術移転、災害への備えを確保したもので、各国が真に必要なものを指す。G7の成果文書では、国際開発金融機関(世界銀行グループ、アジア開発銀行、米州開発銀行、欧州復興開発銀行、アフリカ開発銀行)およびPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:官民連携)などを通じた資金調達と、民間部門を含む資金を効果的に使うことが必要不可欠であると指摘している。世界銀行が15年に発表した報告書では、20年までの新興・発展途上国のインフラ需要は年間8360億ドルに上り、なかでも南アジア(インド半島を中心とする地域)は3090億ドル、東アジア・太平洋地域が2120億ドルに達すると予想している。

●JICAのユーロ建て海外融資を解禁へ

 日本には質の高いインフラを可能にする技術が数多くあり、例えば鉄道システムもそのひとつだ。昨年12月に行われた日本とインドの首脳会談では、インド初の高速鉄道計画について日本の新幹線方式の採用で合意し、今年5月16日には導入実現に向けた第2回合同委員会が開催された。また、安倍政権はアジアだけでなく世界中のインフラ輸出支援に注力する方針を示しており、5月23日に開いた経協インフラ戦略会議では今後5年間の資金供給枠を現行の2倍近い最大2000億ドル(約22兆円)とする目標を決定するとともに、国際協力機構(JICA)にアフリカでニーズの高いユーロ建て海外融資の解禁を検討することなどにも言及した。今後は鉄道や発電所、港湾だけでなく、石油・ガスなどの資源開発や病院建設などの幅広い分野でインフラ・プロジェクトが進む見通しで、関連企業を後押しすることが期待される。

●日本工営、建設技研、長大などに注目

 日本工営 <1954> は総合建設コンサルタント最大手で、ODA(政府開発援助)で高い実績を誇る。「旺盛なインフラ整備需要が見込まれるアジア新興国を中心に、空港や港湾、交通・運輸分野を強化していく」(コーポレートコミュニケーション室)とするなか、今月8日にはバングラデシュ新空港建設の事業化調査を同国の民間航空局から約16億円で受注したと発表。今春には英国の建築設計大手BDPホールディングスの買収が完了し、今後さらに世界での活躍が期待される。

 建設技術研究所 <9621> の海外事業は子会社の建設技研インターナショナルが担当。直近ではフィリピン企業から大型の下水道整備業務を受注するなど、民間市場開拓による顧客層の多様化を進めている。

 長大 <9624> [東証2]は道路や橋梁に強みを持つ。新事業分野の開拓にも注力しており、今年4月にはインドネシア小水力発電事業会社などと同国に合弁会社を設立することで合意した。また、同月にはグループ会社を通じてフィリピン企業と同国ミンダナオ島での低炭素型経済開発および再生可能エネルギー事業で覚書を締結している。

 応用地質 <9755> は地質調査やコンサルティングが主力業務。事業拡大などを掲げた現行の中長期経営計画では17年12月期の目標として海外売上高比率30%以上(15年12月期は約19%)を打ち出している。

 大日本コンサルタント <9797> [東証2]は長大との共同事業体で、日本のODAによって建設されたベトナムのニャッタン橋の主橋梁部の詳細設計および施工監理を手掛けた実績などを持つ。現行の中期経営計画では海外も含めた同業他社との連携強化を推し進め、東南アジアやアフリカ地域をターゲットに事業拡大を目指すことを掲げている。

 このほかでは、エチオピアやザンビアなどアフリカ地域で実績のあるE・Jホールディングス <2153> [東証2]、上下水道など水インフラに強みを持つNJS <2325> およびオリジナル設計<4642.T>、JICAの支援を受けて東北の物流企業とベトナムでカイメップ港の機能向上に向けた物流サービス提供のための案件化調査を実施中の福山コンサルタント <9608> [JQ]などにも商機が訪れそうだ。


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