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【特集】永遠の介護離職“ゼロ”、進む介護機器「ロボ化」「IT化」 <株探トップ特集>

富士機械製造の移乗サポートロボット「Hug T1」

―「一億総活躍社会」後押し、需給ギャップ解消へ―

 経済産業省は3月24日に発表した「将来の介護需要に即した介護サービス提供に関する研究会」の報告書の中で、介護機器・ITを活用した介護サービスの質・生産性の向上に言及した。安倍政権が掲げる「一億総活躍社会」では、子育て支援などとともに介護離職ゼロが打ち出されており、政府が5月にまとめる「ニッポン一億総活躍プラン」にもそうした施策が反映されそうだ。

●35年の需給ギャップは68万人

 いまさら言うまでもないが、日本は先進国の中でも屈指の超高齢社会だ。2035年には団塊の世代が85歳を越え、それとともに介護職員の人手不足問題は一層深刻化するとみられている。経産省の報告書によれば、35年には要支援・要介護2以下の介護(予防)サービス受給者数は471万人(15年比1.5倍)に、要介護3以上のサービス受給者数は343万人(同1.7倍)に拡大する見通し。同時点の介護職員の需要数295万人に対し、人材供給は227万人にとどまり、68万人が必要なケアを受けられない状況になるという。

 将来にわたって必要な介護サービスを維持していくためには、人手不足感をどのように解消していくかが大きな課題となる。高齢者の増加に反して労働人口は減っていくことから大幅な増員は期待できず、そこで注目されているのが介護機器やITの活用だ。例えば、移乗介助機器の導入で腰痛による離職者がゼロになると仮定すると年間約4800人の離職防止効果があるといわれる。また、見守りシステムを導入すると夜間業務が20%効率化でき、その分、人員配置基準を変更することで給与費総額の約8~11%相当の削減が可能。排泄支援機器の導入により夜勤時間帯のおむつ交換業務がなくなると1事業所当たりの労働時間短縮効果は1日当たり約10時間に達すると試算されている。介護機器の市場規模は今後さらに拡大していくことが予想され、関連企業にとっては商機が訪れることになる。

●移乗介助機器関連

 富士機械製造 <6134> は4月1日、介護施設内で高齢者の移乗を支援するためのサポートロボット「Hug T1」の受注を開始すると発表した。この製品の開発は日本医療研究開発機構(AMED)が実施する「ロボット介護機器開発・導入促進事業」の成果を活用。「多くの導入希望が寄せられている」(事業開発部)といい、初年度は150台、次年度は200台の出荷を目指している。また、保守サービスを含んだリースプランも用意されている。

 CYBERDYNE <7779> [東証M]は、装着型のロボットスーツ「HAL」を手掛ける。HAL介護支援用腰タイプは15年度厚生労働省補正予算の「介護ロボット等導入支援特別事業(総額52億円)」の対象機器に選ばれた。

 このほかでは、介護用マッスルスーツの菊池製作所 <3444> [JQ]、メカトロニクス技術を活用した移乗アシスト装置の安川電機 <6506> 、関連会社が電動簡易移乗機を手掛けている今仙電機製作所 <7266> などがある。

●見守りシステム(在宅介護型)関連

 ソルクシーズ <4284> [東証2]は、センサーによる見守りシステム「いまイルモ」シリーズを展開している。4月6日には、トヨタ・モビリティ基金と名古屋大学などが進める共同研究「愛知県豊田市足助地区におけるモビリティ活用型モデルコミュニティの構築」で活用されることが明らかとなった。

 パラマウントベッドホールディングス <7817> は今春にも、「スマートベッドシステム」の受注を開始する予定だ。これは身体に何も装着することなくベッド上に寝ている状態のままで脈拍数や呼吸数など、さまざまな生体情報を連続測定することができる。

●見守りシステム(介護施設型)関連

 構造計画研究所 <4748> [JQ]は、バイタルセンサーを用いた施設型見守りシステムが、14年9月に経産省の公募事業「ロボット介護機器導入実証事業」に補助事業として採択された経緯がある。

 このほかでは、見守り機能型服薬管理支援のクラリオン <6796> 、スマートラバーセンサーとカメラを併用した見守りプラットフォームの住友理工 <5191> などがある。

●排泄支援機器関連

 TOTO <5332> は、圧送技術などのロボット技術を活用した「ベッドサイド水洗トイレ」を手掛けている。これは水洗トイレでありながら、今まで設置しにくかった居室ベッドサイドに後付けで設置でき、使う人の状況にあわせて動かすことも可能だ。

 ユニ・チャーム <8113> は、自動排泄処理装置「尿吸引ロボ ヒューマニー」をレンタルしている。パッドに内蔵されたセンサーが排尿を検知し、尿を瞬時に自動吸引。排泄ごとのおむつ交換が不要となり、ごみ重量は従来のおむつの約10分の1に削減できる。

●その他の支援機器関連

 入浴支援機器では、TOTOやハイレックスコーポレーション <7279> [東証2]、積水化学工業 <4204> 子会社の積水ホームテクノが主な関連メーカー。

 高齢者の歩行や立ち座りをサポートする移動支援関連としては、日本精工 <6471> やナブテスコ <6268> 、ミツバ <7280> 、サンヨーホームズ <1420> 、THK <6481> など。

 人工知能を用いて利用者と会話するコミュニケーションロボットでは、富士ソフト <9749> やNEC <6701> 、ソフトバンクグループ <9984> などが関連銘柄として挙げられる。

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