市場ニュース

戻る
 

【特集】馬渕治好氏【円高一時107円台、外為・株式市場の行方を探る】(3) <相場観特集>

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 8日の東京株式市場は、外国為替市場で円高進行がひとまず一服状態となったことが好感され、幅広い業種に買い戻しが入り日経平均株価は小幅ながら続伸した。ただ、7日の海外為替市場では、1ドル=107円台後半まで円が急騰するなど、今後も円高波乱に翻弄される地合いが続きそうだ。そこで、今後の外国為替相場の動向と、その影響が予想される株式市場の先行きについて、第一線の市場関係者に聞いた。

●「円高に歯止め、日経平均1万8000円指向に」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 新年度入りから東京株式市場は為替相場に揺さぶられるかたちで下値模索の展開となったが、ドル売り・円買いの動きは目先一巡し、つれて日経平均株価も戻り足をみせる可能性が高いとみている。

 8日は、麻生財務・金融相の円高牽制発言でドルが買い戻され、為替にリンクさせた投機売りターゲットとなっている日本株も戻りに転じる構図となった。しかし、実際の為替介入はもちろんのこと、こうした口先介入がなくても自然体でドル円相場は1ドル=110~115円のゾーンに戻る局面が早晩訪れるとみている。

 米国経済の実態は決して悪くない。前週1日に発表されたISM製造業指数や、今週5日に発表されたISM非製造業指数いずれも好調で、ファンダメンタルズ面からの切り口ではドル高誘導の材料だった。今は投機筋の仕掛け的な売りに大勢が追随している格好で理屈では動かない状況にあるわけだが、これも時間軸の進行とともに、ドル円相場は実態を反映する水準にサヤ寄せしていくと思われる。

 米国の利上げは年内2回もしくは1回としても、ここから一段の円高を後押しする材料とはならないだろう。足もとの1ドル=100円トビ台はイレギュラー水準であり、政府の介入の動きなどを前提とせずに、110台に押し戻される可能性は高い。為替の動向に委ねられた部分はあるが、日経平均は、ここから切り返し1万8000円台への戻りをうかがう展開を想定する。

 また、安倍首相がウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで「恣意的な為替への介入は慎まなければならない」と発言したことが、介入の意思なしとの見方で、投機筋につけ込まれたかたちだが、これは各国が通貨競争を避けるべきという意味であり、麻生発言が示す通り、過度な円高に対し介入のカードが切れないということではない。したがって、投機筋によるさらなるドル売り・円買いに対しては、介入により歯止めをかける動きが予想され、株式市場へのネガティブな影響も限られそうだ。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程終了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。昨年10月2日に近著「ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係」(金融財政事情研究会)発売。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均