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【特集】太田千尋氏【5つのリスクで占う株式市場】(2) <相場観特集>

太田千尋氏(SMBC日興証券 投資情報部部長)

 日経平均株価は12日の1万4952円(終値)で底打ちムードは出ているものの、その後の戻り相場に勢いが感じられず膠着状態が続いている。そこには(1)円相場、(2)原油価格、(3)米国経済(株価)、(4)中国経済(株価)、(5)外国人売り――の5つのリスクが立ちはだかっている。そこで、今回はこの5つのリスクの先行きを探りながら、当面の日本株の見通しを第一線の市場関係者に聞いた。

●「原油市況下げ止まりが好循環もたらす」

太田千尋氏(SMBC日興証券 投資情報部部長)

 東京株式市場は引き続き不透明感の強い環境を強いられてはいるが、結論から先に言えば、日経平均1万5000円台は基本的にボトムゾーンとみている。また上値については、3月末までのタームで見た場合、1万7000~1万8000円のゾーンへの切り返しが想定される。

 ドル・円相場は、当面1ドル=110~116円のレンジでの推移とみている。為替要因は企業業績面で向かい風として意識せざるを得ない。特に、ゴールデンウイーク前後の16年3月期の決算発表時に出てくる17年3月期の業績見通しについて、企業側のガイダンスがかなり弱くなることが予想され、株式市場にとってはネガティブに作用することを念頭に置いておかねばならない。

 一方、原油価格については下値抵抗力を発揮できる局面となってきた。ここにきて条件付きながらサウジアラビアとロシアの増産凍結の動きは、原油市況を押し上げる力には乏しいものの、一時の下値が見えないような恐怖感を払拭する材料としては十分機能する。中東産油国にすれば1バレル=20ドル台は耐え切れないという本音も感じられ、生産調整に向けた協調体制を背景に30ドル台での推移に落ち着くのではないか。

 この原油市況の動向は米国経済や外国人の売買動向にも少なからぬ影響を及ぼす。

 米国経済は以前のような盤石なイメージは薄れてきたが、内訳をみると製造業に弱さがみられる一方で雇用は強く、その延長線上にある個人消費は悪くない。製造業の弱さは原油安のデメリットによる部分が大きく、原油市況の下げ止まりはその面で米国経済にもプラス効果をもたらす。景気実勢との見合いである利上げペースについては当初想定より鈍化する公算が大きいが、景気のスローダウンはあっても一部で懸念されるようなリセッションの可能性は極めて低い。これを前提に米国株式市場も巡航速度ながら上昇トレンドをたどることが予測される。

 外国人売買動向は1月に1兆円を超える日本株の売り越しを記録、2月に入ってもその流れに変化はみられないが、これは原油価格の急落を背景としたオイルマネーが売り主体となっていると思われる。原油価格が仮に30ドル台で落ち着けば、この怒涛の売り攻勢も一巡するだろう。したがって、株式需給面での最大の波乱要因は収束の方向に向かうとみている。

 中国景気の減速懸念は大方織り込みが進んでいる。楽観はできないものの、中国政府当局の政策対応も間断なく出てくることが予想され、世界を揺さぶるような経済的なクラッシュが起こることは考えにくい。日本株もこの中国の経済成長鈍化という悪材料との距離感をつかみ、売り物をこなして上値を指向することは可能だろう。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(おおた・ちひろ)
1985年日興証券入社。投資情報部、金融法人営業部、日興ソロモン・スミス・バーニー証券(現シティグループ証券)出向(リサーチ部門)、エクイティマーケティング部、株式アドバイスセンター、機関投資家営業部を経て、2013年10月より現職。日本証券アナリスト協会検定会員。

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