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【特集】「医療クラウド」普及へ弾み、市場規模10倍予測も <株探トップ特集>

キヤノンの“統合医療画像管理システム”利用画面の一例

―大病院中心に進む採用、厚労省後押しも追い風―

 ユーザーが手元のコンピューターで利用しているデータやソフトウエアなどを、ネットワーク経由でさまざまなデバイスで活用できるクラウドのサービスがこの数年、多くの分野で定着している。最近ではIT化が進む医療現場でも活用する動きが広がりをみせており、電子カルテを筆頭にクラウドを利用する医療システムの普及が大きく進みそうだ。

●震災を機に医療データの保存機運高まる

 医療分野でのクラウド活用は、2010年2月に厚生労働省から「診療録等の保存を行う場所について」の一部改正が行われ、民間企業が保有するデータセンターへの医療情報の外部保存が認められたことで可能になっている。改正直後は、医療現場での関心は低かったが、翌年の2011年3月に東日本大震災が発生、東北地方を中心に被災地の多くで、病院の倒壊などにより紙カルテが失われる事態が発生したことで、紙の内容をデータ化し安全な場所へ保存する機運が高まっている。

●2024年には市場規模は1792億円に

 加えて、総務省が厚生労働省と連携して医療情報連携ネットワークの構築を目指していることも注目される。これは医療機関などの保有する患者・住民の医療・健康情報を、クラウド技術を活用して、安全かつ円滑に記録・蓄積・閲覧することを可能とするもの。

 これらを背景に、電子カルテなど医用画像管理、遠隔画像診断、域医療連携システム、在宅療養支援サービスといった多くの分野でクラウドの活用が進むとみられている。市場調査・コンサルティングのシード・プランニングによる調査によれば、医療分野のクラウドサービスは2014年の179億円から10年後の2024年には10倍の1792億円にまで拡大すると予測している。

 このような状況下、現場のニーズを汲み取ったクラウド活用の新しいシステムが開発されており、大手病院を中心に採用が進み始めている。以下、関連銘柄をピックアップした。

●NECはSaaSカルテサービスを提供

◆NEC <6701>
広島県立広島がん高精度放射線治療センター(HIPRAC)に傘下のサンネットを通じて、SaaSカルテサービス「MegaOakSR for SaaS(メガオーク エスアール フォー サース)の提供を15年10月から開始している。このカルテサービスは主に100床未満の病院向けに、電子カルテや医療事務などの機能をセキュアなクラウド環境を通して提供。診療データは、セキュリティー対策を実施しているNECのデータセンターで厳重に管理。診療データが一元的に管理されるため、系列病院内で患者の治療の進捗状況を的確に把握ができる。

◆メドピア <6095> [東証M]
昨年10月に100%クラウド型診療プラットフォームを展開するクリニカル・プラットフォーム(東京都千代田区)と資本業務提携。クリニカル・プラットフォームが手掛けるクラウド型電子カルテ「クリプラ」に蓄積される診療データとメドピアが展開する10万人以上の医師が参加する医師専用コミュニティサイト「MedPeer(メドピア)」とを連携して新たなサービス開発を推進している。

◆トプコン <7732>
眼科医療機器の総合メーカー。業界でいち早く画像ファイリングシステムを開発し、クラウドを利用した病院のネットワーク連携を進める眼科院内ソリューションを展開。

●テクマトは「NOBORI」を展開

 横河電 <6841>
横河医療ソリューションズを通じてクラウド型医用画像総合管理「ShadeQuest/Unlimited」を展開。病院で発生する膨大な画像を安心・安全に管理する画像サーバーシステムで、神戸大学医学部附属病院などへ納入、地域医療における情報共有サービスでの活用も将来的に視野に入れている。

◆キヤノン <7751>
さまざまな医療画像を患者情報と関連付けて統合的に管理・共有できるクラウドソリューション「統合医療画像管理システム」を今年3月上旬より医療施設を中心に提供を開始予定。このシステムはX線やCTなどの医療画像に加えて、デジタルカメラの静止画、動画、さまざまな文書を患者ごとに管理・閲覧できる画像俯瞰機能を搭載。また、帳票スキャン機能と画像取り込み機能により、医療帳票およびデジタルカメラやスマートフォンなどの画像を、簡単にクラウドサーバーへ送信できる。医療従事者の利用を想定し需要の拡大を図る。

◆テクマト <3762>
IT技術で画像などの医療情報を安全に保管・活用・共有できるクラウドサービス「NOBORI(のぼり)」を展開。レントゲン、CT画像をはじめとする大容量の医療情報データを、医療機関の外部にある複数の医療機関共通のデータセンターで安全に管理。必要な時にいつでも参照、共有、利用することを可能にしている。

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