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【特集】光が創る新市場「可視光通信」の可能性 <株探トップ特集>

街中のあらゆる光が情報を発信(画像提供パナソニック)

―高いセキュリティー、ウエアラブルやIoTでの応用も―

 目に見える光「可視光」を通信に利用した「可視光通信」への関心が高まっている。これはLED(発光ダイオード)を高速で点滅させたり周波数を変調させたりすることで、これを「0」「1」のデジタル情報に変換してデータをやり取りする無線通信の一種。可視光通信にはさまざまなメリットがあり、新たな成長市場として期待されている。

●電波に比べたメリット

 可視光通信の最大の特徴は、照明が当たっている場所のみで通信できること。カーテンなどで遮光すれば外に漏れないため、無線LANなど電波を使った通信手段に比べてセキュリティー性が高いといえる。また、電波干渉をしないため精密機械間の障害が起こらず、人体への影響がないことも大きなメリット。携帯電話などで使われている電波や赤外線はペースメーカーなどに影響を与える可能性があるが、可視光通信は単なる光なのでそれらに影響を与えない。既存のLED照明をそのまま送信機として利用できることからインフラコストが安価で済み、電波法の規制を受けないことから免許なしで送受信システムを構築できるといった面もある。

●活用シーンは多岐にわたる

 活用シーンとして想定されるのは、電波の使用規制がある病院や飛行機の中、電波が混信して通信しにくいケースのある工場内など。また、電波を通さない水中での高速通信でも有効な手段となる。加えて、特定の場所に特定の情報を送信できることから、小売店によるクーポンや特売商品の情報配信といったO2Oマーケティング、美術館などアミューズメント施設での詳細情報の表示、交通信号やデジタルサイネージを利用した交通情報やインバウンド対策(多言語化表示など)での利用も進むとみられる。今後ウエアラブルデバイスやIoTでの応用も期待されており、大きな市場が形成されることになりそうだ。

●パナソニックは4月から本格展開へ

 パナソニック<6752.T>は、可視光通信技術を発展させた独自の「光ID」技術を確立。デジタルサイネージやLED自照式看板などとスマートフォンを連携し、詳細情報の提供を可能にする「光ID」プラットフォームサービスの提供、および「光ID」送信機の販売を4月から順次開始する予定であり、市場の起爆剤となりそうだ。同社は施設案内やイベント、来客・送客、商品情報配信、看板広告などでの活用を視野に入れている。

●太陽誘電は東洋電機と共同開発

 太陽誘電 <6976> の可視光通信技術は、一般的なLED素子を使って高速な光通信を実現。通常、LEDは10Mbps(メガビット毎秒)以下しか通信速度がでないが、独自に通信速度を約10倍に向上させる技術を開発している。また、14年5月には東洋電機 <6655> [名証2]と共同で高速水中可視光通信装置を開発したと発表。海洋計測や海洋土木、海中での資源調査などさまざまな用途を想定している。

●半導体メーカーの強み生かすルネサス

 ルネサス <6723> は、可視光通信を実現するソリューションを積極的に開発している。エレクトロニクスに関する業界団体JEITA(電子情報技術産業協会)の標準技術仕様CP-1223(可視光ビーコンシステム)に準拠した送受信ソリューションを半導体ベースで提供できることが同社の強みのひとつだ。

●「ピカリコ」商用化のカシオ

 カシオ <6952> は、可視光通信とスマートフォンなどのカメラを組み合わせた情報通信サービス「Picalico(ピカリコ)」を商用化している。一般消費者向け情報発信サービス「Picalicoサービス」と、技術そのものをライセンスとして提供する「Picalicoライセンス」を展開しており、すでにイベントなどで多くの活用事例がある。

●鉄道分野で注力する不二電機工業

 不二電機 <6654> は、鉄道向けの表示灯などを手掛けるメーカー。15年11月に幕張メッセで開催された「第4回鉄道技術展」では、可視光通信を応用した運行管理や車両格納管理などのデモを行った。

●タムラ製作所などにも注目

 このほかでは、ネットワーク機器を手掛けるタムラ <6768> 、送受信モジュールなど各種関連機器を販売している加賀電子 <8154> 、可視光通信協会に名を連ねている古河機金 <5715> などもマークしたい。

 なお、加賀電子は15年11月にUKCHD <3156> と経営統合すると発表している。加賀電子はUKCHDの完全子会社となり、株式交換の効力発生日(16年10月1日を予定)に先立って上場廃止となる予定だ。

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