【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 日銀追加緩和策で上値追い
株式評論家 植木靖男
「日銀追加緩和策で上値追い」
●“素直でない”罫線
寒波が遠のき、久し振りに空気が和らいできた。これに同調するかのように株価も落ち着きを取り戻している。とはいえ、また買いの決定打とはならず、様子見が続いている。
今回、日経平均は短期的に20%も下げただけに、容易に素直な値動きをみせることはない。
投資家にとって、チャートの絵姿が美しいほど投資しやすいのはいうまでもない。だが、昨今の罫線をみると、素直でないのだ。あえていえば、絵姿の美しい罫線とは富士山の姿を想起してもらえばよい。ともあれ、素直な相場でないだけ、買いという行動には慎重には慎重を期することが肝要であろう。
ところで、現状、売りも買いも難しい状況にある。剣道にたとえれば、剣先でのせめぎ合い、つまり売り方、買い方ともジャブ程度である。売り方と買い方の力関係が弥次郎兵衛のように微妙なバランスにある。下手に先に手を出すと付け込まれてしまうのだ。
このバランスを崩すとみられていたのが、米国FOMC、その後の日銀の金融政策決定会合であった。その米国FOMCは大きなきっかけにならず、日銀に託された。
●バトンを託された日銀の決断
結果は、サプライズだった。マイナス金利導入という、予想されなかった日本史上初の緩和策だっただけに乱高下した。
常識的には、銀行の日銀への預金準備についている付利がどうなるかである。一部のみとの見方があるが、いずれにしても潜在成長率が低下している現状では、流動性は実体経済よりもリスク資産に流れることになる。
結果的には安倍内閣がめざす成長戦略にはあまり貢献せず、むしろ金融機関の運用利回りが低下するという副作用も意識され、株価は利益確定売りを誘って急落する場面もあった。
だが、株価だけを考えれば、明らかに流動性は株価を押し上げることになるのだ。本稿執筆中の29日後場の段階では乱高下のあと250~300円高で収束しつつある。当然である。
罫線的には1月27日の終値1万7163円をこの一両日中に上抜くことが必要であった。大引けで上抜いていれば、当分は買い方有利の展開となろう。
日銀のマイナス金利導入で物色が歴然となってきた。不動産株、証券株が高く、銀行株が売られる展開を見せている。ともあれ、1万6000円処を下回るリスクが遠のき、2~3月高に向かうことが期待できるようになったことは幸いである。
2016年1月29日 記
株探ニュース