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【市況】富田隆弥の【CHART CLUB】 「2月、3月、まだ安心できず」

株式評論家 富田隆弥

◆出版科学研究所によると、昨年の書籍出版販売額は前年比で▲5.3%と過去最大の減少になったという。ピース又吉の「火花」のように、芥川賞、直木賞などでマスコミ受けする作品を積極的に受賞させ、話題作りに躍起の出版業界だが、どう頑張ってもいまはスマホ時代。その趨勢に逆らうことはできないのだ。

◆昨年のファンド・オブ・ザイヤーの最優秀ファンド賞に「スパークス・新・国際優良日本株ファンド(愛称:厳選投資)」が2年連続で輝いた。昨年の年間トータルリターンは「18.5%」であるから、表彰されるだけの実績を上げたと言える。「投信販売」を盛り上げるためのスター作り、話題作りに尽力する関連業界の努力もあり、富裕層は投信を積極的に購入、投信の純資産残高も着実に増加している。だが、運用成績も右肩上がりが続くとは限らない。

◆気になるのは投信の案内(パンフレットなど)に必ず載っている「純資産高の推移」。こんなに人気があります、そう宣伝したいのだろうが、投信の本筋は「いくら儲けているか」であって大事なのは基準価額の推移である。そして、最近目立つその基準価額の推移(グラフ)は3年間のものが多い。つまり、アベノミクスになってからの推移を載せて「こんなに稼いでいますよ」とアピールしている訳だが、誰がやったって儲けられた3年間である。

◆知人からファンドを尋ねられたとき、自分は必ず「過去10年間の推移を確認しろ」と言っている。つまり、急落した07年、08年がどうだったか、そこで好パフォーマンスを出しているなら「マシなファンド」と言えるが、そうでなければ「やめておけ」だ。多くのファンドが「日経平均株価次第、TOPIX次第」であって、似たような運用ならブル型の「ETF」で構わず、高い手数料を払うことなく個人でも十分できるのだ。そもそもファンド(投信)というのは「他人任せ」の代表選手。それに、右肩上がりの相場がどこまでも続くとは限らず、個人のETFであれば、もしもの時に「売って逃げておく」ことも可能だ。

◆ちなみに、上記の最優秀賞ファンドだが、基準値で昨年の最高値は7月2万8073円、昨年末は2万5661円。そしてこの1月21日の価額は2万1821円。年間パフォーマンスをわずか3週間でほぼ帳消しに、なんてことに近い状況であるから、ほかの多くのファンドはどうなっていることやら。

◆日経平均もNYダウも、昨年来の推移はあの「サブプライム、リーマン」(07~08年)のときと似ており、2月、3月、まだ警戒を緩めるわけには行かない。「自分の財産は自分で守る」を改めて肝に銘じておくべきではないか。

(1月28日 記、毎週土曜日10時に更新)

情報提供:富田隆弥のチャートクラブ

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