貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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8306 三菱UFJ

東証P
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【緊急特集】日銀YCC運用柔軟化は相場の転換点? 留意すべき3つのポイント


―長期金利の変動許容幅の上限巡り思惑錯綜、日本株は乱高下もショック安は回避―

 日銀は28日まで開いた金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の柔軟化に踏み切った。事前の観測報道があったとはいえ、今回最もサプライズをもって受け止められたのは、連続指し値オペの利回り水準が0.5%から1.0%に引き上げられたことだ。今回の政策決定は相場の転換点となるのか。留意すべきポイントを押さえていく。

●「利回り1%」の連続指し値オペで市場は動揺

 日銀はYCCにおける長期金利の変動許容幅の上限を「0.5%程度をめど」としながらも、利回りが「1%」になるように毎営業日、指定した債券銘柄を無制限に購入する連続指し値オペを打ち出した。

 長期金利の上昇(債券価格の下落)時に、指定した利回り水準(価格)で無制限に購入する買い手が存在すれば、債券価格はそれ以上に下落はしない。つまり原則的には、長期金利はその利回り水準以上に上昇することができなくなる。「結果発表後、しばらくして連続指し値オペに関するヘッドラインが伝わると、日銀が長期金利1%までの上昇を容認したとの思惑が広がった」(国内証券ストラテジスト)という。

 長期金利の更なる上昇と日米金利差縮小に伴う円高が警戒され、株式市場では先物売りが一時的に膨らんだ。だが、前述の通り、日銀は長期金利の変動許容幅の上限を「0.5%程度」と、従来の水準を踏襲している。

 こうしたYCC運用の「柔軟化」の狙いについて、日銀は金融緩和の持続性を高めるためだと説明するが、市場の解釈には時間を要した。結果発表後、ドル円相場は上下3円の急変劇を演じた。日経平均株価もいったんは買いが優勢となった後、一時800円を超す下げとなり、大引けにかけて急速に下げ渋る展開となった。

●「1%アタック」けん制策が奏功か

 債券市場でも動揺が広がった。午後に長期金利は急上昇し、新発10年債利回り(長期金利)は一時0.575%と、2014年9月以来の高水準をつけた。ところが「1%アタック」をするには距離があり、ほどなくして金利上昇は一服。金融市場の動揺を収めるのに少なからず作用した。

 この長期金利の動きが、第1の留意点だ。日銀はこの日の午後に早速、利回り1%での連続指し値オペを通告したが、あわせて長期金利が0.5%を上回る水準では「機動的なオペ」で対応する方針も示した。日銀が債券の投機的な売りをけん制したと考えることもできる。

 そもそも潜在成長率の低い国の長期金利が1%を上回る水準へ一本調子で上昇することは考えにくい。実際に、日銀の植田和男総裁は28日の取引終了後の記者会見で、長期金利について「1%まで上がることは想定していない」と発言。連続指し値オペの利回り水準を1%としたことについては「念のための上限」との認識を示した。

 なお、28日午後に実施された連続指し値オペは、0.5%以下の低い利回りで(高い価格で)購入した債券を、わざわざ1%の高い利回り(安い価格)で売る投資家は存在せず、応札額は当然ながらゼロとなった。

●24年度コアCPI見通し、中央値は2%下回る

 2つ目の留意点は、この日公開された「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で示された物価見通しだ。生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)の見通しの中央値は23年度こそ4月時点のプラス1.8%からプラス2.5%に引き上げられたものの、24年度に関してはプラス2.0%からプラス1.9%に下振れ、日銀の物価目標の2%を下回る水準となった。インフレがいずれ鈍化するとの見立てが改めて強調された格好で、これまでの日銀のロジックを踏まえると、現行の緩和姿勢が崩れるシナリオを描くのは難しい。

 そして3つ目は、なによりも日銀がマイナス金利政策を継続している点だ。短期金利をマイナス0.1%に誘導する現行の政策の修正がない限り、緩和的な環境が続いていることには変わりがなく、株式相場の下値を支えることにつながる。植田総裁自身、28日の記者会見で、短期政策金利の引き上げには距離があるとの認識を示している。

 短期金利が低水準のままで、長期金利や超長期金利に少しでも上昇圧力が掛かれば、イールドカーブが急勾配化(スティープ化)することとなる。金融機関にとっては、短期市場において低金利で調達した資金を、高い利回りで運用することが可能になるため、銀行株には利ザヤ改善の期待が高まりやすい。実際に28日は三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]が5%を超す上げとなるなど、銀行株に強い上昇圧力が掛かった。

 もっとも、長期金利の上昇余地が限られるのであれば、こうした買いの持続性については吟味が必要となるだろう。

●緩和環境継続で日本株の下値は限定的か

 これまでいくつか留意点を挙げてきたが、コアCPIが日銀の見立て通り2%を下回る水準に今後、伸び率が鈍化したとしても、マイナスにならない限りはインフレであるのも確かである。

 水戸証券の酒井一・チーフファンドマネージャーは「日銀はマイナス金利からの脱却に向かっているわけではなく、インフレの定着自体は株式市場にはポジティブに働くだろう」と指摘。「日本株は6月にかけての上昇で割高感が意識されたが、この先に仮に水準を切り下げたとしても、エントリーポイントが到来したと受け止めた投資家の買いが見込まれ、大きく崩れる展開は考えにくい」と話す。

 日銀の金融政策の決定内容は、決してわかりやすいものとは言えないが、ショック安が起きてもその日のうちに「粘り腰」をみせた事実自体は、安心材料といえる。海外投機筋主導の長期金利1%アタックへの警戒感が消えたわけではないものの、ひとまず中銀ウィークは通過した。金融市場が一段と落ち着きを取り戻す形となれば、企業決算や経済・物価動向を冷静に分析する局面を迎えることとなりそうだ。

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