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3Dマトリック Research Memo(5):止血材の販売は期初計画を下回るも着実に増加、次世代止血材の開発も進む


■スリー・ディー・マトリックス<7777>の業績動向

2.止血材の販売動向
2017年4月期の止血材「PuraStatR」の売上高は、期初計画で496百万円(うち、欧州294百万円、アジア・オセアニア172百万円、中南米30百万円)を見込んでいたが、実績は106百万円(うち、欧州94百万円、アジア・オセアニア6百万円、中南米6百万円)と約2割の水準にとどまり、すべての地域で計画を下回る結果となった。ただ、主力市場である欧州向けでは四半期ごとに売上高が増加傾向となっており、成長ペースは緩やかながらも着実に実績は積み上がってきている。2016年4月期の止血材の売上高は96百万円だが、このうち44百万円はオーストラリアやインドネシアでの販売契約締結に伴う初期納入分であったことを考慮すると、当期の売上高107百万円は実質2倍以上に増加したことになる。地域別の動向については以下のとおり。

(1) 欧州地域
a) 販売動向
欧州の売上高は、2016年4月期実績の28.6百万円から2017年4月期は94.3百万円となった。英国、ドイツ、フランス等を中心に欧州のほぼ全域で販売代理店網を構築し、代理店数は前期末比21社増の30社、顧客ターゲットとなる医療施設数は同80件増の200件に拡大した。ただ、期初の販売計画(294百万円)からは大幅に未達となった。計画を下回った要因は各国で異なっている。英国では、病院での製品登録(製品購買を開始するための口座開設などの手続き)に想定以上の時間(6ヶ月程度と見ていたが1年程度かかった)を要したこと、フランスでは有力代理店の数が少ないなかで選定に時間が掛かったこと、ドイツでは有力候補先の1社が事業を売却し、プロジェクトがストップしたこと、イタリアやスペインでは全体の8割を占める公立病院において医師からの購買確認はできているものの、製品納入に必要となる公共入札の開始が大幅に遅れ、入札そのものが行われなかったことなどが挙げられる。また、全体的には代理店が内視鏡領域中心であり、心臓血管外科等のその他外科領域を扱う有力代理店の開拓が進まなかったことも要因として挙げられる。

なお、欧州で進めている独占販売ライセンス契約の交渉については、候補企業3社との協議を継続している状況に変わりなく、販売実績及び販売に直結する臨床上のデータの蓄積が求められている状況にある。

b) 後出血予防材のCEマーキング認証取得に関して
欧州では「PuraStatR」の適用拡大として、後出血予防材としてのCEマーキング申請を行い、2017年4月期中の取得を見込んでいたが、2018年4月期にずれ込むこととなった。同社は130症例のデータ(単独試験)を持って申請を行ったものの、データのばらつきが大きかったため、比較試験での追加試験を要請されたことが要因だ。このため、現在、英国のポーツマス病院で90症例による比較試験を実施している。6月時点で半分以上の症例を終えており、2017年秋頃には試験が完了する見込みで、2018年4月期の下期に再申請を予定している。早ければ2018年春頃にもCEマーキングを取得できる可能性がある。

(2) アジア・オセアニア地域
アジア・オセアニア地域の売上高は2016年4月期の52.2百万円から2017年4月期は6.1百万円となった。前期の売上高にはオーストラリアのMaquet向けで17百万円、インドネシアのTeguhsindo向けで27百万円の初期納品分の売上高が含まれていたため減少した格好となっているが、オーストラリアに関しては病院への販売が着実に増加している。

期初計画(172百万円)比で大きく下回ったが、これは期初計画のうち約60%を販売パートナーとの最低購買契約に基づく販売分で計画していたのに対して、実際には初期納品分の在庫消化に時間を要したことから、2017年4月期の発注がほとんどなかったことが主因となっている。同社では、販売契約を解消して最低購買契約に基づく不足分を請求することも可能であったが、契約解消により新たな販売代理店を探すよりも、既存の販売パートナーとの関係を維持していくメリットのほうが大きいと判断し、最低購買量の請求を行わないこととした。また、期初計画では韓国でのCEマーキング取得を前提に、韓国向けで65百万円の製品売上を見込んでいたが、CEマーキングの取得が遅れており、売上げを計上できなかったことも下振れ要因となった。韓国でも当局より追加質問が出ており、その対応に時間を要していることが遅延の原因となっているが、2018年4月期中には取得できるものと同社では見ている。

オーストラリアについては販売パートナーのMaquetが積極的に営業活動を行っており、販売先も広がりを見せている。当初は耳鼻咽喉科や産婦人科向けから販売を開始し、2017年に入ってから腹腔鏡分野への本格的な営業活動を開始しており、2017年春以降は内視鏡分野への展開も進めていく予定となっている。特に、耳鼻咽喉科領域においては止血効果もさることながら、術後の癒着防止効果も高く評価され、競合品からの置き換えも着々と進んでいるもようだ。電気焼灼術による止血方法もあるが、組織へのダメージがあるため、性能の良い止血材があれば使いたいというニーズは高い。耳鼻咽喉科領域の止血材の市場規模は、オーストラリアだけで20~40億円と推定され、今後の販売ポテンシャルは大きいと言える。

(3) 中南米地域
中南米地域(ブラジル、コロンビア、メキシコ等)の売上高は6.6百万円となった。CEマーキング適用国である各国において代理店を通して販売を進めたが、期初計画の30百万円を下回る格好となった。主要販売先であるブラジルにおいて輸入手続きに時間を要し、製品供給に遅れが生じたことが主因となっている。また、同地域でも販売代理店と最低購買契約を締結し、最低購買量を売上計画に織り込んでいたが、アジア・オセアニア地域と同様の理由で不足分の請求を行わなかったことが計画未達の要因となっている。

(4) 日本
日本では前述したとおり、2017年4月に内視鏡手術領域の止血材として治験計画届を提出し、7月以降に複数の医療施設で比較試験を開始する。半年から1年程度で治験が終了する見込みで、早ければ2018年4月期中に製造販売承認の申請を行う可能性もある。内視鏡手術領域は既に欧州でも実績が積み上がっていることから、承認取得の可能性は高いと弊社ではみている。製造販売承認申請後の審査期間は平均で約15ヶ月とされており、早ければ2019年夏、遅くとも2021年4月期の早い段階で承認される可能性がある。承認取得時には販売ライセンス契約先である扶桑薬品工業からマイルストーン収益800百万円を得られることになっているが、今回は契約の適用範囲である3領域(他は心臓血管外科、臓器出血領域)のうちの1領域に限定されるため、受領額については今後の交渉で決めていくものと思われる。また、ほかの2領域については今後、PMDAとの協議を同時並行で進めていく格好となる。

(5) 北米地域
米国についてはFDAとのプロトコル設定に関する協議が長引いたこと、次世代止血材として「PM03」の開発が進んできたことから、今後の治験戦略を改めて検討している状況にある。米国では政権が代わり、医療行政についても方針転換が進む可能性があり、その動向を確認しながら戦略を立てていくことになる。米国では既存品との比較において圧倒的な優位性が求められるため、次世代止血材で治験を進めていくか、または癒着防止材等の他の領域で開発を進めていく案が有力となっている。

カナダについては2017年4月期中にCEマーキングの取得を行い、販売代理店契約の締結と製品販売を開始する予定だったが当局の審査が長引いているようで、いずれも2018年4月期にズレ込むこととなった。特に、何か問題が生じているわけではないようだ。

(6) 中国
中国では、2017年4月に、CHINESE PEPTIDE COMPANY, LTD(以下、CPC)と中国市場における開発・製造・販売に関するライセンス契約を締結した。契約一時金として508百万円を計上し、止血材の上市後に製品販売額の一定割合のロイヤルティ収入を複数年(5年以上)にわたり受領する契約となっている。中国での上市に向け今後はCPCが開発を進めていくことになるが、同社も技術的なサポートを行う予定となっている。

中国の医療機器市場の年平均成長率は約22.5%、外科手術件数は約11%で拡大を続けている。現時点での止血材市場は年間で約200億円超と推定されているが、今後、医療技術の向上や手術件数の拡大に伴って止血材市場も高成長が続くことが見込まれる。今回、同社が開発・製造権も含めたライセンス契約を締結したのは、中国で臨床試験等の開発を進め、早期に上市を図るには現地企業に委ねるのが資金効率からみて得策と判断したためだ。

CPCは同社のペプチド原材料の仕入先の1社で、ペプチドの研究開発分野では世界的なリーダー企業の1社として知られている。今回、契約先としてCPCを選んだ決め手となったのは、長年の取引により信頼関係が構築されていることに加えて、CPCの親会社がGuizhou Xinbang Pharmaceutical Co.Ltd.(ヘルスケア分野のコングロマリット)で、傘下に複数の医療施設や医薬品メーカーを抱えており、製品上市後にはスムーズに販売を拡大していく体制がグループ内に整っていることも決め手の1つとなっている。

3. その他パイプラインの開発状況
歯槽骨再建材の開発状況については、2017年4月までに全12症例に対して投与を完了し、全症例で歯槽骨が再建され、インプラントを埋植している。6ヶ月間の観察期間においてインプラントが安定であることが確認されているほか、対象部位における新生骨の割合も、他家骨を充填した場合と比較して約2倍大きくなっているなど、臨床試験は順調に進んでいるものと考えられる。

今後のスケジュールとしては2017年夏頃まで経過観察を行った後にデータを分析し、製造販売承認申請を行うか追加試験を行うかを判断していくことになる。製造販売承認申請を行うことになれば、同じタイミングで販売パートナーの契約交渉も行う予定となっており、ライセンス契約が決まれば550百万円程度の契約一時金が見込めることになる。また、同時に欧州でのCEマーキングの取得申請も行う予定だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《TN》

 提供:フィスコ

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