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3Dマトリック Research Memo(5):止血材の販売は着実に増加、次世代止血材の開発を欧州で進めていく方針


■スリー・ディー・マトリックス<7777>の業績動向

2. 止血材の販売動向
2017年4月期の止血材「PuraStatR」の販売高は、欧州、アジア・オセアニア、中南米と各地域で期初計画を下回ったものの、四半期ベースで見れば着実に増加している。医療施設の導入ペースは遅いながらも各エリアにおいて導入が広がりつつあることがうかがえる。前期の止血材の販売高は80百万円だが、このうち44百万円はオーストラリアやインドネシアでの販売契約締結に伴う初期納入分が含まれていたことからすると、当期の販売高125百万円は実質約3倍に増加したことになる。地域別の販売動向については以下のとおり。

(1) 欧州地域
a) 販売動向
欧州の販売高は、前期実績の28.6百万円から当期は100百万円(期初計画294百万円)となったもようだ。期初計画では2017年1月以降、医療施設での導入加速が進むと見ていたが、有力販売代理店である英国のDIAGMED Healthcare(以下、DIAGMED)や2016年11月に販売権許諾契約を締結したドイツのNicolai Medizintechnik (以下、Nicolai)の販売体制整備が遅れたこと、また、当初は2016年秋頃を見込んでいたPENTAXとの販売権許諾契約が2017年4月までずれ込んだこと等が影響した。欧州ではイタリアやスペインなど地域によって医療施設が購入する医療品の入札が半年に1回など日数がかかり、入札タイミングが合わなかったことも導入が遅れた要因と見られる。止血用途としてはその大半が消化器内視鏡治療領域で使われており、次いで心臓血管外科領域で使われている。使用実績に対する不具合の報告は1件もないが、用途が内視鏡治療領域から他用途へ広がりを見せていないことも販売が伸び悩む一因になっていると見られる。

第3四半期末(2017年1月末)における販売代理店数は23社まで拡大し、ほぼ欧州全域をカバーする体制を構築している。直近では北欧やウクライナでも導入する医療施設が出始めているようで、同社の止血材の認知度も着実に上昇していることがうかがえる。ターゲット医療施設数も第3四半期末で160件と1年前の約3倍に拡大しており、今後は各販売代理店でこれらターゲット医療施設への導入を進め、販売高を伸ばしていくものと予想される。特に、DIAGMEDでは2017年4月以降、販売体制を整えたようで本格稼働による販売増が期待される。また、Nicolaiについても、契約締結後の販売体制の整備が遅れたが、2018年4月期以降の本格稼働が見込まれている。また、イタリアやスペインの医療施設の導入も2017年夏頃には開始されるものと予想される。このため、2018年4月期の止血材販売については一段の拡大が見込まれ、少なくとも300?500百万円の販売は期待できると弊社では見ている。

b) 後出血予防材のCEマーキング取得に関して
なお、欧州では「PuraStatR」について、後出血予防材としてのCEマーキング承認を目指している。消化器内視鏡治療後の再出血により治療部位が悪化し、再手術・再入院となるケースが5?20%程度あるが、止血効果のほか創傷治癒効果もある「PuraStatR」を用いることでこうしたリスクを軽減させることが可能となる。患者負担が軽減されるだけでなく、医療財政負担の軽減にもつながるため、潜在需要は大きいと見られる。当初は2017年4月期中の承認取得を目指していたが、承認取得時期は2018年4月期にずれ込む見通しだ。

c) 次世代止血材について
欧州では次世代止血材「PM03」の開発も進めている。「PM03」は「PuraStatR」と比較して止血効果が高いこと(短時間で完全止血)に加えて、低コストで製造できることが特徴として挙げられる。「PuraStatR」はRADA16と呼ばれるペプチド配列だが、「PM03」はこれより少ない配列数となっているため、製造コストが若干低くなる。また、「PuraStatR」は冷蔵保存が必要であったが「PM03」は常温保存が可能なことも長所となる。移動や保管等の際は常温保存のほうがコスト面で有利なため、医療施設も導入しやすい。一方、マイナス面としては粘性が高いため、カテーテル等の細い管を通して使用部位に注入する用途では不向きとなる。このため、今後は消化器内視鏡治療では粘性の低い「PuraStatR」で、臓器出血や消化器外科手術では止血効果の高い「PM03」で、市場を開拓していくことが予想される。欧州では2017年中にヒトでの臨床試験を開始し、CEマーキングの承認取得を目指していく方針となっている。

この「PM03」に関しては、欧州で2017年3月に「組織塞栓材」として特許が成立している。臓器や血管等の損傷部位の止血だけでなく、体液や空気の漏れ防止用を含む幅広い用途での特許となり、将来のパイプライン候補として検討を進めている胆汁瘻※1や肺瘻※2の防止材、手術後の臓器癒着防止材としての応用が可能な製品となる。「PM03」の開発状況次第では、今後の欧州での独占販売ライセンス契約や日米での止血材の開発戦略にも影響を与えるものと考えられだけに、今後の動向が注目される。

※1 胆嚢結石に伴う胆嚢炎で、胆嚢摘出術を受けた際に、胆汁が胆管の外(腹腔内)に漏れる症状。胆汁が漏れ出すことによって、胆汁性腹膜炎を引き起こすことがある。
※2 肺がん手術後の合併症で、肺切除部から空気が漏れる症状。現在は、シート状の接着剤で漏れを防ぐ処置を行っている。


(2) アジア・オセアニア地域
アジア・オセアニア地域の「PuraStatR」の販売高は前期の52.2百万円から当期は15百万円(期初計画172百万円)となった模様だ。前期の販売高にはオーストラリアのMaquetやインドネシアのTeguhsindo向けの販売ライセンス契約に伴う初期ロット販売が44.6百万円含まれているため、これを除けば増収となっている。とはいえ、オーストラリアを除いた進捗状況は低い。欧州のように内視鏡手術がまだ普及していないことが影響していると見られ、インドネシアでの需要はまだ立ち上がっていない。また、タイやフィリピン、マレーシア等の販売権を持つDaewoongが販売活動を本格的に行っていないことも影響している。Daewoongはまずは韓国内でのCEマーキング承認取得を優先的に取り組んでいるためだ。

今のところ、積極的な販売活動を行っているのはオーストラリアのMaquetで、耳鼻咽喉科や産婦人科向けに加えて2017年からは腹腔鏡手術向けや心臓血管外科向けの販売も開始したと見られる。当初の販売計画からは未達となったものの、当第4四半期において10百万円の発注があり、今後も安定的な発注が継続するものと予想される。

特に、オーストラリアでは耳鼻咽喉科領域での評価が高い。KOLの評価によると、止血効果もさることながら、術後の癒着防止効果も大きいとしている。通常であれば、術後に止血のための詰め物や洗浄が必要だが、「PurastatR」を使えばこれらが不要となる。また、競合品の場合は残留物が残るため患者に不快感が残るほか、癒着してしまうケースも半数程度の確立で発生するが、「PurastatR」を使用した患者では術後の癒着や残留物は残らない。こうしたことから、シドニーのKOLは競合品から同社製に切り替えており、同様の動きが他の病院でも広がりつつあると言う。市場規模はオーストラリアだけで20~40億円と推定されており、今後の販売ポテンシャルは大きいと言える。

なお、2018年4月期の販売見通しについてはオーストラリアだけで40百万円程度が見込まれるが、その他ASEAN地域については不透明感が強く、新たな業績計画では保守的に見積もる可能性が高いと見られる。韓国についてはCEマーキング承認が取得できれば、マイルストーン収益50百万円と初期ロット販売で65百万円の販売が見込まれている。

(3) 中南米地域
中南米地域の「PuraStatR」の販売は当期からスタートしており、10百万円(期初計画30百万円)となったもようだ。主にブラジルでの製品供給が輸入手続きの問題で遅れたほか、初期販売ロットが当初の計画よりも少額にとどまったことが影響した。また、メキシコについても輸入手続きの遅れ等を主因に当初の計画を下回る結果となった。中南米では主に、心臓血管外科用として販売されている。

2018年4月期については、ブラジル、メキシコを中心に販売が拡大する見込みで、30百万円程度は可能と弊社ではみている。

(4) 日本
国内では前述したとおり、2017年4月に消化器内視鏡治療領域の止血材としての治験計画届を提出しており、5月から6月にかけて複数の医療施設で治験を開始し、1年程度で完了する見込みとなっている。早ければ9ヶ月で完了する可能性もある。内視鏡治療領域は既に欧州でも実績が積み上がっていることから、承認取得の可能性は高いと弊社ではみている。承認取得時に販売ライセンス契約先である扶桑薬品工業からマイルストーン収益800百万円を得られることになっていたが、今回は3領域のうちの1領域に限定されるため、受領額については今後の交渉で決めていくものと思われる。ほかの2領域については今後、PMDAと協議を同時並行で進めていく格好となるが、「PM03」の開発が欧州で順調に進めば、国内でも「PM03」で開発を進めていく可能性もある。

(5) 北米地域
米国についてはFDAとのプロトコル設定に関する協議が長引いたこと、次世代止血材として「PM03」の開発が進んできたことから、今後の治験戦略を改めて検討している段階となっている。米国では政権が代わり、医療行政についても方針転換が進められようとしており、その動向を確認しながら戦略を立てていくことになる。開発リソースも欧州での次世代止血材の開発や国内での臨床試験開始に優先的に振り向けるため、米国での開発はやや後回しになる可能性が高い。

米国での開発戦略は現段階で、2パターンに絞られてきているようだ。第1に、次世代止血材「PM03」を使って開発を進めていくケース、第2に「PuraStatR」を使って新たな用途で開発を進めていくケースとなる。止血材としては既に先発企業があるなかで、性能面で明確な優位性がない限り、当局からの承認を得るのは困難なため、止血効果の高い「PM03」で開発を進めていく可能性がある。また、新たな用途での開発としては、後出血予防材や癒着防止材等が候補になる。

癒着防止材とは外科等の手術において術後に生じる組織や器官の癒着によって生じる合併症を防ぐための医療材料を指す。癒着を防止することで、手術時間の短縮や患者のQOL改善にも寄与する。癒着防止材の2016年の市場規模は世界で約8億ドルとなっており、今後、年率8%成長し2021年には約12億ドルに拡大することが予測されている。主要企業は米J&Jやフランスのサノフィなど大手企業が並ぶ。国内では科研製薬<4521>のセプラフィルムが約110億円の売上実績を持つほか、テルモ<4543>が2016年6月に国内初のスプレー式癒着防止材の製造販売承認を取得している。止血材同様に先発企業がいるなかで、いかに優位点を出すことができるかが開発成功のカギを握るが、同社はオーストラリアの耳鼻咽喉科領域においてその優位点を見出しており、今後の開発戦略に生かしていくものと予想される。いずれにしても、米国での医療行政の方向性が固まってから、具体的に動き出すものと考えられる。

カナダについては2017年4月期中にCEマーキングの承認取得を行い、販売代理店契約の締結と販売開始を予定していたが、CEマーキングの取得は2017年夏頃にずれ込む見通しとなった。CEマーキングの承認申請から取得までの期間は各国でばらつきがあるようで、特に何か問題が生じているわけではないようだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《TN》

 提供:フィスコ

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