貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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4704 トレンドマイクロ

東証P
7,967円
前日比
-79
-0.98%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
30.9 9.31 3.00
時価総額 11,224億円
比較される銘柄
SCSK, 
NSSOL, 
デジアーツ
決算発表予定日

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萩原電気HD Research Memo(7):財務基盤は安定、手元の現金及び預金は143億円と豊富(3)


■業績動向

3. 2024年3月期第2四半期のトピックス
(1) 位置情報に基づく次世代駐車場の車載決済デモシステムを開発
萩原電気ホールディングス<7467>の子会社であるアメリカ法人Hagiwara America, Inc.を通じて出資した米国のスタートアップSheeva.AI社(CEO Evgeny Klochikhin, PhD)と共に、スマートで快適なカーライフを実現するためのIn-Vehicle Payment(車載決済)市場の開拓に取組んできたが、この度、技術検証と利便性の体験を目的としたデモシステムの開発を国内大手Tier1の協力を得て実施した。これは位置情報に基づく駐車場の車載決済システムとしては国内初の試みとなる。

a) In-Vehicle Payment(車載決済)市場について
車載決済とは自動車そのものを決済端末として活用する仕組みで、ドライバーの支払いに関わる負担を軽減し利便性を大きく向上させるユーザーエクスペリエンスを実現する。調査会社Precedence Research社によると、世界の車載決済市場は2032年までに年平均成長率(CAGR)16.2%で成長し、200億ドル規模まで拡大すると予測されている。

b) Sheeva.AI社の車載決済技術について
Sheeva.AI社の技術は、自動車の正確な位置情報を得る技術とその情報を用いたサービスAPIで構成されている。一般的にGPSを用いた測位技術は、大気遅延やマルチパスなどの影響を受け、10mから20m程度の誤差が生じると言われている。これらを解決するために、RTK(Real Time Kinematic)による相対測位で誤差を補正したり、外部の他の基準信号を用いて補正する技術もあるが、これらの方法は機器自体が高額であったり、基準信号を発する機器をインフラとして広範囲に整備しなければならないという課題があり、自動車の応用では一般に使われていない。カーナビゲーションシステム等の車載機器では、GPSに加え、自動車の運行情報(速度、舵角など)を用いた位置補正(Dead Reckoning)や地図情報を用いた位置補正(Map Matching)が使われている。Sheeva.AI社もこれらの技術を用いているが、Dead Reckoningに関して特許を取得した独自のアルゴリズムを用いて、飛躍的に精度を高め車載決済に応用できるレベル(誤差2m以内)を実現している。さらに、高精度な位置情報に基づくクラウド上のサービスAPIも開発し、駐車料金だけでなく、ドライブスルーでの買い物や、ガソリン給油・EV充電といった燃料の補給、有料道路の通行料やシェアカー利用料などの支払いにも対応している。これらの技術を用いることで、ドライバーはカーライフでの支払いを、クレジットカードやQRコードを提示することもなく、スマートでストレスフリーな位置情報を得る技術体験をすることが可能となる。(これらの内容は、同社発表資料に基づく)

c) 次世代駐車場 車載決済デモシステムについて
今回開発したデモシステムは、駐車場設備(入出庫ゲートや車止め装置など)がないスペースに対して、利用条件に関する属性(駐車可否や課金方法)をクラウド上で設定し、駐車場として利用できることが特徴。車載機器側は正確な位置情報を得るアルゴリズムとクラウドと通信できるソフトウェアを搭載して任意の駐車スペースに駐車する。その際に駐車スペースの属性に沿って正しく課金が実施されることを実証しており、この技術を活用することで、駐車場事業者は高額な駐車設備を導入せずにスペースを駐車場化することが可能となる。さらに、駐車場の利用条件を、曜日や時間、近隣のイベントの有無に応じてクラウド上で手軽にタイムリーに変更することができるため、稼働率や収益の向上を図ることができる。利用者(ドライバー)は、入庫ゲートでのチケットの受け取りや、精算機に立ち寄っての現金支払い、クレジットカードやQRコードの提示などの煩わしい作業を行うことなく、車中での簡単な操作によって精算を済ませることができる。デモシステムでは、駐車場から離れた場所でスマートフォンを使い課金状況を確認することができることも示している。これらの開発はSheeva.AI社の技術をベースとして、車載側ソフトウェアとスマホアプリの開発を国内大手Tier1と共同で行った。

(2) トレンドマイクロとの戦略的パートナーシップを強化
同社の子会社である萩原テクノソリューションズ(株)とトレンドマイクロ<4704>は、戦略的なパートナーシップを強化し、IT/OTの融合が進む製造業界におけるサイバーセキュリティリスクの低減に向けて両社で連携することを発表した。

a) 戦略的パートナーシップ強化の背景
萩原テクノソリューションズは、OT(オペレーション・テクノロジー)領域で40年以上の実績から得た知見を持ち、OT領域の課題解決に向けた最適なITソリューション提案に強みを持っている。特に顧客が保有する多くのデータを軸に、データレイク基盤とデータ利活用を提供している中、データ保護という観点でセキュリティソリューションを強化してきた。また、トレンドマイクロはサイバーセキュリティ領域において、エンドポイント・ネットワーク・メール・クラウドやOT環境を統合し保護する製品・ソリューションに強みを持っている。両社は、それぞれの強みを組み合わせることで、IT/OTの融合が進む製造業界におけるサイバーセキュリティリスクの低減に向けた最適なソリューションを全国展開する。萩原テクノソリューションズでは、2023年10月1日付けで専任チームを新設し、本戦略を介して今後1年間で10億円の売上目標を掲げた。

b) IT/OT環境における最適なサイバーセキュリティソリューション・サービスの概要
両社はこれまでも製造業向けに工場内脅威可視化ソリューション「In-Line Security Monitor」の共同開発やその販売などを通じて、IT/OTの境界線を越えたサイバーセキュリティへの取り組みを推進してきた。

工場システムはシステム自体の専門性も高く、インターネットに接続されていない閉域環境で長い間運用されてきたが、一方で生産プロセスの最適化や生産性向上への取り組みが進み、IoT活用が広がることで、OT環境におけるサイバーセキュリティへの対応が必要不可欠になっている。法人組織内に既存するIT環境と新たにインターネットに繋がり始めているOT環境を効果的にサイバー攻撃から保護するにはIT/OTの境界線を越え統合したアプローチが重要になってきている。トレンドマイクロの調べでは、ITとOT間での統合すべきセキュリティ機能として、63%が「サイバーイベントの検出」と回答していることが明らかになっている。脅威を迅速に検知して被害の拡大を防ぎ、安定した工場の稼働を確保するには、迅速かつ適切なサイバーイベントの検出が必要になっている。また、IT/OTの領域にまたがるセキュリティ運用拡大における課題としては、半数以上(約54%)が「ITスタッフのためのOTサイバーセキュリティのトレーニング」を挙げている。一方で「ITサイバーセキュリティに関するOTスタッフのトレーニング」を挙げる声も38.1%にのぼり、両領域にわたる知見やスキルがそれぞれにおいて不足していることが分かる。

今後は、これらの課題を解決しIT/OT環境を保護するために最適なサイバーセキュリティソリューション及びサービスの提供を両社で推進していく。具体的には診断・構築・運用を包括するソリューション・サービスの一貫した提供により、顧客独自の環境・課題に沿った最適なソリューションの企画から構築、導入・運用までを支援する。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

《AS》

 提供:フィスコ

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