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3967 エルテス

東証G
809円
前日比
+7
+0.87%
PTS
812.1円
20:02 05/09
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
32.5 1.91
時価総額 49.1億円
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エルテス Research Memo(9):成長加速に向けて「変革と基盤構築」と、「メタシティ構想」に取り組む


■エルテス<3967>の成長戦略

1. 中期経営計画の方向性
2022年2月期より、中期経営計画「The Road To 2024」を推進している。コロナ禍をきっかけにDXの動きが加速するなかで、新たな事業機会を取り込むために、「AIセキュリティ事業」及び「DX推進事業」を本格的に立ち上げ、事業構造の変革を進めていくことが最大のテーマとなっている。これまで主戦場としてきたSNS炎上対策というニッチな成長領域に加え、新設セグメントでは成長率が高い領域、もしくは市場規模が大きい領域へ展開する方向性である。3年×3期による9年の中長期を視野に入れており、第1フェーズの3年間は「変革と基盤構築」に取り組み、第2フェーズ(2025年2月期)以降での「加速度的な成長サイクルの実現」を目指している。また、成長の先に健全なデジタル社会の実現を見据え、メタバース×スマートシティによる独自の「メタシティ構想」を推し進める考えだ。

2. 対象市場の規模と成長性のイメージ
これまでの「SNS炎上対策」というニッチな成長領域に加え、高い成長性が期待でき、かつ市場規模も大きい「DX推進」「デジタルガバメント」「情報銀行」「デジタルGRC※」等の領域へ展開していく。また、市場規模が巨大であり、DXによる変革余地も大きい「警備業界」への本格参入も目論んでいる。第1フェーズで構築した収益基盤を第2フェーズ以降で一気に成長軌道に乗せ、新たな事業領域において確実にシェア拡大を図るシナリオを描いている。

※リスクマネジメント(ガバナンス、リスク、コンプライアンス)におけるDX。


3. 「メタシティ構想」の推進
同社が提唱する、メタバース×スマートシティによる「メタシティ構想」とは、健全なデジタル社会を実現する、リアルとデジタルが融合した都市計画のことである。具体的には、メタバース(仮想世界)上に構築したデジタルツイン※によって、デジタルとリアルを融合した次世代のAIセキュリティ(デジタルとリアルのリスクをシームレスに対策)を実現し、地域の安全を確保したうえで、住民が豊かに暮らすための「コミュニケーション」「エネルギー」「エコロジー」といった領域へと拡充する。さらには、地域全体をネットワーク接続し、AI予測を活用するスマートシティへと昇華させることを目指している。デジタルリスクやAIセキュリティ、スマートシティといった分野でこれまで培ってきたノウハウに加え、メタウンの連結化を通じたプロパティ・マネジメント事業への進出も、その足掛かりとして捉えられる。

※リアル空間にある情報をIoTなどで収集し、そのデータを元にデジタル空間上で再現する技術のこと。


4. 各事業の取り組み
(1) デジタルリスク事業
新プロダクトの開発とアライアンスの強化等により、圧倒的なNo.1企業を目指す方向性である。達成に向けた戦略として、1) 「内部脅威検知サービス」を中心として、近接領域であるシステムインテグレーション領域も拡大、2) リスク管理にとどまらないサービスの多様化、3) 他領域の企業とのアライアンス、4) 既存プロダクトのアップデートなどに取り組んでいる。特に、「内部脅威検知サービス」を今後の成長ドライバーとして位置付けている。顧客企業数及び「内部脅威検知サービス」の利用数(ID数)を目標KPIに設定している。

(2) AIセキュリティ事業
リアルな警備事業とのシナジー創出により、AIセキュリティによる「警備業界」の変革を目指す方向性である。達成に向けた戦略として、1) 「警備業界」を変革するためのデジタルプロダクトの創出、2) AIセキュリティによる次世代警備を業界スタンダードとするため、フィジカルな警備保障サービスの成長にも取り組む。警備業界は3.5兆円規模の巨大産業であるが、そのうち約80%は中小零細企業が占めており、DXによる変革余地が大きい。

(3) DX推進事業
独自視点で行政・企業のDX推進を担う事業を立ち上げ、この分野のリーディングカンパニーを目指す方向性である。達成に向けた戦略として、1) 行政との連携によるDXプロダクト推進、2) 自治体向けDXサービスでの経験を生かした企業向けプロダクトの推進などに取り組む。特に、1) については、「デジタル田園都市国家構想」に歩調を合わせた地方のDX推進や、自治体DXを担う人材の教育・育成、派遣事業などが軸となっている。

5. これまでの進捗
過去2年間(2023年2月期まで)の各KPIの進捗を見ると、意欲的な当初目標に対してはやや遅れているものもあるが、総じて着実に伸ばすことができている(デジタルリスク事業におけるID数については、2023年11月末において25万IDを超えており、目標20万IDを上回っている)。また、最終年度の業績目標については、売上高を当初70億円から60億円、EBITDAを当初10億円から6億円に引き下げたものの、達成すれば売上高は2021年2月期比で3倍に、EBITDAは1,026百万円の増加となり、こちらも順調な伸長で着地したと評価できることになる※。

※ただし、最終年度(2024年2月期)の業績予想については、2023年7月に連結化したプレイネクストラボによる影響を織り込んでいない。


6. 弊社の注目点
DXの動きが加速するなかで、これまで積み上げてきた技術やノウハウを生かせる「デジタルガバメント」や「警備業界」への展開(事業変革)により、市場規模が大きく、高い成長率が見込める領域でユニークなポジションを確立し、成長加速を目指す戦略は理にかなっていると、弊社では評価している。言い換えれば、このチャンスを生かせるかどうかが、同社の方向性や将来性を占ううえで極めて重要な転機になるとの見方ができる。その意味では、戦略的M&Aや業務提携等により、成長加速に向けて本格的に動き出してきたのは、外部環境及び内部体制の両面で条件が整ってきた証左と言えるだろう。次の第2フェーズでは、「加速度的な成長サイクルの実現」に向けてギアをあげるシナリオとなっているが、ビジョン達成のためにはまだまだ投資が必要であると弊社では判断しており、資本政策を含めた投資と回収の循環をいかに回して事業基盤の強化を図っていくのか、さらには投資後の価値創出(PMIやシナジー創出を含む)をいかに実現していくのか、これからのマネジメントの手腕に期待したい。また、しばらくは先行投資型の収益構造が続くことが予想されるため、投資と利益のバランスをいかにとっていくのかというところも投資家にとって大きな関心事であり、これまで以上にコミュニケーション(IR)が重要なテーマになると考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

《SI》

 提供:フィスコ

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