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3675 クロスマーケ

東証P
499円
前日比
-4
-0.80%
PTS
499円
13:52 04/26
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
9.6 1.48 2.61 409
時価総額 99.7億円
比較される銘柄
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決算発表予定日

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クロスマーケ Research Memo(6):財務諸表は軒並み好転


■業績動向

3. 2018年12月期末の財政状態
クロス・マーケティンググループ<3675>の2018年12月期末の財政状態は、流動資産が7,273百万円(前期末比815百万円増)となり、主な項目は現金及び預金2,605百万円(同559百万円増)、受取手形及び売掛金3,311百万円(同81百万円減)だった。固定資産は3,156百万円(同51百万円増)となり、主な項目はのれん1,481百万円(同35百万円減)で、定期償却・為替換算で239百万円減少するとともにサポタント(株)の株式取得により204百万円増加した。この結果、総資産は10,429百万円(同866百万円増)となった。負債については、流動負債が4,298百万円(同594百万円増)で、主な項目が買掛金1,573百万円(同193百万円増)だった。長短借入金は2880百万円(同47百万円増)となり、負債は6,529百万円(同564百万円増)となった。この結果、純資産は3,900百万円(同302百万円増)となり、主な項目として利益剰余金が2,898百万円(413百万円増)となった。

2018年12月期末の現金及び現金同等物の残高は2,604百万円(前期末比558百万円増)となった。営業活動によるキャッシュ・フローは1,035百万円(同104百万円増)となり、主な減少要因が持分変動利益164百万円の計上、法人税等の支払額388百万円、増加要因が税金等調整前当期純利益1,002百万円の計上、のれん償却額182百万円の計上であった。投資活動によるキャッシュ・フローは350百万円(同1,002百万円減少)となり、主な減少要因は投資有価証券の取得による支出216百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出132百万円である。財務活動によるキャッシュ・フローは-98百万円(同400百万円減)となり、主な減少要因は長期借入金の返済による支出535百万円、配当金の支払額92百万円で、増加要因は長期借入れによる収入500百万円であった。財務諸指標は、安定性指標に変化なかったが特に問題のある水準でなく、一方収益性や資産収益性については顕著な改善となった。


新たな技術を取り込んで強みを施策として打ち出すとき
4. 2019年12月期へ向けた各事業の取り組み
(1) 強みを打ち出す好機到来
2018年12月期において、東証1部への市場変更とKadenceの構造改革という大仕事2つは成し遂げ、第4四半期には収益的に底を脱したように見える。その際に改めて周囲を見回すと、ITなど各種技術がスピードを上げて進化し、マスメディア広告からデジタルマーケティングへとプロモーション手法が急速に進化している。しかしながら同社には担当者が一丸となって顧客に接し課題解決に当たるサポート体制、リサーチャーの経験やグループ内のITソリューションの機能を利用したトータルなマーケティングソリューションの提案といった強みがある。懸案を乗り越えつつある2019年12月期は、こうした強みを戦略的に意識して打ち出すことができる。同社の2019年12月期の戦略が注目される。

(2) 国内リサーチの取り組み
国内リサーチ事業の強化ポイントはデジタルマーケティングにあり、SNSを利用したリサーチサービスの構築・提供を開始する計画である。Instagramでは国内377万人の調査モニターと国内外3600人超のインフルエンサーネットワークを活用し、通常のアンケート調査と組み合わせて消費者の本質に迫るサービスを提供する。ツイッターなど50のメディアではSNSの投稿データを収集・分析し、口コミシェア率の測定やキャンペーンの効果測定などのサービスを提供する。また、アンケートデータと既存データと統合し、BI(Business Intelligence)ツール最大シェアの「Tableau」を利用して、データドリブンな意思決定体制を構築するためのサポートも行う。新サービス「Cross Trace」により属性データとアンケート、Webアクセスログにつなぎ込むことで、例えば買わない人のヒアリングも可能になるなど調査対象の実態がより多面的に理解できるための、最適なデジタルマーケティングをサポートする。

このように、リサーチ事業に様々な新たな機能やデータをつなぎ込むことができるリサーチ会社は、国内でも数社しかないと思われる。さらにこれにより、広告代理店や、エンドユーザー(一般企業)との直接的な取引も拡大する方針である。その際、単なるリサーチ企業というよりコンサル的ソリューションも、コアのサービスとして顧客から期待されることになるだろう。同社はこうした要素のビジネスへの取り込みを既に進めており、2018年の取引社数が2016年比1.3倍近く増えたもようである。また、急拡大するメディカルの分野においては、メディカルも英語も分かるより専門性の高い優秀な人材を外部から採用し、海外への営業や海外グループ企業との連携を強化する方針である。

(3) 海外リサーチの取り組み
海外については、未進出エリアへの着実な拠点展開とインフラ基盤の強化を進める予定である。未進出エリアは、Kadenceの連結~構造改革で一気に進んだグローバル展開に加え、最大の市場である米国(ニューヨーク)に拠点を設置して日系のみならず欧米系の顧客への対応を強化する。また、フィリピンで子会社を設立しアジアでの面展開を促進する。さらに、インフラ基盤を強化することで原価低減とキャパシティの確保を見込む。具体的には、BPO(Business Process Outsourcing)拠点を英語圏のフィリピンに設置、グループ内のリサーチ業務(オンライン、データ集計・解析など)を集約する。同じ英語圏のインドにはR&Dセンターを開設、オンラインパネル(アジア)の構築や新テクノロジーの開発を推進する計画だ。

(4) ITソリューションなどの取り組み
ITソリューションでは、上場ネット証券会社の保有する全2,700万アプリ口座のうち同社開発のアプリによる口座が40%程度を占めるなど、証券会社を中心に金融業界で多数の開発・運用実績を残している。こうした実績を背景に、カード会社やネット銀行等へと営業を拡大しているところである。また、アプリの提供だけでなく顧客企業にIT人材も提供し、継続性のある運用系の仕事も取り込んでいく考えだ。このため、WebやECに特化した人材紹介・派遣を行っているサポタントを子会社化した。ITエンジニアの人材不足への対応や生産性向上を目的に、教育・育成スクールを立ち上げる計画もある。就業者へのフォローアップや受入れ先企業向けセミナーの実施も、併せて行う予定である。また、グループ会社のクロス・ベンチャーズから、ユーザーが店頭に近づくとプッシュ通知など効果的なアプローチをする、OtoO(Online to Offline)サービス「AIBeacon(エーアイビーコン)」を開発する(株)アドインテに出資した。同社既存顧客へのサービスとして実店舗などに実装する計画である。このように有力な案件が多く、ITソリューション事業については高い伸びを見込んでいる。

プロモーション事業では、TREASURE DATAやAdobeなどDMP(Data Management Platform)大手とデータ連携を進めている。子会社のディーアンドエムを中心とするプロモーションネットワークを構築し、大規模な属性データと企業のデータを連携することで、複雑化する広告主ニーズや市場環境の変化に対応する。リサーチ事業のノウハウやリソースを活用しながら、運用型広告ビジネスの拡大やサイト解析・Web接触関連のデータ分析サービスを展開することによって継続的な売上拡大を目指す。


2019年12月期は攻めの手を積極化
5. 2019年12月期の業績見通し
同社は、高い成長力が見込めるデジタルマーケティングやITといった領域において、新サービス・新ビジネスの開発やグループ連携の強化を推進する方針である。このため、ITソリューション事業、Webプロモーション事業を含め、デジタルマーケティングやビッグデータに対し積極的に投資を行う予定である。一方、主力である国内外のリサーチ事業においては収益力強化に向け、コンサルティングビジネスなどリサーチの上流域、メディカルのような成長領域への投資を積極的に実施する計画である。業界で2~3%という安定成長が期待される国内リサーチでは、RPA(Robotic Process Automation:業務の自動化)やAI(Artificial Intelligence:人工知能)も含めたシステム投資による業務の自動化や生産性の向上を推進、様々な顧客の課題を踏まえた人材育成プログラムを構築する一方、高い成長が期待される海外リサーチ事業では、BPO拠点設立による業務集約化やR&Dセンター開設による新技術の開発・投資を機動的に行う方針である。これらにより、マーケティングソリューション企業として、高付加価値で高生産性の事業構造を構築していく考えである。

以上により同社は、2019年12月期業績見通しについて、売上高20,000百万円(前期比14.3%増)、営業利益1,250百万円(同30.9%増)、経常利益1,109百万円(同32.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益570百万円(同12.5%増)を見込んでいる。継続的な業容拡大により売上高は初の200億円台を目指す一方、人員採用や各施策へのコスト負担はあるものの、高付加価値と高生産性を追求することで収益力の回復を見込んでいる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《RF》

 提供:フィスコ

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