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【特集】サンバイオ株暴落から学ぶ、投資で痛手を被らない技

株探プレミアム・リポート
筆者:真弓重孝 = みんかぶ編集部・編集統括プロデューサー
ビジネス誌、マネー誌などをへて、2018年4月にみんかぶ(現ミンカブ・ジ・インフォノイド)に入社。現在に至る。

 再生細胞薬を開発するバイオ企業、サンバイオ <4592>の株価が4営業日連続のストップ安をつけてから1カ月あまり。その後、同社株は一時700円近く反発したが、それでも急落直前からは8000円超も低い水準。今回の下げの凄まじさを物語る。
 この暴落から投資家は何を学ぶべきか。そーせいグループ <4565> 株を筆頭にバイオ株の取引で30億円以上の資産を築いた個人投資家の土志田剛志さん(仮名)に話を聞いた。
 土志田さんがサンバイオ株に本格的に投資したのは、大きく2回。最初の取引は同社がIPO(新規株式公開)した2015年。この年の12月に1000円ほどで買い、1年後の16年12月頃に1300円で売却した。
 2回目は昨年秋に同社株が動意づく前後で18年9月に4000円、11月に6500円ほどで購入した。ただし、保有期間は短く、同社株が8000~9000円台だった18年12月にほぼ売却し、今年1月10日に1万1000円ほどで全株を売却した。
 そーせいグループ株では5年近く保有をして、億トレの地位を築いたように、土志田さんの投資姿勢は本来、長期保有を前提としている。しかし、昨年のサンバイオ株では短期で手仕舞った。
 その理由はなぜか。そこにはバイオ株に限らず株式投資を成功に導く多くの金言が含まれていた。土志田さんの話を紹介しよう
土志田 剛志土志田 剛志さん(仮名、30代・男性)さんのプロフィール
日頃は弁護士として活躍する兼業投資家。2007年から繰り返して投資を手掛けたバイオ株のそーせいグループ <4565> の株価大幅上昇に乗り、約10年で資産は30億円に到達。投資分野を絞り込んで自身の知識と分析内容を継続的に深め、適正株価を見極めながら投資する方法が実を結ぶ。現在のポートフォリオは全体の約3分の2を値上がり益狙い、残りを配当や魅力的な銘柄に配分し配当収入は年間2000万~3000万円になる。『株探』プレミアム専用コラム「すご腕投資家さんに聞く 『銘柄選び』の技」に参考記事
イラスト:福島由恵

――サンバイオ株に投資した理由を教えてください。
土志田 再生細胞薬が将来、有望な分野と感じたからです。私がバイオ株投資に力を入れてきたのは、それまでほとんど動いていないのに突然、株価が大きく変動する銘柄があることに気づいたことが1つ。もう1つは、私自身の体が弱いこともあってニッポン発の医薬品がどんどん開発されてほしいという思いもあったからです。
 1つ目の理由は私が当初大型株の取引でうまくいかず、どうしたらいいか考えていた時に、材料で動くバイオ株の存在に気づき、本格的に勉強し始めました。情報収集では、「日経バイオテクノロジー」といった専門誌なども購読しました。
 サンバイオが手掛ける再生細胞薬は、免疫機能を持ったタンパク質を使った「抗体医薬」に次ぐバイオ医薬の新分野で、成功すればそのインパクトは大きいと感じました。この薬が活躍する分野は、アルツハイマーやうつなど脳に関係する疾患に向くとみられ、サンバイオが開発する「SB623」は外傷性脳損傷や慢性期脳梗塞をダーゲットにしているので期待したのです。
 彼らの経営体制も評価できました。同社は米国に研究開発の本拠を置き、アドバイザリーメンバーも海外の一流の人材を招聘しています。最先端の開発には一流の人材を呼び込まなくてはならず、その点でメンバーの陣容は期待できました。
 同社社長の森敬太さんがIR(投資家向け広報)に積極的で、また森さんと会長である川西徹さんを合わせた持ち株比率が40%ほどあることも好感できました。経営者の持ち株比率は高い方が企業価値を上げるインセンティブが働くからです。
 バイオ株を長らく投資して感じているのが、中途半端な持ち株比率の経営者ほど株価が上がると少しずつ売り抜けて、自分の儲けに走る例が多いように見えます。
夢や期待だけでは物色しない
――そのように有望とみたサンバイオ株を、最初に購入してから1年で売却されました。
土志田 理由の1つは、私が想定した以上に開発に時間がかかりそうと思ったからです。脳の手術を伴う治験をするので、統計的に有意性のある数を満たす治験協力者を集めるには、時間が掛かり開発費が膨らむ懸念を持ったのです。
 私がバイオ医薬株に投資する上で基本に据えているのは、黒字化、厳密に言うと営業キャッシュフロー(CF)が黒字になる見通しが立たない企業には投資しないということです。
■株価の連続ストップ安のきっかけになったニュースリリース
株価の連続ストップ安のきっかけになったニュースリリース
――夢や期待だけでは物色しないと。
土志田 それらのみで投資がうまくいけば、これほど楽なことはありませんね(笑)。私が黒字化の見通しにこだわるのは、バイオ投資では増資リスクを抑えることが欠かせないと思うからです。
 言うまでもなくバイオ医薬企業にとっての生命線は研究開発で、巨額の資金を要します。すでに販売商品のある企業ならば、自力で生み出すキャッシュで研究開発費を賄えますが、赤字続きでキャッシュを生み出せない企業は外部からの資金調達が必須です。上場バイオ企業にとって、増資は有力な資金調達手段なのです。
 株式投資はリスクマネーを供給する側面がありますから、企業からの資金要請に応じるのは株主の役割です。とはいえリターンを期待しての投資ですから、無秩序に応じるわけにはいきません。
 開発が長引いて赤字が続けば、増資を重ねる懸念が生じます。株式数の増加は1株利益の希薄化による株価押し下げ要因となります。さらに浮動株が増えれば、株価を押し上げるにはこれまで以上のエネルギーが必要になります。一度くらいの増資ならさほど心配はいりませんが、何度も増資されそうならば見過ごすことはできません。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

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