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2932 STIFHD

東証S
4,175円
前日比
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単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
15.5 3.32 2.16
時価総額 247億円
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STIフードHD Research Memo(9):原材料高が落ち着くなかで値上げが浸透、大幅増益を達成


■業績動向

1. 2023年12月期第2四半期の業績動向
STIフードホールディングス<2932>の2023年12月期第2四半期の業績は、売上高で前年同期比15.3%増の14,835百万円、営業利益で同53.1%増の1,035百万円、経常利益で同52.5%増の1,074百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益で同46.6%増の687百万円と大幅増収増益となった。通期業績予想に対する進捗率も、例年下期の比重が大きくなるが、売上高で49.5%とほぼ半分、営業利益で57.5%などと非常に好調な推移となり、第2四半期の予想は公表していないものの、会社の想定を売上高で8億円、営業利益では2億円強上回ったと見られる。

日本経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類へ移行されたことにより、サービス消費を中心に個人消費が上向き、インバウンド需要も再開するなど回復基調となった。また、雇用情勢の改善や賃上げの広がりへの期待が高まっている。一方、世界的な金融引き締めやウクライナ情勢の長期化により円安や海外経済の減速が進行、輸入コストや資源・エネルギーコストの上昇による物価高騰などもあり、依然として先行き不透明な状況といえる。食品業界においては、原材料価格の高止まりや資材・エネルギーなどのコスト上昇が続いており、値上げや商品規格の見直しが実施されている。また、コロナ禍の影響縮小による人流回復を受け、外食やサービスなど外出需要が回復する反面、自宅内消費を引き締める傾向が続いた。このような環境のなか、同社は前述した重点方針・重点施策をベースに、中長期的な企業価値向上と持続的な成長の実現に注力するとともに、食品メーカーとして安全と安心の確保や安定した製造・供給の継続など社会的使命の遂行に取り組んだ。

同社は原材料高に対し、持続的な成長に向けてリニューアルを伴う価格改定を随時実施してきたが、良品製造の徹底や、キャンペーンやメディアへの露出拡大の影響などにより、リピーターを維持するとともに新規顧客も獲得できたため、販売数量は好調に推移した。一般的に価格を10%以上値上げすると販売数量に大きな痛手が生じるが、同社のように1品ずつ新技術導入してより美味しく仕上げた良品を製造できれば、20%値上げしても販売数量は大きく落ちず、仮に落ちても1ヶ月~2ヶ月で元に戻るようだ。第2四半期も「さばの塩焼き」など焼き方を変えた焼き魚系のほか、「たことブロッコリーバジルサラダ」などカップデリが好調に推移、単価、数量両面で押し上げられた売上高は2ケタを超える伸びとなった。外出需要を反映して、おにぎりの回復も顕著だったようだ。利益面でも、リニューアルを伴う価格改定が奏功した。特に第2四半期以降、高値とはいえ原材料価格が安定するなかで価格改定が浸透、売上総利益率は前年同期比0.9ポイントの上昇と採算改善が進んだ。また、輸送費が大きく伸びたものの輸送費以外は固定的なコストのため、また固定費が膨らむ局面でもないため、販管費率が同0.8ポイント低下にとどまった。このため、営業利益は売上高を大きく上回る伸びを達成した。


技術力を背景に価格改定を実施、成長軌道に回帰
2. コロナ禍、原材料高からの脱却
2020年12月期以降の非常に厳しい経営環境を技術力と価格改定で乗り切り、2023年12月期には前述したような好業績を達成することができた。経緯を詳細に述べると、2020年12月期は特にコロナ禍初期の非常に厳しい業況となったが、下期には利益が大きく持ち直した。このまま業績改善が続くかと思われたが、コロナ禍の世界的蔓延を背景とした生産・物流の混乱により原材料の高騰が進み、2022年2月に発生したウクライナ情勢の悪化により原材料高騰に加速がつくこととなった。当初同社は急速に悪化する経営環境に対してコスト削減など対処療法に終止した(減益となったものの利益はしっかり確保できた)が、2022年12月期から価格改定を本格化することにした。

価格改定は2022年1月にスタートし、268円だった「さばの塩焼」を11%値上げしたほか、「銀鮭の塩焼」で7%、「ほっけの塩焼」で3.5%の値上げとなった。この際、主力の「さばの塩焼」の販売数量が落ちたが、これは高価格との印象のある「ほっけの塩焼」と価格が同じ(298円)になったことが要因と考えられるが、消費者がリニューアルに伴うバリューアップを受け入れてくれたことで、「鯖の塩焼」の販売数量は1ヶ月~2ヶ月で戻っている。魚は漁獲高で原価が変動するものだが、このように魚全体が値上がりすることは今までなかったことである。それがウクライナ情勢の悪化などに伴い、その後も価格改定は「銀鮭の塩焼」、「ほっけの塩焼」、「銀だらの西京焼」、「さばの塩焼」などと続くことになった。もちろん鮭などおにぎり具材の価格改定も進めた。特に2022年12月期は原材料の高騰をキャッチアップするのに終始したが、それでかえって経営の足腰が鍛えられたようで、よりバリューアップされたリニューアルによって消費者を維持できたと思われる。そうしたなかで依然高値とはいえ原材料価格が落ち着きを見せてきたため、価格改定の効果がより強く現れる格好となり、2023年12月期第2四半期の業績が大きく伸びたのである。

価格改定後も同社を支持してくれた消費者によって成長軌道に回帰しつつあるが、冬物が本格化する2023年12月期下期に向け、こうした勢いに乗って新たなカテゴリーの新商品もセブン-イレブン向けに投入する計画である。なかでも味噌煮と煮物は販売が期待される商品である。また、商品投入は先になりそうだが、液体窒素をよって水産素材を瞬間冷凍する技術を使って、セブン-イレブン向け冷凍食品の開発も検討している模様である。このようにコロナ禍と原材料高を克服したプロセスにおいて同社が改めて感じたことは、技術力と調達力の重要性である。技術力については消費者の支持を維持するバリューを引き出すことができたが、調達力については、コロナ禍での不自由から、世界各地の現場を見て商品を仕入れることができなかったり、原材料高への対応が遅れたりした。このため調達力においても、早速北米やチリ、ノルウェーなど現場に足を運んで積極的に磨きをかけているようだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《SI》

 提供:フィスコ

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