為替週間見通し:ドルはもみ合いか、為替介入警戒で円売り抑制も
【今週の概況】
■ドルは上昇一服、日本の為替介入に対する警戒強まる
今週の米ドル・円は上昇一服。トランプ政権への移行で2025年の米国経済は再加速が期待されていること、インフレ緩和ペースの減速などを背景に米国の利下げ終了観測が浮上し、リスク選好的な米ドル買い・円売りが活発となった。米ドル・円は152円台から11月15日の東京市場で156円台後半まで一段高となったが、急速な円安に歯止めをかけるための日本政府による為替介入が警戒されたことから、リスク選好的な米ドル買い・円売りは週末前に縮小した。
15日のニューヨーク外為市場でドル・円は155円78銭まで買われた後、一時153円86銭まで下落した。この日発表された10月の米小売売上高は市場予想を上回ったものの、12月利下げの可能性は残されていることや株安を意識して利益確定を狙った米ドル売り・円買いが観測された。米長期金利は伸び悩んだことも嫌気され、調整的な米ドル売り・円買いも見られた。米ドル・円は154円30銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:152円64銭-156円75銭。
【来週の見通し】
■ドルはもみ合いか、為替介入警戒で円売り抑制も
来週のドル・円はもみ合いか。米インフレ再加速の可能性が浮上していること、トランプ次期政権への政策期待で、リスク選好的なドル買いがただちに縮小する状況ではないが、日本政府による為替介入が引き続き警戒され、米ドル買い・円売りはある程度抑制されそうだ。
11月13日に発表された米国の10月消費者物価指数(CPI)と14日の10月生産者物価指数(PPI)はいずれも前回を上回り、インフレ再加速の可能性が示された。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は「経済は、利下げを急ぐ必要性についていかなるシグナルも発していない」との見解を伝えている。12月に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25ポイントの追加利下げが決まる可能性があるが、来年1月開催の次回会合では政策金利は据え置きとなる可能性が高い。追加緩和観測は一段と後退し、リスク選好的な米ドル買い・円売りがただちに縮小する可能性は低いとみられる。一方、11月22日発表の日本の10月消費者物価指数(CPI)コア指数が市場予想と一致、または下回った場合、日本銀行が12月に追加利上げを決定する可能性は低下する。
ただ、米ドル・円が1ドル=160円に再接近した場合、日本政府は一段の円安を阻止するための為替介入(ドル売り・円買い)に踏み切るとの見方は残されており、日本の通貨当局や政府要人の円安牽制的な発言に対して市場は敏感に反応し、ドル買い・円売りは抑制される可能性がある。
【米・11月フィラデルフィア連銀製造業景気指数)】(21日発表予定)
21日発表の11月フィラデルフィア連銀製造業景気指数は+5.0と、前回の+10.3を下回る見込み。景況感の悪化により株安・ドル安要因になりやすい。
【日・10月消費者物価コア指数】(22日発表予定)
22日発表の日本の10月消費者物価指数(CPI)のコアの伸びが鈍化すれば、日本銀行による12月追加利上げ観測は後退し、主要通貨は対円で下げづらい展開となりそうだ
ドル・円の予想レンジ:152円50銭-156円00銭
《FA》
提供:フィスコ