【IR】AbalanceグループCEO 兼 TOYO代表取締役社長・龍潤生氏に聞く
Abalance <3856>は、2000年4月にナレッジマネジメントソフトの開発・運営を行うIT企業として設立された。現在では、「太陽光パネル製造事業」「グリーンエネルギー事業」「IT事業」「光触媒事業」の4つの事業セグメントを展開している。
同社は米国の市場環境の変化に対応し、2024年7月にグループ子会社のTOYO Co., Ltd. (TOYO)が米国ナスダックに上場を果たした。TOYOを起点に海外戦略を進める同社の今後のビジョンについて、AbalanceグループCEO 兼 TOYO代表取締役社長である龍潤生氏に話を聞いた。
同社は米国の市場環境の変化に対応し、2024年7月にグループ子会社のTOYO Co., Ltd. (TOYO)が米国ナスダックに上場を果たした。TOYOを起点に海外戦略を進める同社の今後のビジョンについて、AbalanceグループCEO 兼 TOYO代表取締役社長である龍潤生氏に話を聞いた。
Abalanceとグループ子会社について
Abalanceの売上高の95.7%を占める「太陽光パネル製造事業」は、戦略的な事業展開により拡大している。
この上場は、米国市場の関税政策強化や産業支援策に対応し、知名度向上や工場建設資金の調達を目的としている。
Abalanceの売上高の95.7%を占める「太陽光パネル製造事業」は、戦略的な事業展開により拡大している。
● | 2011年:太陽光発電システム企業WWBを完全子会社化。 |
● | 2020年:ベトナムの太陽光パネル製造会社VSUNを連結子会社化し、パネル製造から発電、保守、リサイクル、電力販売までの一貫体制を確立。 |
● | 2024年:子会社TOYOが米国ナスダックに上場。 |
この上場は、米国市場の関税政策強化や産業支援策に対応し、知名度向上や工場建設資金の調達を目的としている。
企業紹介
Abalance株式会社<3856>
https://www.abalance.jp/
2000年4月の創業当初は、IT企業としてソフト開発・運営に取り組んでいたが、現在は「太陽光パネル製造事業(95.7%)」「グリーンエネルギー事業(4.0%)」「IT事業(0.3%)」「光触媒事業(―)」の4つの事業を展開する独立系企業へと成長している。
再生可能エネルギー需要の拡大を背景に、米国市場での知名度向上、米国工場の建設資金調達を目的に、2024年7月に同社グループ会社TOYOをナスダックに上場し、グローバル戦略を展開中。
Abalance株式会社<3856>
https://www.abalance.jp/
2000年4月の創業当初は、IT企業としてソフト開発・運営に取り組んでいたが、現在は「太陽光パネル製造事業(95.7%)」「グリーンエネルギー事業(4.0%)」「IT事業(0.3%)」「光触媒事業(―)」の4つの事業を展開する独立系企業へと成長している。
再生可能エネルギー需要の拡大を背景に、米国市場での知名度向上、米国工場の建設資金調達を目的に、2024年7月に同社グループ会社TOYOをナスダックに上場し、グローバル戦略を展開中。
プロフィール
AbalanceグループCEO 兼 TOYO代表取締役社長
龍 潤生(りゅう じゅんせい)
AbalanceグループCEO 兼 TOYO代表取締役社長
龍 潤生(りゅう じゅんせい)
1971年10月21日生まれ。Abalanceグループ創立者。
2006年06月:WWB代表取締役就任。
2016年09月:Abalance取締役就任。
2017年03月:バローズ代表取締役就任。
2018年04月:VSUNボードメンバー就任。
2022年11月:Toyo Solarボードメンバー就任。
2023年07月:TOYO代表取締役就任。
2006年06月:WWB代表取締役就任。
2016年09月:Abalance取締役就任。
2017年03月:バローズ代表取締役就任。
2018年04月:VSUNボードメンバー就任。
2022年11月:Toyo Solarボードメンバー就任。
2023年07月:TOYO代表取締役就任。
2024年6月期の状況
Q.
2024年6月期は「減収増益」でした。この業績について評価と分析をお願いします。
A.
決算状況について―「減収」ながらも、全利益で2ケタ「増益」を達成
2024年6月期の業績は、売上高が2089億7200万円(前の期比2.9%減)となりました。これは、太陽光パネルの需給軟化による販売価格の下落と、主要販売先である米国での関税免除措置の終了が主な要因です。
一方、利益面では、ベトナムのVSUN第4工場の通年稼働や、Cell Companyのセル内製化によるコスト改善により、営業利益は233億4900万円(同82.4%増)、経常利益は248億9400万円(同77.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は95億3000万円(同91.9%増)となり、大幅な増益を達成しました。
|売上高
|営業利益
|経常利益
|親会社株主に帰属する当期純利益
セグメント別状況について―主力事業「太陽光パネル製造事業」の現状
現在、当社は「太陽光パネル製造事業」「グリーンエネルギー事業」「IT事業」「光触媒事業」の4つの事業セグメントを展開しています。その中でも、売上高の95.7%を占める「太陽光パネル製造事業」と、4.0%を占める「グリーンエネルギー事業」がメインビジネスです。
再生可能エネルギー市場は、今後も成長が見込まれますが、各国の政策による市場環境の変化に対応する必要があります。これに備え、太陽光パネル製造事業における最適な販売戦略、および柔軟な生産体制を構築して、事業の成長を目指しています。
その一環として、2024年7月には同社グループ会社TOYOが米国ナスダックに上場しました。これは、バイデン政権による関税政策や太陽光パネル産業の支援策を背景に、さらなる事業拡大を目的として計画されたものです。特に、米国市場の変化は太陽光パネル製造事業のグローバル展開に大きな影響を与えるため、これを大きな一歩と考えています。さらに、パネルおよびセル工場の建設準備を進めており、変化に機動的に対応しながら競争力を維持し、目標業績の達成を図っています。
「グリーンエネルギー事業」では、太陽光発電所および関連設備の物品販売で39億400万円、売電やO&M収入で44億2300万円を計上し、売上高は83億4100万円(前期比4.2%増)、セグメント利益は5億3200万円(前期比50.5%減)となりました。この事業は、WWBやバローズを中心に、フロー型ビジネスとして太陽光発電設備の販売を行う一方、売電収入を基盤としたストック型ビジネスも推進しています。
|売上高構成比(2024年6月期)
|セグメント利益構成比(2024年6月期)
|売上高
|セグメント利益
財政状態について―自己資本比率は15.8%に改善、今後のKPIとしてROICと資本コストを重視
また「B/S」では、総資産が前年同期比4.5%増加して1501億7300万円、純資産は86.3%増加して424億32万円となりました。自己資本比率は、利益剰余金の増加で前期の8.8%から7.0%改善し、15.8%へと推移しました。財務健全性向上には、さらなる経営努力が必要と認識しています。ROEについては、前期比1.4%低下して52.4%でした。
今後は、企業価値向上へ向けて、資本コストを意識した経営を行い、最適な資本構成と自己資本の充実に努めてまいります。
|総資産・自己資本比率
|純資産
2025年6月期の見通し
Q.
次期の見通しについて、市場規模を踏まえた持続成長可能性についてもお聞かせください。
A.
2025年6月期の見通しは、「減収減益」を想定
当社の主力事業である「太陽光パネル製造事業」と「グリーンエネルギー事業」の市場環境を踏まえ、2025年6月期の業績見通しは「減収減益」を想定しています。売上高800億円(前期比61.7%減)、営業利益100億円(前期比57.2%減)、経常利益100億円(前期比59.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益60億円(37.0%減)と予想しています。
太陽光発電市場は中長期的な成長が期待されていますが、2024年に入り、太陽光パネルと原材料の需給バランスが軟化し、価格下落が続いています。この傾向は2025年6月期も続く見込みで、米国の東南アジア製パネルおよびセルに対する免税措置終了(2024年6月)が当社の製造事業に影響を与えると予想しています。
こうした状況を受け、当社グループは米国中心から欧州、インド、アジア市場への販売先多角化を進めています。また、米国ではインフレ抑制法により"Made in USA, For USA"の動きが進んでおり、ナスダック上場のTOYOを拠点に、米国市場や政策を注視しながら、グローバル・サプライチェーン体制の確立を目指しています。
「グリーンエネルギー事業」では、太陽光発電所を自社保有し、電力販売を行うストック型ビジネスを強化します。発電所の開発・建設やM&Aを通じて事業基盤を拡充し、さらに小売量販店と提携して、顧客に太陽光発電・蓄電設備を販売するフロー型ビジネスを展開しています。また、海外展開に加え、太陽光パネルの廃棄問題に対応するため、リユース・リサイクル事業にも取り組む方針です。
なお、株主還元については、安定配当を基本方針としています。現在は来期の配当についてご案内ができていませんが、次期予想に基づく経営判断が整い次第、速やかに適時開示させていただく所存です。
Abalanceグループの現状における「強み」と「弱み」
私たちは厳しい市場環境にも柔軟に対応し、事業を多角化しながら持続可能な成長を目指しています。その中で、当社の強みを2点説明します。
● | セルの製造機能の追加により、グローバルなサプライチェーンを形成し、ジャパンブランドを確立 |
● | VSUNの太陽光パネルは品質と持続可能な調達力で高評価 |
●セルの製造機能の追加により、グローバルなサプライチェーンを形成してジャパンブランドを確立
Abalanceグループは、日本国内で太陽光発電所の売買や設備販売、プロジェクトの企画・設計から運用・保守、リサイクルまで一貫したサービスを提供しています。全工程を自社で対応し、スムーズな連携により効率的なサービスを実現しています。電力会社との契約や自治体への対応、金融機関への申請なども支援し、売電収入による安定したキャッシュフローを確保しています。2020年12月にVSUNを連結子会社化し、ジャパンブランドのパネル製造を加えることでグローバルなサプライチェーンを形成しました。また、2023年10月にはToyo Solarのセル工場、2024年4月にはウエハ工場が稼働し、一貫型サービスがさらに強化されています。
●VSUNの太陽光パネルは品質と持続可能な調達力で高評価
世界の太陽光パネル製造会社ランキングでは、中国企業が上位を独占していますが、VSUNの年間製造能力は4GWで20位前後※に位置します。VSUNのパネルは品質や性能、調達面で大手と競合できると評価され、2024年前半に融資適格性及び財務安定性などを評価する米国Bloomberg NFT「Tier1」のグレード認定、米国PVELの「PVモジュール信頼性スコアカード」では2021年から「トップ・パフォーマー」に選ばれています。また、持続可能な調達を評価するエコバディスから2021年に銅賞を受賞しています。
※2024年3月29日更新「シェアードリサーチレポート」より参照
一方で私たちの「弱み」も認識しています。
● | 太陽光パネルは各国政府の政策変更によって、需給や価格が影響を受けやすい。 |
● | 太陽光パネルやセルの生産規模が大手と比べてまだ小さい。 |
●太陽光パネルは各国政府の政策変更によって、需給や価格が影響を受けやすい。
これに対して、AbalanceグループはVSUNがベトナムでのパネル生産と部材内製化を推進し、TOYOが米国内でのパネル・セル生産を計画し、政策リスクの低減を図っています。各国は太陽光発電の促進にインセンティブを付与する一方、輸入品に関税を課す傾向があり、特に米国は脱炭素に向けて、大量の太陽光パネルを必要としています。しかし、生産は依然として中国に集中しており、米中貿易摩擦が関税強化を招いています。中国メーカーは東南アジアに拠点を移していますが、政策変更による影響は以前大きいと言えます。こうしたリスクを低減するため、TOYOは米国内でのパネル・セル製造工場を計画しています。
●太陽光パネルやセルの生産規模が大手と比べてまだ小さい。
現在、パネルとセルの製造能力拡張に加え、2024年4月には年間4GWのウエハ工場が稼働し、グローバル・サプライチェーンが強化されています。パネルは中国のLONGiが120GW、JinkoSolarが110GWの製造能力を持つのに対し、VSUNは5GWと約5%の規模です。また、大手はセルやウエハも生産しています。Toyo Solarは2023年10月からセル、VSUNは2024年4月からウエハの製造を開始しましたが、まだ規模は小さいため、今後も生産能力の増強を計画します。
このように、私たちの現状を見据えて、「強み」の強化と「弱み」の改善を行うことで、競争優位性を最大限に高め、企業価値の拡大を目指しています。
ステークホルダーの皆様へ
私たちは、社会貢献できないビジネスには手を出しません
Q.
最後に、AbalanceグループCEOの決意表明として、ステークホルダーを意識したメッセージで締めていただければと思います。
A.
私たちは、企業理念「Best Values」のもとに、「先進的な商品・業務・サービスの提供を中心に、価値の創造を通じて社会生活の改善と向上を図り、社会の持続可能な発展に貢献し続けます」をビジョンとして掲げています。これを一言で言えば、社会貢献できないビジネスには手を出さないということです。これは私がビジネスを始める時に決めた信念であり、常に社会に貢献できることを見出し、全力で取り組むことを考えています。それがCEOとしてAbalanceグループを率いる私の矜持です。ステークホルダーの皆様にもっと私たちの「ファン」になっていただくためにも、グループ一丸となり、成長を目指して邁進してまいります。
今後とも、ご指導ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
(取材:2024年8月27日)
株探ニュース