きちりHD Research Memo(1):人気の高いモール・郊外型レストラン業態の出店拡大に注力
■要約
きちりホールディングス<3082>は、都市型ダイニング業態の「KICHIRI」やモール・郊外型レストラン業態の「いしがまやハンバーグ」を主力とする飲食事業のほかDX事業、海外事業、2023年4月より開始したふるさと納税支援業務等の地方創生事業を展開している。2024年6月期末の直営店舗数は136店舗で、うち「いしがまやハンバーグ」や韓国料理専門店の「VEGEGO(ベジゴー)」などモール・郊外型レストラン業態で61店舗、都市型ダイニング業態で54店舗、カフェ・テイクアウト他で21店舗と多彩な業態を展開していることが特徴である。
1. 2024年6月期の業績概要
2024年6月期の連結業績は、売上高で前期比25.6%増の13,747百万円、営業利益で784百万円(前期は83百万円の損失)となった。飲食事業の売上高は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)以降、出店を強化してきたモール・郊外型レストラン業態の好調持続に加え、都市型ダイニング業態も客足の回復とともにコロナ禍を上回る水準まで回復し、同24.3%増となった。既存店は15.5%増収となり、客数で同8.7%増、客単価で同6.3%増といずれも増加した。営業利益はFL比率((食材費+人件費)÷売上高)の改善や増収に伴う固定費率の低下に加えて、新たに開始した地方創生事業の寄与もあって4期ぶりの黒字転換、11期ぶりの過去最高益を更新した。なお、新規出店は6店舗ですべてモール・郊外型レストラン業態(いしがまやハンバーグ、VEGEGOで各2店舗、とんかつ、焼肉業態で各1店舗)での出店となった。
2. 2025年6月期の見通し
2025年6月期の連結業績は、売上高で前期比9.1%増の15,000百万円、営業利益で同14.7%増の900百万円と増収増益が続く見通し。既存店が堅調を持続するほか、「いしがまやハンバーグ」や「VEGEGO」、「肉の満牛萬」など人気業態の出店拡大による飲食事業の成長を見込んでいる。また、地方創生事業についても敦賀市に加えて新たに3つの自治体からふるさと納税支援業務を受注しており、さらなる成長が見込まれる。なお、2024年7月の既存店月次売上高は前年同月比4.8%増と順調な滑り出しとなっている。
3. 成長戦略と株主還元方針
今後の成長戦略として、飲食事業ではモール・郊外型レストラン業態の出店拡大に注力する。同社は三大都市圏で130以上の商業施設に出店余地があると見ており、「いしがまやハンバーグ」「VEGEGO」といった人気業態の出店を拡大することで中長期的な成長を目指す。また、飲食事業以外では、地方創生事業のほかDX事業、海外事業などを育成する考えだ。地方創生事業では、飲食事業で培った商品開発力を生かして地域特産品のプロデュース、ブランディングを行うといった強みにより受注自治体数を増やしていく。DX事業では採用コストの低減や業務効率向上に寄与する「Inteview Cloud」の拡販に注力する。海外事業では、インドネシアで「いしがまやハンバーグ」などを出店し、事業基盤を構築したうえで東南アジア各国に横展開する計画だ。株主還元方針については、内部留保を確保したうえで中期的に配当性向30%を目指す意向で、2025年6月期の1株当たり配当金は前期と同額の7.5円(配当性向18.9%)を予定している。株主優待では、保有株式数や継続保有期間に応じて、グループ店舗で利用できる金券を贈呈している(100株保有株主に1,500円分の金券を年2回贈呈)。
■Key Points
・飲食事業の拡大により2024年6月期は売上高、営業利益で過去最高を更新
・2025年6月期は経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益も過去最高を更新する見通し
・好調なモール・郊外型レストラン業態の積極展開と新規事業の育成により、一段の収益成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《HN》
提供:フィスコ