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さよなら商社株、「ファンダと配当」重視の投資家が売却を進めるワケ
目指せ億トレ、頑張り投資家さんの稼ぎ技
マイマイさん、もぐらおやじさんの場合-最終回
イラスト:福島由恵■マイマイさん(ハンドルネーム・60代・男性)のプロフィール :
今年(2024年)に会社を定年退職し、現在は専業投資家として活動している。足元の運用額は、日米の個別株を筆頭に2億2000万円ほど。主に大型の割安成長株を保有している。投資を始めたのは1994年と30年も前だが、今の手法が確立したのはここ数年のことだ。現在は妻との2人暮らしで、海外旅行に出かけるのを楽しみにしている。「株探-個人投資家大調査-2024」の回答者で、投資スタイルは「バリュー重視」、日本株投資の腕前は「上級者」となる。
イラスト:福島由恵■もぐらおやじさん(ハンドルネーム・50代・男性)のプロフィール :
兼業投資家。足元で5200万円を運用している。業績が安定して伸びそうな企業の株を長期保有する。2000年に投資を始めた当初から、銘柄選びでは時間と手間をかけないやり方を意識してきた。投資の第1の目的は、3人の子どもの教育費を捻出すること。本業はITエンジニア。「株探-個人投資家大調査-2024」の回答者で、投資スタイルは「グロース重視」、日本株投資の腕前は「上級者」となる。
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第1回「『ずぼら投資』でも、コロナ禍に7000万円を稼いだ技」を読む
ここ数年人気の高配当株といえば、三菱商事<8058>を筆頭とする大手総合商社株が浮かぶ。
米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャーハサウェイの子会社による大量保有や、原則減配しない「累進配当」の導入などで、しばしば注目を集める存在だ。
そんな魅力的に見える商社株を、淡々と売却している投資家が、今回登場するもぐらおやじさん(ハンドルネーム、以下もぐらさん)だ。
「ゆるい」「ぬるい」「あまい」スタイルでも成功しているシリーズの2人目として登場するもぐらさんは、事業が安定して伸びる企業の株を見極めるのに、2つの基準を用いている。
商社株を売却しているのは、基準を満たさないと判断してのことだ。それは一体どういうことか。
商社株の売却資金で、特殊陶に投資
もぐらさんは2000年に投資を始めて以来、自身の給料から追加してきた元本は現在5倍以上に膨らんでいる。厳密には違うが、あえて計算すると1年に+7.4%の成長を遂げたことになる。
足元の運用額は、親から相続で得た株式を含めて5200万円になり、28銘柄で構成している。これまで得たリターンのうち生活に使用した一定額を足せば、その資産は6000万円以上になる計算だ。
運用額の最も大きい銘柄が、19年に相続した伊藤忠商事<8001>、住友商事<8053>、三井物産<8031>の大手商社株だ。3つを足した時価評価額は2000万円弱と、全体の35%程度を占めている。
もぐらさんは、現在、これらの商社株を徐々に利確し、その売却資金で新たな銘柄を取得している。直近で取得を進めている銘柄の1つが、点火プラグ、排気センサー世界最大手の日本特殊陶業<5334>だ。
最近の取得組の中では、最もパフォーマンスが高い銘柄で、2023年6月末に300万円を投じ、現在100万円の含み益がのっている。取得時点を起点とする株価パフォーマンスは、先の商社株をアウトパフォームしている(下のチャート)。
■特殊陶と大手商社株の株価パフォーマンス
注:2023年6月末=0%
急速なEVシフトの修正で、期待高まる
もぐらさんが特殊陶<5334>を取得した理由の1つが、息の長いビジネスを展開している点だ。これが、本人が銘柄選びで重視する基準の1つ目になる。
具体的には、ガソリンエンジンに使われる部品「スパークプラグ」を取り扱う事業だ。ガソリンと空気の混合気に点火し、エンジンを稼働させる役割を持つ。同製品で特殊陶は世界トップシェアを握り、24年3月期は、このプラグ関連の売上収益だけで全体の55%を占めている。
ただし、エンジン関連は、脱炭素化を推進する流れに逆行する事業だ。そんな事業を主力に据える同社に期待する理由は、急速なEV(電気自動車)シフトに対し一部で懐疑的な見方が出てきたからだ。
本人はガソリン車の需要はしばらく根強い状況が続くとの判断に至る。関連銘柄で同社株に目を付けたのは、昔からよく知っている企業だったことが大きい。
とはいえ、ガソリン車の需要縮小はいずれ避けられない問題だ。その点でもぐらさんが安心材料としているのが、事業ポートフォリオの改革に対する同社の前向きな姿勢だ。
現在、同社は半導体製造装置や燃料電池の関連製品などの事業の売り上げ比率を、25年3月期から30年にかけ25%から40%に高める計画を掲げている。
「息の長いビジネス」という点では、人類の営みに欠かせない資源・食糧などを扱う大手総合商社も該当しそうだ。しかし、もぐらさんはそうとは捉えていない。
資源・食糧領域は市況に左右されやすいイメージがあり、どうしても不安を払拭できないのだという。
2つ目の基準で、選別の精度高める
ただしこの時点では、もぐらさんの事業見通しは、希望的観測の域を超えないものだ。需要の安定性や成長性について、関連市場のレポートを読み込み、分析したうえでイメージしているわけではない。
その精度を高めるために、もぐらさんがチェックする投資指標がある。それが、本人が銘柄選びで用いる2つ目の指標だ。この指標を目安に投資すれば、「6~7割の銘柄は、株価が上昇する」との実感を持っている。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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マイマイさん、もぐらおやじさんの場合-最終回
取材・文/真弓重孝、高山英聖
イラスト:福島由恵
今年(2024年)に会社を定年退職し、現在は専業投資家として活動している。足元の運用額は、日米の個別株を筆頭に2億2000万円ほど。主に大型の割安成長株を保有している。投資を始めたのは1994年と30年も前だが、今の手法が確立したのはここ数年のことだ。現在は妻との2人暮らしで、海外旅行に出かけるのを楽しみにしている。「株探-個人投資家大調査-2024」の回答者で、投資スタイルは「バリュー重視」、日本株投資の腕前は「上級者」となる。
イラスト:福島由恵
兼業投資家。足元で5200万円を運用している。業績が安定して伸びそうな企業の株を長期保有する。2000年に投資を始めた当初から、銘柄選びでは時間と手間をかけないやり方を意識してきた。投資の第1の目的は、3人の子どもの教育費を捻出すること。本業はITエンジニア。「株探-個人投資家大調査-2024」の回答者で、投資スタイルは「グロース重視」、日本株投資の腕前は「上級者」となる。
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第1回「『ずぼら投資』でも、コロナ禍に7000万円を稼いだ技」を読む
ここ数年人気の高配当株といえば、三菱商事<8058>を筆頭とする大手総合商社株が浮かぶ。
米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャーハサウェイの子会社による大量保有や、原則減配しない「累進配当」の導入などで、しばしば注目を集める存在だ。
そんな魅力的に見える商社株を、淡々と売却している投資家が、今回登場するもぐらおやじさん(ハンドルネーム、以下もぐらさん)だ。
「ゆるい」「ぬるい」「あまい」スタイルでも成功しているシリーズの2人目として登場するもぐらさんは、事業が安定して伸びる企業の株を見極めるのに、2つの基準を用いている。
商社株を売却しているのは、基準を満たさないと判断してのことだ。それは一体どういうことか。
商社株の売却資金で、特殊陶に投資
もぐらさんは2000年に投資を始めて以来、自身の給料から追加してきた元本は現在5倍以上に膨らんでいる。厳密には違うが、あえて計算すると1年に+7.4%の成長を遂げたことになる。
足元の運用額は、親から相続で得た株式を含めて5200万円になり、28銘柄で構成している。これまで得たリターンのうち生活に使用した一定額を足せば、その資産は6000万円以上になる計算だ。
運用額の最も大きい銘柄が、19年に相続した伊藤忠商事<8001>、住友商事<8053>、三井物産<8031>の大手商社株だ。3つを足した時価評価額は2000万円弱と、全体の35%程度を占めている。
もぐらさんは、現在、これらの商社株を徐々に利確し、その売却資金で新たな銘柄を取得している。直近で取得を進めている銘柄の1つが、点火プラグ、排気センサー世界最大手の日本特殊陶業<5334>だ。
最近の取得組の中では、最もパフォーマンスが高い銘柄で、2023年6月末に300万円を投じ、現在100万円の含み益がのっている。取得時点を起点とする株価パフォーマンスは、先の商社株をアウトパフォームしている(下のチャート)。
■特殊陶と大手商社株の株価パフォーマンス
注:2023年6月末=0%
急速なEVシフトの修正で、期待高まる
もぐらさんが特殊陶<5334>を取得した理由の1つが、息の長いビジネスを展開している点だ。これが、本人が銘柄選びで重視する基準の1つ目になる。
具体的には、ガソリンエンジンに使われる部品「スパークプラグ」を取り扱う事業だ。ガソリンと空気の混合気に点火し、エンジンを稼働させる役割を持つ。同製品で特殊陶は世界トップシェアを握り、24年3月期は、このプラグ関連の売上収益だけで全体の55%を占めている。
ただし、エンジン関連は、脱炭素化を推進する流れに逆行する事業だ。そんな事業を主力に据える同社に期待する理由は、急速なEV(電気自動車)シフトに対し一部で懐疑的な見方が出てきたからだ。
本人はガソリン車の需要はしばらく根強い状況が続くとの判断に至る。関連銘柄で同社株に目を付けたのは、昔からよく知っている企業だったことが大きい。
とはいえ、ガソリン車の需要縮小はいずれ避けられない問題だ。その点でもぐらさんが安心材料としているのが、事業ポートフォリオの改革に対する同社の前向きな姿勢だ。
現在、同社は半導体製造装置や燃料電池の関連製品などの事業の売り上げ比率を、25年3月期から30年にかけ25%から40%に高める計画を掲げている。
「息の長いビジネス」という点では、人類の営みに欠かせない資源・食糧などを扱う大手総合商社も該当しそうだ。しかし、もぐらさんはそうとは捉えていない。
資源・食糧領域は市況に左右されやすいイメージがあり、どうしても不安を払拭できないのだという。
2つ目の基準で、選別の精度高める
ただしこの時点では、もぐらさんの事業見通しは、希望的観測の域を超えないものだ。需要の安定性や成長性について、関連市場のレポートを読み込み、分析したうえでイメージしているわけではない。
その精度を高めるために、もぐらさんがチェックする投資指標がある。それが、本人が銘柄選びで用いる2つ目の指標だ。この指標を目安に投資すれば、「6~7割の銘柄は、株価が上昇する」との実感を持っている。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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