イージェイHD Research Memo(5):重点6分野を中心に受注高は2期連続で過去最高を更新
■E・Jホールディングス<2153>の業績動向
2. 受注、売上高の動向
(1) 受注高の動向
2024年5月期の受注高は前期比1.3%増の38,749百万円と2期連続で過去最高を更新した。繰越業務を多く抱えるなか、処理能力とのバランスを考慮しながら選別受注を継続したことで、受注件数は同9.3%減の2,889件と3期ぶりの減少に転じたものの、受注単価が同11.7%増の13,413千円と上昇したことが受注高の増加に寄与した。
発注機関別の増減率で見ると、中央省庁が同8.6%増と3期ぶりの増加に転じたほか、都道府県が同4.8%増、市町村が同6.9%増と連続で過去最高を更新した。国土強靭化対策等の社会インフラ整備や脱炭素社会の実現に向けた環境対策関連の投資が引き続き拡大した。一方、民間が同15.8%減、海外が同35.5%減といずれも減少に転じた。民間については高速道路の点検業務が引き続き堅調だったものの、耐震補強設計業務がピークアウトした格好だ。また、海外については前期にタイで受注した非ODA案件がなくなったことや、JICAのプロジェクトも伸び悩んだことが減少要因となった。国内地域別受注高は、関東が前期比18.9%増、中部が同3.6%増、九州が同3.5%増となり、それぞれ過去最高を更新した一方で、北海道・東北が同11.0%減、近畿が同3.4%減、中国が同0.5%減、四国が同5.1%減とそれぞれ減少した。
受注高のうち注力分野である技術提案型業務は前期比2.6%減の12,736百万円と減少に転じ、受注高に占める比率も前期の34.2%から32.9%に低下した。提出件数は同16.1%増の1,405件と過去最高となったものの、採択率が前期の30.2%から23.6%と低下したことにより、採択件数が同9.3%減の331件にとどまったことが減少要因となった。採択率の低下は生産性の低下要因ともなるため、今後の課題となる。
一方、同社が重点分野として掲げている6分野の受注高は同2.8%増の22,794百万円と過去最高を更新し、構成比率も前期の58.0%から58.8%に上昇した。分野別では、公共マネジメント分野を除く5分野で増加となり、なかでも環境・エネルギー分野が同15.2%増、自然災害・リスク軽減分野が同10.7%増、都市・地域再生分野が同10.0%増と2ケタ増となった。
重点分野ごとの主な受注実績を見ると、環境・エネルギー分野では京丹後市が推進する循環型社会形成推進プロジェクトの1つとなる一般廃棄物の新最終処分場整備実施設計等業務を受注し、測量・地質調査から地盤改良工事や防災調整池、沈下対策など詳細検討・設計を行った。また、鳥取県東部広域管理施設組合可燃物処理施設整備事業(仮称)事後調査計画書に基づき、環境影響評価事後調査業務を継続して受注した。
自然災害・リスク軽減分野では、国土交通省から水害リスクマップ作成のための設定条件調査業務や一級水系宮川水系流域土砂・洪水氾濫対策検討業務などを受注した。都市・地域再生分野では、宮古市立地適正化計画策定業務や都城インター第3工業団地の測量調査設計業務などを受注した。
インフラメンテナンス分野においては、東京都で管理する急傾斜地崩壊防止施設及び地すべり防止施設の予防保全型管理検討業務を受注し、各対象施設における定期点検及び調査、予防保全計画の更新検討に加え、維持管理の高度化に向けてドローン等の新技術適用の可能性について調査・検討を行った。また、山口県西部の河川国道事務所管内の橋梁点検業務を受注し、ドローンの活用などで作業の効率化及び点検精度の向上を図った。
公共マネジメント分野では、さいたま市農業交流施設整備事業アドバイザリー業務を受注し、民間事業者へのヒアリング調査や公募書類等の作成、公募設置等予定者の募集試験、公募設置等計画に関する審査試験、仮基本協定等の締結支援などを行った。また、仙台市より海岸公園(藤塚地区)整備方針検討業務を受注した。東日本大震災後の防災集団移転跡地となっていた藤塚地区の一部を「公共利用ゾーン」と位置づけ、自然体験・学びの場などとする新たな公園づくりを目的とし、整備方針の検討や各種調査を実施した。
デジタル・インフラソリューション分野では、国土交通省東北地方整備局から、牛伏地区トンネル詳細設計業務を受注した。2次元FEM解析による構造部材の検討を行ったほか、トンネル施工時騒音対策において3次元騒音シミュレーションにより防音扉、防音壁、低騒音設備等を採用し、地元説明資料としてBIM/CIMモデルを活用したわかりやすい資料を作成するなどした。また、北陸地方整備局からドローン自律飛行による砂防施設等点検高度化検討業務を継続受注し、湯沢砂防管内の登川流域における渓流点検をドローンを用いて実施し、検証飛行及びリアルタイムでの画像通信検証を行ったほか、撮影画像を用いてAI画像解析による対象物性評価の適用性検討業務などを実施し、これらの結果から登川流域における自動飛行を用いた点検計画書(案)を作成した。
(2) 売上高の動向
発注機関別売上高は、中央省庁がプロジェクトの工期延伸等の影響もあって前期比12.9%減となったほか、民間が同12.5%減、海外が同2.4%減となった。一方で、都道府県が同12.2%増、市町村が同10.0%増とそれぞれ過去最高を更新した。また、国内地域別売上高は近畿が同28.0%減、中国が同5.4%減、九州が同5.0%減と落ち込んだものの、北海道・東北が同14.4%増、関東が同8.1%増、中部が同11.0%増、四国が同12.8%増となり、いずれも過去最高を更新した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《HN》
提供:フィスコ