城南進研 Research Memo(7):2025年3月期は減益計画も、IT投資要因を除いた営業利益は5倍増益に(1)
■今後の見通し
1. 2025年3月期の業績見通し
城南進学研究社<4720>の2025年3月期の連結業績は、売上高で前期比2.0%増の5,969百万円、営業利益で同25.6%減の22百万円、経常利益で同60.7%減の15百万円、親会社株主に帰属する当期純損失で55百万円(前期は122百万円の損失)を計画している。売上高は各部門ともに前期比横ばいまたは若干の増収を計画しており、3期ぶりの増収に転じる見通しだ。一方、営業利益については全社のパソコン(2千台強)入れ替え実施やサーバーの更新投資により、約130百万円の経費増の発生を見込んでいることが減益要因となる。同要因を除けば営業利益は前期比5倍増の150百万円程度となり、営業利益率も前期の0.5%から2.5%まで回復する見込みである。
上期については、個別指導部門や映像授業部門の減少傾向が続く見込みのため、全体の売上高も前年同期比2.8%減となるが、2024年4月より実施した「くぼたのうけん」「城南ブレインパーク」のリブランディング効果や各事業における生徒獲得施策などの効果が徐々に顕在化し、通期では増収に転じる見通しだ。なお、収益構造改革についても引き続き不採算教場の統廃合や本社業務のDXによる生産性向上などを検討しており、収益力回復に取り組む。
(1) 児童教育部門(単体)
児童教育部門(単体)のうち、「城南ルミナ保育園」については定員充足率が高水準となっていることから前期並みの売上見込みとなるが、引き続き「りんご塾」「ズー・フォニックス・アカデミー」の伸長により増収を目指す。「りんご塾」については直営教室が堅調に推移するほか、2024年4月より「城南コベッツ」のFC約90教室、並びに明光ネットワークジャパンが運営する「明光義塾」直営97教室で「りんご塾コース」の募集をスタートしており、これら教室の生徒数増加によるレベニューシェアの増加も増収要因となる。「明光義塾」は直営教室で487教室、FC教室も含めれば1,714教室を全国展開しており(2024年5月末時点)、生徒数獲得の効果が確認できれば導入教室数のさらなる拡大が期待できる。2024年4月時点における同社グループの「りんご塾」は121教室(キッズブレインパーク、城南コベッツ直営・FC教室)で、他社展開も合わせると220教室を超える規模である。
「ズー・フォニックス・アカデミー」については、インターナショナル・スクールとアフタースクールの2本立てで展開している。アフタースクールで順調に生徒数が伸びている一方、インターナショナル・スクールは競争激化で低迷が続いている。同社では、ブランド差別化を図るためのHP改修も含めてマーケティング戦略を見直し、生徒獲得を強化する考えだ。
また、「くぼたのうけん」については2024年4月より乳児向けを「Kubotaのうけん」(0歳?2歳)、幼児向けを「アタマGYM」(3?6歳)にリブランディングするとともに、月額料金を3割程度引き下げることで入会者数を増やしていく戦略を打ち出した※。このため、初年度については料金引き下げの影響により減収となる可能性もあるが、2026年3月期以降は成長軌道に回帰すると予想される。また、FC展開やBtoB向けのソリューションビジネスに注力し、事業規模拡大を目指す。BtoB向け(保育園・幼稚園)に関しては、グループ会社で導入による園児獲得効果が確認されており、少子化で園児獲得競争の激化が予想されるなか、差別化できる付加サービスとして導入園数が広がっていくと予想される。導入園数については、2021年3月期末の44園から2024年3月期末は68園と3年間で1.5倍に拡大している。
※月額料金(税込)は、「Kubotaのうけん」が22,000円から15,400円に、「アタマGYM」が24,200円から16,500円に引き下げた。
複合型スクールとして2024年4月にリブランディングした「キッズブレインパーク」については、直営で7拠点展開しているほかFC展開も本格的に開始しており、2024年4月にFC1社目となる東信工業(株)が長野県上田市に「キッズブレインパーク東信上田教室」を開設した。乳幼児教育のメソッドを持っていない教育関連企業からの問い合わせも複数入っているようで、「キッズブレインパーク」としての事業拡大も今後期待される。
(2) 個別指導部門
個別指導部門のうち、直営教室については新規開設の予定がなく、高校生の減少等により収益化の見通しが立たないと判断した教室については戦略的統合を検討していく。また、FC教室については4月から6月までで2校の新規開校があったが、FCオーナーの高齢化に伴う後継者問題が顕在化しており、オーナーチェンジがなければ教室数の減少が続く可能性がある。全体的には不採算教室の整理統合を進め、収益化している教室にリソースを投下していくことで収益力を強化する方針だ。2025年3月期の売上見通しについては、教室数の動向次第となるが、少なくとも前期並みの水準は確保する考えだ。
同社は生徒獲得施策として、自社Webサイトからの問い合わせ件数を増やすため、コンテンツの拡充に取り組むほか、友達紹介などに引き続き注力する。また、小学生については「りんご塾」の導入をFC教室でも開始しており、低学年の生徒を囲い込むことで、「城南コベッツ」への入塾者数の拡大につなげる。FC教室のうち「りんご塾」の導入率は5割程度であり、今後も導入教室数の拡大による全体の底上げを図る。
中学生については、好評を博しているスタディ・フリープランの比率を高めることで生徒当たりの単価を引き上げていくほか、生徒の目標(受験志望校合格、学力向上等)を把握し、目標達成に向けたサポートによる顧客満足度の向上や口コミ効果等による生徒数の拡大に取り組む。
そのほか、差別化戦略としてはICTを活用した「学びの個別最適化」に取り組む。小中学生向けには「デキタス」、中高校生向けには「atama+」(AIを活用した学習教材)をデジタル教材として導入し、基礎学力の向上を効率的に進め、学習の進捗度合いを管理するアプリ「GoNAVI」を活用して計画的な学習を支援する。また、中高生向けには子会社アイベックのオンライン英会話レッスンなどもオプションメニューとして用意しており、生徒当たりの単価アップにつなげていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》
提供:フィスコ