データアプリ Research Memo(1):2024年3月期は会社予想を上回る増収増益で着地
■要約
1. 会社概要
データ・アプリケーション<3848>は、「未来情報社会創造はひとりひとりの喜びから」を経営理念に掲げ、企業内外のデータ連携に関するソフトウェア製品の開発と販売及びコンサルティングを展開し、社会の利便性向上や生産性向上などDXの実現を目指すソリューションカンパニーである。EDI※1やEAI※2といったデータ交換・連携用プラットフォームを中心に展開し、EDIミドルウェア※3市場でのマーケットリーダーとなっている。
※1 EDIはElectronic Data Interchangeの略。受発注・見積・出荷・入荷・決済など商取引に関する電子データを企業間で交換する仕組み。
※2 EAIはEnterprise Application Integrationの略。企業内の複数のコンピュータにあるデータや業務プロセスを効率的に統合する仕組み。
※3 ミドルウェア(middleware)はコンピュータを制御する要素の1つで、コンピュータの基本的な制御を行うOS(Operating System)と、具体的な処理を行うアプリケーション(application software)との中間(ミドル)に位置し、それぞれの機能を補完するソフトウェアのこと。代表的なミドルウェアとしてデータベース管理、データ交換・連携、Webサーバ、トランザクションモニターなどがあり、いずれも企業のシステム開発作業削減や業務コスト低減を実現する。
2. ストック型安定成長ビジネスモデル
主力製品は「ACMS※(エーシーエムエス)」シリーズで、戦略製品として同シリーズ最上位モデルのエンタープライズ・データ連携プラットフォーム「ACMS Apex」(エーシーエムエス エイペックス)、Web-EDIシステム基盤「ACMS WebFramer」(エーシーエムエス ウェブフレーマー)、データ加工・変換をノーコードで実現できるデータハンドリングプラットフォーム「RACCOON」(ラクーン)、文書データ活用・EDI統合ソリューション「OCRtran」(オーシーアールトラン)の拡販を推進している。2024年7月には次世代チームコラボレーションプラットフォーム「Placul(プラカル)」の販売を開始した。さらに同社は収益安定性向上のため、パッケージ(売り切り)売上からストック型安定成長ビジネスモデルであるリカーリング売上(サブスクリプション・メンテナンス・タームライセンス)へのシフトを戦略的に推進している。
※「ACMS(Advanced Communication Management System)」は同社の登録商標である。
3. 2024年3月期は会社予想を上回る増収増益で着地
2024年3月期の業績((株)鹿児島データ・アプリケーションを吸収合併して非連結決算に移行)は売上高が2,919百万円、営業利益が549百万円、経常利益が570百万円、当期純利益が493百万円だった。前期の連結業績との比較では売上高が16.9%増、営業利益が11.9%増、経常利益が12.5%増、当期純利益が129.5%増だった。また会社予想(2023年11月6日公表の上方修正値)との比較では、売上高で19百万円、営業利益で29百万円、経常利益で30百万円、当期純利益で67百万円、それぞれ上回った。リカーリング売上ではサブスクリプション型が順調に拡大したことに加え、パッケージ(売り切り)の大型案件受注や想定以上のバージョンアップ案件の受注など一過性の特需が発生し増収増益で着地した。なお、一過性特需及び保守における割増(延長、二重等)による売上高は約350百万円で、これらの要因を除く実力ベースでの売上高は約2,550百万円(前期比約2%増)となる。
4. 2025年3月期は前期の一過性特需の反動減で減収減益予想だが、ストック型収益の伸長で上振れの可能性も
2025年3月期の業績は、売上高が前期比10.9%減の2,600百万円、営業利益が同36.3%減の350百万円、経常利益が同35.8%減の366百万円、当期純利益が同48.6%減の254百万円と、減収減益を予想している。売上面では、リカーリングのサブスクリプション型は順調に拡大すると想定しているが、パッケージ(売り切り)及びメンテナンスにおける前期の一過性特需の反動減を見込んでいる。ただし、前期の一過性特需影響及び保守における割増を除くベースでは約2%増収予想となる。利益面では前期の一過性特需はく落による減収に加えて、人件費や「Placul」のプロモーション費用、M&A関連等のコストが増加することも影響する見込みだ。なお2024年7月に(株)WEELを完全子会社化したため、2025年3月期の期中から連結決算に移行する予定である。前期の一過性特需はく落分を拡大基調のストック型収益であるサブスクリプション型売上で埋めていくことができるのかがポイントであり、サブスクリプション型売上の大幅な拡大が推進されれば、会社予想に上振れ余地があると弊社では考えている。
5. 2027年3月期リカーリング比率80%が目標
同社は2024年5月に新・中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)を公表した。中期ビジョンに「個人と組織がともに成長し続けるDIGITAL WORK※を実現する」を掲げ、計数計画を最終年度2027年3月期の売上高33億円、リカーリング比率80%(2024年3月期実績71.2%)、EBITDA(=営業利益+償却費+株式報酬費用)7億円とした。また財務面では資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、2027年3月期ROE15%以上を目標に資本コストを超えるROEを目指す。株主還元については年間25.0円を配当下限額として、株主資本配当率(DOE)3.5%を目安に長期的・安定的な配当の維持を目指す。またリカーリング比率の目標達成に向けて、サブスクリプション比率の向上(2024年3月期実績43.1%に対して2027年3月期80%以上が目標)を図る。
※DXによる新しい働き方を同社が「DIGITAL WORK」と定義した。
■Key Points
・EDIミドルウェア市場でのマーケットリーダー
・2024年3月期は会社予想を上回る増収増益で着地
・2025年3月期は前期の一過性特需の反動で減収減益予想だが、ストック型収益の伸長で上振れの可能性も
・2027年3月期リカーリング比率80%が目標
・市場環境は良好で高い成長ポテンシャルに注目
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《HN》
提供:フィスコ