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【特集】有沢正一氏【日経平均一時1000円超高、波乱相場の今後の行方は?】 <相場観特集>

有沢正一氏(岩井コスモ証券 投資調査部長)

―史上最高値からの急転降下劇から一転して急伸、企業決算・日銀会合と注目材料は続々―

 日経平均株価は7月11日に史上最高値をつけた後に天井打ちとなり、終値ベースでは同日の4万2224円02銭から前週末26日には3万7667円41銭と値幅にして4500円を超す急落劇を演じた。週明け29日は9日ぶりの急反発となり、上げ幅は一時1000円を超えた。不安定さが否めない展開となるなかで、今週は日本と米国で中央銀行の決定会合が控え、主要企業による4~6月期の決算発表も増えてくる。波乱相場はまだ続くのか。それとも落ち着きを取り戻していくのか。岩井コスモ証券・投資調査部長の有沢正一氏に、今後の見通しを聞いた。

●「好決算銘柄は素直に評価される展開へ、DX・防衛関連に注目」

有沢正一氏(岩井コスモ証券 投資調査部長)

 向こう1ヵ月間の日経平均は3万7500~4万1000円の範囲で推移するとみている。7月に入り史上最高値をつけた後に値を消す展開となったが、この先は上場企業の決算発表が本格化する。先行して好決算を発表したキヤノン <7751> [東証P]や富士通 <6702> [東証P]の株価をみると、素直に評価されている。4~6月期の段階で通期の業績予想を上方修正する3月期決算企業はそれほど多くはないと想定されるが、順調な進捗状況などを踏まえ、アナリストが調査対象企業の業績予想を引き上げる流れが強まる可能性が高い。(アナリスト側の業績予想について上方修正から下方修正の割合を引いて求める)リビジョン・インデックスの上昇が期待されるなかで、全体相場は徐々に落ち着きを取り戻していく格好となるだろう。一方、米国の半導体株の上値の重さが意識されているほか、中国経済の先行き懸念もあり、ともに日本株の足を引っ張る形となりそうだ。

 米大統領選でトランプ前大統領が勝利するとの見方が広がり、市場は一時的に「トランプラリー」の様相をみせた。その後、バイデン大統領が大統領選からの撤退を表明し、後継候補にハリス副大統領の名が挙がるなか、情勢は再び予断を許さない状況となっており、大統領選に対しては様子見とならざるを得ない。また、今週は米連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)と、日銀の金融政策決定会合を控えている。日銀の7月会合では追加利上げは見送られるだろう。個人消費が弱含むなかで実質賃金のプラス転換には至っておらず、「物価と賃金の好循環」のシナリオを実現したとは言えない局面で、日銀が利上げに踏み切るのは難しい。もっとも今回利上げが見送られたとしても、9月会合での利上げシナリオが意識され続けることとなるはずだ。

 注目テーマを挙げるとすれば、まずDX(デジタルトランスフォーメーション)だ。6月の日銀短観ではソフトウェア投資の伸びが顕著となっている。野村総合研究所 <4307> [東証P]やオービック <4684> [東証P]の業績は良好で、日立製作所 <6501> [東証P]やNEC <6701> [東証P]、NTTデータグループ <9613> [東証P]など、DX化が業績面で追い風となる企業群への投資家の関心が一段と高まりそうだ。更にトランプラリーで動意づいた 防衛関連は、そもそも国策として防衛力の強化の潮流があり、関連企業の業績は上向いている。三菱重工業 <7011> [東証P]や川崎重工業 <7012> [東証P]、IHI <7013> [東証P]など重工3社や三菱電機 <6503> [東証P]、日本製鋼所 <5631> [東証P]といった防衛関連銘柄に対しては、投資家の強気な姿勢が継続するとみている。

(聞き手・長田善行)

<プロフィール>(ありさわ・しょういち)
1981年大阪府立大学経済学部卒業。89年岩井証券入社、株式部、調査部などの勤務を経て、2003年イワイ・リサーチセンターセンター長。12年5月より岩井コスモ証券、17年1月より現職。日本証券アナリスト協会検定会員。

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