テクマト Research Memo(10):新中期経営計画では年率12%の増収増益を目指す
■今後の見通し
2. 新中期経営計画「Creating Customer Value in the New Era」
(1) 基本方針と戦略
テクマトリックス<3762>は、2024年5月に新たな中期経営計画「Creating Customer Value in the New Era」(2025年3月期~2027年3月期)を発表した。新たな時代が到来するなかでも、同社グループは「目利き力」と「業務ノウハウ」を詰め込んだソリューションで社会課題を解決し、よりよい未来を創造する会社であり続け、より多くの顧客価値を提供することをテーマに取り組んでいくことを基本方針に掲げた。「目利き力」とは解決すべき社会課題を発見すること、また最先端のテクノロジーを見出すこと、「業務ノウハウ」とは専門性を要する特定の業界・業務に対して、顧客よりも深い業務の知見を有することを意味している。特に、国内においては顧客側でデジタル人材が慢性的に不足する状況にあり、「業務ノウハウ」を提供する価値は大きい。こうした取り組みを推進することで顧客の利便性、業務効率性の向上や安全・安心に暮らせる社会の実現を目指す。
新中期経営計画の目標として、「事業領域の拡大」「海外市場での事業の拡大」「データを活用したビジネスの創造」の3つのテーマを掲げ、これらを実現していくために多様なアライアンス・M&A、取扱製品の拡大や新規サービスの立ち上げ、AI活用、グループ間連携強化によるシナジーの創出、人材育成とリテンションなどに取り組む方針だ。
a) 情報基盤事業
情報基盤事業では、取扱製品・サービスを「目利き力」によって拡大するほか、代理店(パートナー)との協業により戦略アカウントの取引深耕を図る。また、セキュリティ運用・監視サービス「TPS」の拡販及び脅威情報分析サービスのワンストップ提供、中部・九州エリアでの営業強化により売上を拡大する。また、アジア地域での事業展開についてもニーズを調査し、進出の可能性を模索していく。利益面では、運用・監視サービスの拡大に伴って顧客対応のサポート体制強化が必要となってくるが、AIを業務に活用することで効率化を進めていく考えだ。
b) アプリケーション・サービス事業
教育分野では、私立先進校に加えて公立校(地方自治体)への本格展開を推進する。サブスクリプション型となるため、利益ベースでの貢献は2028年3月期以降に持ち越しとなる可能性があるが、教育分野におけるDXの潜在需要は大きく、今後3年間で収益化に向けての一定の基盤を構築していく考えだ。
CRM分野では、生成AI機能やモビルスのチャットボットなどテキストデータによるコミュニケーション機能を組み合わせることでサービスの付加価値を高め、顧客となるコンタクトセンターの業務効率の向上を支援し、売上拡大を図る。また、ASEAN地域については引き続き現地企業との協業による事業拡大を目指す。
SE分野では、開発基盤の構築、導入支援サービスの提供(自動化、効率化)に加えて、自社開発製品の投入による開発データ分析事業にも参入する予定だ。ビジネスソリューション分野では、公共ビジネスのDXとCX向上ソリューションの開発・提供に注力する。
c) 医療システム事業
医療システム事業では、旧PSPのオンプレミス製品を2026年4月にクラウド型PACS「NOBORI」に統合する予定であり、クラウドシフトによるサブスクリプション課金の積み上げを進めるほか、個人向け医療関連情報提供サービスであるPHRによるBtoCのビジネスモデル構築に取り組んでいく。同社サービスを利用できる医療機関を増やしていくための営業体制の強化を図る。
また、自社開発AIの商品化やAI画像診断支援サービスの育成にも取り組んでいく。2024年6月には、PSPと(一社)ライフデータイニシアティブ(以下、LDI)及びNTTデータ<9613>とで、日本初となる次世代医療基盤法に基づく匿名加工医療情報として医用画像データの提供を2024年10月より開始することを発表した。従来、LDIとNTTデータは電子カルテや保険請求データの提供を行っていたが、今回新たにPSPの「NOBORI」に保存されている医用画像データを提供対象に加えることになった。今後、AIを用いた画像診断支援サービスや対応医療機器の開発・普及につながる取り組みとして注目される。
そのほか、アジア市場ではいくつかの国に絞ってPHRサービスを展開していくことも視野に入れている。同社のPHRサービスに関心を示す現地の有力医療関連グループと協業して事業を育成する考えだ。
(2) 経営数値目標
新中期経営計画の最終年度となる2027年3月期の経営数値目標は、売上収益で75,000百万円、営業利益で8,200百万円を掲げた。3年間の年平均成長率は売上収益で12.1%、営業利益で11.9%となる。現在の収益状況や市場環境を見ると、目標値は十分に達成可能な水準と弊社では見ている。
事業セグメント別で見ると、情報基盤事業については売上収益で52,350百万円、営業利益で5,480百万円を目標とし、年平均成長率は売上収益で14.4%、営業利益で11.3%となる。クラウド型セキュリティ対策製品が引き続きけん引役となる。営業利益率はサポート体制の強化や先行き不透明な為替動向を勘案して前期の11.4%から10.5%と保守的な計画とした。
アプリケーション・サービス事業は、売上収益で11,550百万円、営業利益で1,350百万円を目標とし、年平均成長率は売上収益で12.1%、営業利益で62.1%となる。CRM及びSE分野によるサブスクリプション課金の積み上げや教育分野における導入校数の拡大が増収要因となる。利益面では、各分野で増益を見込んでいるが、なかでも教育分野の損失額縮小の効果が大きいようだ。
医療システム事業は、売上収益で11,110百万円、営業利益で1,370百万円を目標とし、年平均成長率は売上収益で3.2%、営業利益では4.2%のマイナス成長を見込んでいる。既述のとおり、PACS製品のクラウドシフトによって一時的にマイナス影響を受けることが主因だ。ただ、2027年3月期からは増収増益に転換する計画であり、中長期的にも安定成長が期待できる事業として注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《AS》
提供:フィスコ