テクマト Research Memo(8):現金及び現金同等物が過去最高水準に積み上がり、財務状況は健全性を維持
■テクマトリックス<3762>の業績動向
3. 財務状況と経営指標
2024年3月期末の財務状況を見ると、資産合計は前期末比20,064百万円増加の85,756百万円となった。流動資産は大型案件の債権回収により、現金及び現金同等物が7,193百万円増加したほか、前渡金が8,716百万円、前払保守料が2,126百万円それぞれ増加した。前渡金と前払保守料については、情報基盤事業やアプリケーション・サービス事業におけるサブスクリプション契約の積み上げが主な増加要因である。非流動資産ではソフトウェア等の無形資産が278百万円増加したほか、モビルスの株式取得に伴い持分法で会計処理されている投資が874百万円増加した。
負債合計は前期末比16,938百万円増加の58,712百万円となった。流動負債ではサブスクリプション契約積み上がりに伴う前渡金の増加により契約負債が13,190百万円増加したほか、未払法人所得税が761百万円増加した。非流動負債では、顧客との長期契約に関連した取り引きに伴いその他の金融負債が1,613百万円増加した。有利子負債は同200百万円減の670百万円と着実に減少した。資本合計は同3,125百万円増加の27,043百万円となった。利益剰余金が2,656百万円増加したほか、非支配持分が352百万円増加したことによる。
経営指標を見ると、親会社所有者帰属持分比率は前期末比3.5ポイント低下の25.4%となったが、これは将来売上計上される契約負債が当該期間における利益増を上回るペースで拡大したことによる。ストック型ビジネスを展開する企業では契約負債は売上の先行指標ともなるため、こうした傾向はポジティブに捉えることができる。手元キャッシュが272億円と過去最高水準に積み上がり、有利子負債比率も3.1%と低水準にあることから財務内容は健全な状態にあると判断される。一方、収益性に関してはROEで17.4%、売上収益営業利益率で11.0%といずれも安定した高い水準を維持している。同社が強みとしている「目利き力」と「業務ノウハウ」による付加価値の高いソリューションサービスをストック型ビジネスモデルで提供していることが要因と考えられる。同社では潤沢な手元資金の使途について、株主還元だけでなく新規事業への投資費用やさらなる成長に向けたM&A並びに資本業務提携などに投下する意向である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《AS》
提供:フィスコ