オープンドア Research Memo(1):海外旅行需要の回復ペースはやや緩慢だが、潜在的な需要は依然として強い
■要約
オープンドア<3926>は、日本最大級の旅行比較サイト「トラベルコ」の運営を中心にインターネットコンテンツの企画運営及びソフトウェア開発を行うWebサービスプロバイダーである。売上高のほとんどは「トラベルコ」によるものであり、大半は掲載された旅行プランが予約された時点で旅行サイト運営会社から獲得する手数料収入(成果報酬型)で占められる。強みは、ほぼすべての旅行ジャンルをカバーしていること、業界最多の旅行サイトを比較しているため最安値プラン・チケットが見つかること、システム開発をほぼすべて社内で開発していること、の3点が挙げられる。
1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の連結業績は、売上高が前期比24.6%増の2,561百万円、営業損失が181百万円(前期は52百万円の損失)、経常損失が164百万円(同1百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が170百万円(同44百万円の損失)となった。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)収束後の旅行需要の回復で売上高は大幅に増加したが、営業損失が拡大したのは同社が2024年1月に競争優位性及びブランド認知を拡大するためテレビCMへ予算を割いたことによる。それにより、同社の販売費及び一般管理費は2023年3月期の1,274百万円から2024年3月期は1,856百万円へ、うち広告宣伝費は171百万円から667百万円へと大幅に増加した。これらブランド認知率の向上による売上高への効果は今後徐々に発現すると見られ、売上高の増加を通じて2025年3月期以降にテレビCMの投資回収が期待できるだろう。また、2024年3月期のトピックスの1つとして、同社が「日経トレンディ」2024年3月号(2024年2月2日発売)の旅行比較サイト調査で「総合力BEST」を獲得、また、(株)oricon MEが2024年3月1日に発表した「2024年オリコン顧客満足度ランキング」(航空券・ホテル比較サイト)において、総合・評価項目別・部門別すべてで第1位を獲得するなど、外部機関による調査で高い評価を得ていることが改めて示されたことは、同社の競争力の高さの証左であると言えよう。
2. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の連結業績見通しについては、日本人のレジャー旅行市場の回復ペースは、国内は停滞、海外は緩やかな回復を同社では見込んでいるが、旅行費用の高止まりや円安などのマクロ要因の影響による変動幅が大きいことに加え、状況によってマスプロモーション施策も流動的であることから、精度の高い予測が困難なため現時点では未定とし、合理的な予測が可能となった時点で公表するとしている。同社のビジネスモデルは相対的に損益分岐点が低く、限界利益率が高いことが予想されることから、旅行需要の回復に伴い売上も回復してくれば、業績が大きく改善することも期待される。同社では市場の状況を見ながら適切なプロモーション施策を実施する方針としており、ブランド及び最安値率を含む利便性の認知率をさらに高めて中長期的な売上拡大につなげる方針。また、「トラベルコ」の新メニュー(クルーズ等)、旅行会社向けサポートシステム、海外版「TRAVELKO」などの開発を進め、ターゲット市場の拡充も進めていく考えだ。円安やインフレを背景に海外旅行需要の回復ペースはやや緩慢だが、日本人の潜在的な海外旅行ニーズは依然として高く、ひとたびマクロ環境が好転へ向かえばこれまで溜まっている潜在的な海外旅行需要が一気に増加へ転じる可能性もあるため、今後の動向に注目したい。
3. 中長期の成長戦略と進捗状況
同社では、不確実な要素が多く業績の予測は困難だが、国内旅行需要は全国旅行支援の終了及び旅行費用の高まりを含む物価高により回復ペースは鈍化傾向、海外旅行需要は円安による旅行費用の高騰及び世界的な物価高などの影響があるものの、徐々に回復すると予想している。このような状況において同社は、強固な財務基盤に加え旅行需要に比例した業績回復を見越して開発投資をさらに進め、サービスの拡充及び競争力の強化を図っていく方針だ。主力サービスの「トラベルコ」では、コロナ禍収束後の新たな旅行商品及び関連情報を拡充することで競合サイトとの差別化を図り、一段と競争力を高めていく方針だ。同社が予想する旅行需要回復期には、これらの取り組みの成果が顕在化するものと期待される。機能面では、横断比較サービスのメニュー(民泊、旅行保険、アウトドア等)を拡大するほか、各メニューのクチコミ・評価サービス拡充や国内外の人気スポットの観光情報を拡大していく。これに加え、海外アプリ版「TRAVELKO」の開発も着実に進めている。現地大手旅行サイトとの連携強化を進め価格優位性を確立することで、旅行需要回復時に海外ユーザーの様々な需要を取り込むことが可能となる。
■Key Points
・2024年3月期の売上高は前期比24.6%増と国内・海外ともに回復傾向。一方、損益は引き続き営業損失となったが、2024年1月に実施したテレビCMへの積極的な広告宣伝費の投入によるもの
・2025年3月期計画は未定だが、緩やかな旅行需要の回復が見込まれる。インフレによる消費者のレジャー投資への抑制継続がリスクだが、マクロ環境が今後好転すれば溜まっていた潜在的な海外旅行需要が顕在化する可能性
・主力サービスの「トラベルコ」のさらなる差別化のための開発投資、サービスの拡充や競争力の強化を推進中
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
《SO》
提供:フィスコ