バルテスHD Research Memo(5):主力はソフトウェアテストだが、Web/モバイルアプリ開発も行う(3)
■事業概要
(5) 主な知財投資
バルテス・ホールディングス<4442>は案件ごとのサービスに加えて、サブスクリプション型のサービスも提供している。売上規模がまだ小さいことから売上金額は開示されていないが、成長が期待でき、今後の状況が注目される。
a) テスト情報プラットフォーム「Qbook」
ソフトウェア品質向上のためのプラットフォーム。同社が培ってきたテスト・品質向上ノウハウを無料で提供し、同社の認知度向上やICT社会に貢献する人材の育成を図る。
b) テスト自動化ツール「T-DASH」
非エンジニアでも「簡単」にWebアプリケーションの動作確認・検証を可能にするテスト自動化ツール。
c) サイバー攻撃可視化ツール「PrimeWAF」
簡単、低価格で導入可能なクラウド型のWAF(Web Application Firewall)サービス。様々なサイバー攻撃からWebサイトを防御する。
d) いつでもどこでも実機テスト「AnyTest」
クラウド上で実機を遠隔操作することでテストが可能。豊富な機種・OSのラインナップを揃えており、リモートでもラグのない操作感が特長である。
e) 品質が見えるテスト管理ツール「Quality Tracker」
テスト実行時の進捗管理とテストケースの管理が、このツール1つで見える化することができる。
2. 特色、強み、競合
同社の主力事業はソフトウェアテストサービス事業だが、以下のような特色や強みを持っている。
(1) 専門企業としての豊富な経験・知識・知見
既述のとおり、同社はソフトウェアテストの提供を目的として2004年に設立されて以来、専門企業としてソフトウェアテストサービス事業を続けている。そのため、この間に蓄積された経験と専門的な知識・知見が豊富である。専門性に関しては、同社は国際規格であるISTQB(R)※のGlobal Partner認証を国内で初めて受けるなど、国内でも有数の技術力を有している。このような高い専門性と経験・知識が顧客との強い信頼関係を生んでおり、この点は同社の強みと言える。
※International Software Testing Qualifications Boardの略で、世界130ヶ国以上のテスト技術者認定組織のこと。Global Partnerは世界で10社のみで、日本ではバルテスが初めてである。
(2) ソフトウェア開発の全工程でテストサービスを提供
同社は、ソフトウェア開発の川上である要件定義から、基本設計、詳細設計、製造・単体テスト、結合テスト、システムテスト、さらに川下であるユーザー受入テストまで全工程でのテストサービスを提供している。このため、顧客にとってはワンストップソリューションが可能となっており、この点も同社の強みと言えるだろう。
(3) 独自の教育メソッド
同社の事業にとって、エンジニアの数と質が重要な要素であるのは言うまでもない。同社では、質の高いエンジニアを確保するために、設立以来の経験・知見を生かした独自の体系的教育メソッド(研修カリキュラム)を確立している。新卒・未経験者に対しては2ヶ月間320時間、キャリア(経験者)には1ヶ月間160時間の入社時研修を行っており、入社後2ヶ月は研修のみに集中し、通常業務は一切行わない。このような独自の教育メソッドによりエンジニアの早期戦力化を図ると同時に、高スキルを維持している。その結果として、入社2年目以降のエンジニアの92%以上がJSTQB(R)※の資格を保有している。このような教育メソッドの確立は短期間でできるものではなく、これが同社の強みであると同時に参入障壁にもなっている。
※Japan Software Testing Qualifications Boardの略で、国内のソフトウェアテスト技術者の認定組織のこと。
(4) 競合
ソフトウェアテスト市場での競合企業としては、SHIFT<3697>、(株)ベリサーブ(SCSK<9719>の子会社)などが挙げられる。正確な統計がないためそれぞれのシェアは不明であるが、市場そのものが拡大しているので、各社同士によるバッティングは少ないようだ。むしろ最大の競合は、内製市場(SIerやユーザーの社内で行われているテスト)だろう。ソフトウェアテスト市場でのアウトソーシング比率はまだ低いので、これら各社がお互いに競合する以上に市場そのものが拡大すると言えそうだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
《AS》
提供:フィスコ