三機工業 Research Memo(4):2024年3月期の受注高は前期比1.7%増、次期繰越高は過去最高水準
■業績動向
1. 2024年3月期の業績概要
(1) 損益状況
三機工業<1961>の2024年3月期の業績は、売上高が221,920百万円(前期比16.3%増)、営業利益が11,586百万円(同114.2%増)、経常利益が12,750百万円(同104.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が8,951百万円(同88.4%増)となった。
前期の売上高が一部工事の工程見直し等により低水準であったことに加え、手持ち工事を順調に消化したことから売上高は前期比で大幅増となった。売上総利益率は、採算性を重視した受注活動や施工中の利益改善の取り組みなどの内部努力に加えて、好採算工事が進捗したことで15.6%(前期14.2%)と前期比で大きく改善した。一方で販管費は、人件費増や売上増に伴う経費増、DX投資に伴う償却増などがあったが、ほぼ予算どおりの6.7%増に留まった。この結果、営業利益は前期比で大幅増となった。
受注高は、注力している産業空調が堅調に推移したことに加え環境システムで大型案件を獲得したことなどから232,396百万円(前期比1.7%増)となり、期末の次期繰越高は198,902百万円(同5.6%増)と高水準を維持した。
経常利益の増減要因を分析すると、増収による売上総利益の増加が4,395百万円(うちビル空・産空・電気が3,161百万円増、ファシリティが546百万円増、機械が295百万円増、環境が211百万円増、その他が182百万円増)、利益率の改善による売上総利益の増加が3,234百万円(うちビル空・産空・電気が3,062百万円増、ファシリティが78百万円増、機械が124百万円減、環境が190百万円、その他が28百万円)、販管費の増加(主に人件費とIT投資)による減益が1,452百万円、営業外収支の改善による増益が326百万円であった。
(2) セグメント別損益状況
建築設備事業の売上高は182,545百万円(前期比17.2%増)となった。サブセグメント別では、ビル空調衛生の売上高は、手持ち工事を順調に消化したことから同2.3%増の60,729百万円となった。また同社が得意とする産業空調は、特に半導体関連などを中心に豊富な受注残を消化して79,658百万円(同35.2%増)と大幅増となった。電気も大型データセンター向けなどを中心に受注残を順調に消化して27,498百万円(同7.1%増)と堅調に推移した。ファシリティシステムもオフィス移転などの需要を取り込んで14,658百万円(同24.4%増)と大きく伸びた。
プラント設備事業の売上高は37,007百万円(前期比12.6%増)となった。サブセグメント別では、機械システムは10,591百万円(同38.3%増)となったが、前期に搬送設備工事案件が少なかったこと等から売上高が低調だったことの反動による。水準としてはほぼ2023年3月期(9,666百万円)並みに戻ったと言える。環境システムは26,415百万円(同4.8%増)と堅調に推移した。不動産事業の売上高は2,482百万円(同0.5%増)、その他が632百万円(同13.8%増)となった。
セグメント別の利益(売上総利益)については、建築設備事業は28,139百万円(前期比32.2%増)となった。前期の利益が減収により落ち込んだ反動もあるが、2022年3月期との対比でも15.3%増となった。サブセグメントの内訳としては、ビル空調衛生・産業空調・電気の売上総利益は、主に産業空調の続伸により25,275百万円(同32.7%増)となった。ファシリティシステムの売上総利益も、売上が好調だったことにより増益となり2,863百万円(同27.9%増)となった。
プラント設備事業の売上総利益は、5,715百万円(同11.1%増)と堅調であった。サブセグメントでは、機械システムが増収に伴い943百万円(同22.2%増)と増益率は高くなったが、主力のコンベア等で資材価格上昇の影響を受けて前期の水準が低すぎたことが主要因であり、2022年3月期比では40.5%減となっている。また機械システムでは、資材価格上昇の転嫁が十分ではなく、引き続き採算性は低調で経常利益ベースでは赤字となっている。一方で環境システムは、4,771百万円(同9.2%増)と堅調であった。特に水処理関連が好調に推移した。不動産事業及びその他の売上総利益は、各々974百万円(同15.5%増)、83百万円(同62.7%増)となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
《SI》
提供:フィスコ