精工技研 Research Memo(7):2027年3月期の経営目標は売上高が25,000百万円。企業成長を目指す
■中期経営計画
1. 中期経営計画「マスタープラン2022」
精工技研<6834>は、2022年5月に中期経営計画「マスタープラン2022」(2023年3月期~2027年3月期)を発表している。この計画では、「顧客接点の活性化」「新製品・新技術開発の加速」「ものづくり力の強化」「経営基盤の強化」を基本戦略としている。同社は、「情報通信」「自動車」「医療・バイオ」の分野に注力し、企業成長を目指す。2027年3月期の経営目標は、売上高25,000百万円、営業利益2,500百万円以上、営業利益率10%以上を掲げ、精機関連事業の売上高を11,500百万円、光製品関連事業の売上高を13,500百万円としている。
2. 基本戦略と進捗状況
(1) 顧客接点の活性化
同社の事業領域において、情報通信・エレクトロニクス関連市場における5Gの商用化やAI・IoTの活用によるDXの市場拡大に加えて、自動車関連市場におけるCASEによる加速的な技術革新が広がりつつある。こうした「Change(=環境の変化)」を「Growth(=成長の機会)」と捉え、他社に先駆けて対応策を実行していく。具体的な施策として、1) 顧客との濃密で質の高いコミュニケーションを通じ、市場のニーズと同社グループの技術や製品の接点を把握すること、2) 既存顧客との取引シェアをさらに拡大するため、顧客の経営課題や技術課題を共有すること、3) 新規顧客開拓のため、展示会への出展、新聞・雑誌等へのプレスリリース、ホームページの活用などにより、同社グループの技術や製品の積極的な広報に注力、を挙げている。これにより市場での認知度を高めていく戦略である。
2024年3月期の進捗状況を見てみると、同社は精機関連事業と光製品関連事業の両セグメントにおいて、積極的なマーケティング戦略を展開している。展示会への出展やデジタルマーケティングの強化(特にホームページを通じた活動)は、新規顧客獲得と商談機会の増加に寄与している。これにより、製品の市場認知度が向上し、より広範な顧客基盤を構築していることが見て取れる。このアプローチは、直接的な売上増加につながる可能性が高く、同社の成長戦略において中核をなす重要な要素である。また、インドの有力な自動車部品メーカーであるRADIANT POLYMERS Private Limited(以下、Radiant)への資本出資を実施した。出資総額は約260百万円で、出資比率は約13%である。この戦略的投資により、日本、欧州、北南米、アジアの自動車メーカーやTier1企業を顧客基盤とするRadiantと協力関係を築き、技術面及び販売面でのシナジーを図る。連結子会社である不二電子工業を通じて出資を行い、両社の技術力と販売力の統合を推進する。
さらに、国内外の展示会への出展強化も顕著だ。2023年3月期には10回の出展を行い、2024年3月期には16回に増加させた。これにより、新規顧客の獲得と既存顧客との関係強化を図っている。不二電子工業やDATA PIXELなどの連結子会社と共同で出展することで、グループ全体のシナジー効果を高めている。主要顧客の社内でプライベートショーを実施し、顧客との直接的なコミュニケーションを強化する取り組みも行っている。これらの取り組みにより、顧客接点の強化を通じて当社の市場競争力を高め、持続的な成長を支える基盤を構築する。
(2) 新製品・新技術開発の加速
同社は新製品や新サービスを通じて顧客の成長を支援し、社会の維持継続や社会の進歩発展に貢献し、企業成長へつなげる考えである。その施策が次の3点である。1) 顧客とのコミュニケーションを通じて、市場の情報を捉え製品開発自体が社会に役立つ姿を検証する、2) 新製品や新技術の開発状況を社内共有することで開発期間のマネジメントを強化する、3) 各開発案件の目的やターゲット市場、想定される業績に与えるインパクトを共有し、開発担当者の意識向上を促進する。そして、2027年3月期には連結売上高に占める新製品比率を30%以上とする目標を掲げている。より幅広い領域での社会貢献を可能とするために技術力の研鑽や市場ニーズに合った製品開発を続けていく。
「型内塗装技術」の開発は、製造プロセスの効率化と環境負荷の低減を目指す画期的な技術である。この技術は、製品の品質向上とコスト削減を実現する可能性を持ち、さらには温室効果ガス排出削減という環境面での責任も果たす。2025年の実用化目標に向けて継続している開発は、技術力の強化だけでなく、持続可能な製造プラクティスへの移行を象徴している。「型内塗装技術」は、(株)東海理化と共同で開発され、小型の車載部品向けに特化されている。この技術により、従来の塗装工程や乾燥工程を省略し、生産過程におけるCO2排出量を約60%削減することが可能になる。また、自動車産業における環境負荷の軽減に大きく寄与することが期待される。さらに、この型内塗装技術は、車載部品以外の用途にも適用可能であることを見据え、技術の汎用化を進めている。これにより、他の産業分野でも同様の環境負荷削減効果を提供し、広範な市場での需要拡大を狙っている。この技術開発は、顧客ニーズに応えるだけでなく、新たな顧客層の獲得にも寄与する重要な要素である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)
《HH》
提供:フィスコ