ODK Research Memo(3):教育業務と証券・ほふり業務が主力(1)
■事業概要
1. サービス概要
ODKソリューションズ<3839>は、情報処理アウトソーシングサービスの単一セグメントであるため、事業別売上区分をシステム運用、システム開発及び保守、機械販売としている。2024年3月期の売上高構成比はシステム運用が94.4%、システム開発及び保守が4.6%、機械販売が1.0%となっており、システム運用を主体とする長期的・安定的なビジネスモデルを特徴としている。
業務(サービス)別区分は、教育業務(教育関連サービス)、証券・ほふり業務(金融関連サービス)、一般業務(医療関連サービス、カスタマーサポート関連サービス、人材育成サポート関連サービス)、その他業務(子会社等)としている。2024年3月期の業務別売上高構成比は教育業務が62.5%、証券・ほふり業務が18.9%、一般業務が12.6%、その他業務が6.0%となっている。
2. 教育業務(教育関連サービス)
教育業務は、入試に関わるすべての業務(入試広報、Web・郵送出願、受験票発送、入試実施、成績処理、合否判定・発表、入学前準備、入学手続、入学後の大学生活支援、入試統計資料作成などの支援)を一括受託している。学校法人(4年制大学など)から業務を受託して受験生がサービスを利用する。1960年代から学校法人の入試センターとして入試関連システムを提供してノウハウを蓄積し、入試広報支援から入学手続き支援まで一貫して担当している強みがある。
主力サービスは2016年に開始した日本初の大学受験ポータルサイト「UCARO(R)」である。大学間の垣根を越えて入試関連のWebシステムサービスを集約することで、大学と学生をつなぐ大学受験の共通プラットフォームとして事業展開している。大学の公式ホームページなどで出願時に登録するよう紹介されているサービスで、受験生は利用にあたって登録料や利用料を払う必要はない。このサービスを利用することで受験の各プロセスを大学間で共通化することができ、受験生の負荷軽減・利便性向上、大学の業務効率化・コスト削減を実現している。従来は入試関連業務を学内で処理することが一般的だったが、DXを背景にアウトソーシングの動きが活発化している。
2024年3月期末時点の受験ポータルサイト「UCARO(R)」受託校数(4年制大学向け)は、2023年3月期末比1校減少して110校となった。不採算大学の解約により1校減少した形となったが、日本の大学807大学(短期大学を除く。2022年時点)のうち、学生数の多い大手大学を中心に1割強が同社の「UCARO(R)」を利用している。また、2024年3月期の大学入試アウトソーシング業務における処理件数(志願者データ処理延べ件数)は2023年3月期比6.5%増の105.1万人となった。おおむね100万人で推移しており、大学入学共通テスト(2020年3月期以前は大学入試センター試験)の志願者数を上回る水準となっている。処理件数シェアは民間企業トップを誇っている。
さらに「UCARO(R)」を中核として、新サービスの展開も推進している。
2023年4月には「個人の体験を価値化」するWeb3.0サービス「アプデミー(R)」β版の提供を開始した。日常的な体験や学びをNFTで可視化して個人の成長を支援する。2023年10月には「アプデミー(R)」の社会実装に向け、体験証明NFTによるキャリア形成支援に関する実証実験を、メディアアーティストの落合陽一氏による特別プログラム「Table Unstable-落合陽一サマースクール2023(岩手町編)」にて実施した。2023年12月には「アプデミー(R)」の新機能開発に向けて、電通グループ<4324>、TOPPANホールディングス<7911>、ソニー(株)等と共同で、体験実績NFTと生成AIを活用したエージェント・システムの実証実験(2023年12月~2024年3月)を開始した。さらに2024年4月には、金商法府令の一部改正(通称DAO法)に基づき、落合陽一氏らとともに日本初の合同会社型DAOとなるTable Unstable DAO合同会社を設立した。
大学向けのサービスとしては、2022年7月に評価入力・管理システム「iiscore-U(イースコア・ユー)」の提供を開始した。大学入試における面接・小論文・グループディスカッション・事前課題等の採点に関する作業をWeb上で一元管理できるため、大学における入試事務工数の削減が可能になる。また(株)Gakkenと共同運営する入試ソリューションサービスは、入試サンプル問題作成、入試問題校閲、監修・著作権管理代行などを提供している。
3. 証券・ほふり業務(金融関連サービス)
証券・ほふり業務は、創業以来、大阪証券金融(現 日本証券金融)とだいこう証券ビジネスのシステム開発・運用を約半世紀にわたり手掛けて蓄積した証券バックオフィス業務・証券代行業務のノウハウを活用し、証券会社・金融機関向けに投資家情報管理、注文約定管理、取引結果管理、代金精算業務などに関連したサービスを提供している。2023年3月にはブランドを刷新し、新たに「SAKIX(サキガケ)」シリーズとした。
主力サービスは、証券会社向けフロント・バックシステム「WITH-X(R)(ウイズクロス)」(旧名称:証券総合システム「SENS21」)、証券会社・金融機関と証券保管振替機構との接続システム「COMBI-X(R)(コンビクロス)」、日本取引所グループの抽出基準に基づく不正売買データ自動抽出・分析システム「FOR-X(R)(フォークロス)」(旧名称:不公正売買監視システム「Watch21」)、金融商品仲介業者(IFA)向け投資信託Web取引・管理システム「KIZUNA-X(R)(キズナクロス)」である。
マイナンバー関連サービスは、SBIビジネス・ソリューションズと共同開発したマイナンバー管理システムを提供し、2022年11月にブランドを刷新して「mynaone(R)(マイナワン)」とした。ユーザーニーズに合わせた高いカスタマイズ性を持ち、コストを抑えて導入できるワンストップサービスを特徴としている。2023年5月には、2年連続eKYC(electronic Know Your Customerの略で、オンライン上だけで完結する本人確認方法のこと)導入社数No.1の(株)TRUSTDOCKと協業開始した。また2024年4月にはマイナンバー活用の増加に対応し、サイバートラスト<4498>の「iTrust 本人確認サービス」を採用して「SAKIX 公的個人認証サービス」の提供を開始した。
なお、2024年3月期末時点の受託数は「WITH-X(R)」が5社、「COMBI-X(R)」が22社、「FOR-X(R)」が1社、「KIZUNA-X(R)」が2社、「mynaone(R)」が30社、周辺システムが11社となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《HN》
提供:フィスコ