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武者陵司「楽観論のすすめ」


―楽観論には道理があり、人を幸せにする―

●日本経済新成長時代入りの確信

 日経平均株価が史上最高値を更新し、新しい時代が始まるという予感が高まってきました。九州熊本を先頭にした半導体投資ブーム、過去最高の伸びを続ける設備投資、インバウンドの急増、30年ぶりの高い賃上げ率と深刻化する人手不足、マンションの価格上昇、日銀による異次元金融緩和政策の解除……などの過去30年間には見られなかった変化が相次いで起きています。日本が円高デフレで苦しんだ長期停滞からやっと抜け出し、新たな好循環に入りつつあることは、今やすべての国民の前に明らかになっているのではないでしょうか。

 こうなることは10年前、アベノミクスが始まった時から私には見えていたことでした。2009年の『日本株大復活』(PHP研究所)以降、ほぼ毎年のように本を上梓しましたが、そのすべては悲観論との闘い、日本株式の長期上昇を訴えたものでした。当時の時流からあまりにもかけ離れていたので、メディアからは無視され続け、本もあまり売れませんでしたが、楽観論の正しさを墨守する種火だけは、絶やさず燃やし続けて来られたのではないかと自負しています。

 2013年4月に発売した『日本株100年に一度の波が来た』(中経出版)では「日経平均4万円のシナリオに5つの根拠があるとして、①日本株は極端に割安である、②アベノミクスが長期円高不況を終わらせる、③アメリカは対中封じ込め政策に転換し、日本経済復活のため円安をサポートする、④アメリカ経済の本格拡大により世界経済の回復基調が続く、⑤日本の品質とコスト競争力の強さが顕在化する」と主張しました。

●日本復活を決定づけるものは地政学、米中対立

 あと一つ主張し続けたことは、米中対立により日本の運命が変わるということです。2011年の『失われた20年の終わり~地政学で診る日本経済』、2017年の『結局勝ち続けるアメリカ経済、一人負けする中国経済』(講談社)で米中の覇権争いが始まり、日本の加勢を必須とするアメリカが手のひらを返したように日本を優遇し、円安をサポートするということです。そうした主張は日の出の勢いにある中国ブームの中では、反中に凝り固まった右翼のように思われたことでしょう。

 今から30年前の1993年に『アメリカ 蘇生する資本主義』(東洋経済新報社)を著しました。米国経済が復活し、バブル経済に酔いしれている日本は困難に陥るというものです。それはNYダウが3000ドル台、日経平均株価は2万円前後の時でした。

 このように自分の過去の実績を言い立てるのは気恥ずかしくもありますが、そこに将来を正しく予見できるヒントがあると考え、敢えて披瀝しました。

●因果関連を知らなければ何もわからない

 世の中の専門家や多くの知恵者の予想がなかなか当たらないのは、当てるための段取りを踏んでいないからです。予測するために必要なことは、何故こうなったのかの原因を探る謎解きです。何が理由でこうなったのかという因果関連が分かれば、今こういう原因があるから、将来こうなるということも予想できます。現在は過去の結果ですが、現在が原因となって将来が形作られるのです。この流れの中ですべてを考えれば、将来予想の的中度は大きく高まるはずです。

 検証をしているうちに、だいぶ前から経済学の理論だけでは把握できない現象に気づきました。それが、地政学が経済に与える影響です。日本が戦後大復活したのも、「Japan as Number 1」の座から転落したのも、このところの円安も、はたまた日経平均株価が史上最高値を更新し4万円を超えたのも、すべてこの「地政学」が影響しています。

 具体的にいうと、米中対立に直面して、アメリカが日本を“強い味方”にするという戦略を明確化させたからです。「地政学」というのは、長い歴史に裏付けされた人間と国家の思惑の解析です。つまり、古今東西、政治のメカニズムと経済のダイナミズムとは切っても切り離せない関係です。地政学が原因となって新しい経済のパラダイムが作られていくのです。そうしたパラダイム変転の際には、安定している仕組みの中に反対物が生まれ不安定化し、この対立物が統一される(止揚される)ことで新たな枠組ができるという、弁証法の考え方が不可欠です。

●価値創造メカニズムの分析が鍵である

 将来を作る種は細部に宿ります。変化は大局からではなく、個別具体的事柄から起こり始めます。マクロだけを見ていては変化を見落とすことになります。一番大事な細部は企業における価値創造です。企業が価値を作れなければ、給料も払えず投資もできず、経済は前に進みません。経済が興隆するときも衰弱するときも、まず企業の価値創造が健全かどうかが決め手になります。

●DNAを形成する職業倫理、エートスの洞察が不可欠だ

 また、私たちは歴史上の最も偉大な選手、超一流の投手であり、超一流の打者を兼ね備えた大谷選手を目の当たりにしていますが、これほどの偉大な人物がなぜ日本に生まれたのかも、有益な洞察です。体力、素材としてはもっと恵まれている人がいるはずのアメリカではなく、なぜ日本に? 金銭にも世間の評判や名声にも目もくれず、ひたすら野球という職業の完遂を求める精神は、日本がもたらしたものと思われます。

 そして、大谷選手と同様のメンタリティを持った日本の若き職業人は沢山います。今は日本の研究費が削減され、研究開発で米国や中国の後塵を拝していても、日本人の職業倫理、エートス(生活態度)が世界一級であることは、誰しも認めるところです。鉄道時間の正確さ然り、落とし物を警察に届ける律義さ然り、チーム優先で我を抑える謙譲の精神然り、この精神があるからこそ、歴史的バブル崩壊と異常に長い経済停滞の下でも、日本企業は地道なビジネスモデル転換がなし得たのだと思います。

●明るい将来VS超割安な株式バリュエーション

 以上のような筆者独自のチェックポイントによって検証し、仮説を構築すれば日本の将来がとてつもなく明るいものになることは明らかです。過去10年ほど、日本の将来は一番楽観的な方が考えるよりももっと明るい、と言い続けてきました。

 今こそ楽観論の大切さを知っていただきたいという思いから、5月26日に『日本株の歴史的大相場が始まった!』をWACより刊行いたしました。本書をお読みいただければ、いま私たちが実感している望ましい変化は、日本という国が大きく生まれ変わる予兆であるのだ、ということをご理解いただけるはずです。日本の株価は年内5万円もあり得ますし、早ければ5年、遅くとも10年後には10万円になることを私は疑っていません。

 さて、そのような明るい将来が待っていることにご同意いただいたとして、読者の皆様はどのように行動するべきでしょうか。当座に必要としない資金のかなりを株式に振り向けるべきでしょう。日本株のインデックス投資を続けることで10年の間に財産を何倍かに増やすことができるでしょう。

 他方で外れ続けている悲観に与して、安易に預金で資産を運用すれば5年経っても10年経っても「1」は「1」のまま、極端な財産形成の差が生まれるのです。株式投資で運命が分かれる、ということは決して誇張ではありません。

 この輝かしい時代において皆様が投資に大きな成果を収め、人生を切り開くことを願っています。

(2024年5月28日記 武者リサーチ「ストラテジーブレティン354号」を転載)

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