【特集】石金淳氏【米株最高値圏も足踏み続く日本株、6月相場の展望は?】 <相場観特集>
石金淳氏(三菱UFJアセットマネジメント チーフファンドマネジャー)
―米エヌビディア好決算も米株に過熱感、日本の長期金利上昇は日本株の圧迫要因に―
週明け27日の東京市場で日経平均株価は前営業日比253円高の3万8900円02銭と反発した。前週末にナスダック総合株価指数が最高値を更新したことが支援材料となった。NYダウも5月に入り4万ドルに乗せるなど最高値圏にある。対照的に、日経平均株価は3万9000円近辺で一進一退の動きを続けており、ポジティブ・サプライズとなった米エヌビディア<NVDA>の好決算を受けても、日本株の押し上げ効果は限られている。相対的な出遅れ感が強まるなかで、6月相場はどのような展開になるのか。三菱UFJアセットマネジメントの石金淳チーフファンドマネジャーに話を聞いた。
●「好悪材料が交錯し一進一退の展開続く、金融や機械株に注目」
石金淳氏(三菱UFJアセットマネジメント チーフファンドマネジャー)
日銀が国債買い入れオペで、買い入れ額を減額した5月13日以降、日本の長期金利が上昇している。また、日銀の植田和男総裁は25日、主要7ヵ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の後に、長期金利は市場で形成されることが基本だと発言している。日銀の金融政策が正常化に向かうこと自体は株式相場を圧迫する要因となるが、米国のハイテク株が堅調に推移しており、日本株の大幅な調整は回避されている。その米国では年内に米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに踏み切れるのか、不透明感が強まってきた。4月30日~5月1日開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨のなかには利上げに関する言及があったほどだ。
日米金利差が縮小しにくくなるのならば、円安基調は継続することとなる。日本の輸出企業の多くは今期の業績予想の前提となる為替レートを1ドル=140円台としているだけに、ドル円相場が1ドル=150円台後半にとどまれば、日本株にはプラスとなる。好材料と悪材料が入り混じるなかで、日経平均株価はこの先1ヵ月間は3万6000円~4万円の範囲で推移しそうだ。米国株はバリュエーションが高まり、過熱感も強まっている。米国株が需給調整の局面に差し掛かれば、日本株に下押し圧力が強まるだろう。一方、米国のハイテク株の力強い動きが続けば、日経平均株価が4万円に接近する展開も期待できる。
アジアに目を向けると、中国軍が先週、台湾を取り囲むような形で軍事演習を行った。ただ中台関係についてはリスクをはらみつつも、大事には至らないとみている。台湾の加権指数は最高値を更新している。香港のH株(中国本土企業株)指数は足もとでは調整しているとはいえ、1月以降、大きく上昇していたという経緯がある。台湾の頼清徳(ライ・チンドォー)総統が就任した後とあって、今回の軍事演習は中国側の一種のポーズであると市場は見透かしている。その一方で、中国当局の政策により、中国景気が回復に向かうといった見方が広がりつつある。これらを踏まえて注目セクターを挙げるとすれば、半導体関連もいいが、まずは金利上昇メリットの銀行株や保険株になるだろう。円安基調が続くなかで押し目を形成した自動車株も悪くはない。更に、中国でのエクスポージャーが比較的高い機械関連株も、好パフォーマンスが期待できそうだ。
(聞き手・長田善行)
<プロフィール>(いしがね・きよし)
1988年慶応義塾大学卒業、ユニバーサル証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。2000年にパートナーズ投信(現三菱UFJアセットマネジメント)転籍。16年12月より現職。
株探ニュース